第115話 暗殺者ギルドの解体

 俺を暗殺しようとした者から暗黒魔法で意識を操る黒いサソリの入れ墨を追い出して、そのサソリを追いかけて行きついた場所がヤマト帝国の帝都内にある第4宰相の館だった。

 この館こそが暗殺者ギルドの本拠地で、館の中には真黒な禍々しい気を放つ魔石を植え付けられた魔族とドラゴンの融合体や第4宰相自身も蜘蛛型生物に乗っ取られていた。

 ヤマト帝国の豚皇太子もそうだが蜘蛛型生物の手がヤマト帝国の内部にまで食い込んでいるようだ。


 俺はこの本拠地で依頼書等の重要書類の他に、本拠地に詰めていた暗殺者集団をまとめて地下の大広間で捕虜にした。

 俺はそれらの者の意識を精神感応で探れるが、離れた場所にいる者の意識まで探れるわけではない、暗殺者ギルドの精神を操る暗黒魔法の黒いサソリの入れ墨ではないがナノマシンを体内に打ち込んで反抗的な者は手に取るようにわかるようにした。

 俺に臣下の礼をとった者以外で反抗的な者を何組かに分けて地下の大広間の俺のつくった鉄牢に閉じ込めた。

 第四宰相の家族や使用人など暗殺者ギルドの正式社員、単に俺の敵対国に住んでいて敵対意識を持つ者等は別の牢に入れた。


 一応この暗殺者ギルドのアジトはヤマト帝国内にあるので処罰はヤマト帝国が行うことになるのだが、面倒なので牢に入れた全員を俺が転移魔法で真正カンザク王国に連れて行って処罰する事にした。


 前世で憲法や刑法で習った属地主義や属人主義等と言う頭が痛くなる法律の基本概念では彼等を裁く権利は本来ならヤマト帝国にあるのだが、一国どころか連合国の国家首脳の殺害計画に関与したのだ、俺が裁いても良いはずだ。


 真正カンザク王国に連れて行った中にはさっきも言ったが暗殺ギルドの正社員である第四宰相の家族や使用人もいた。・・・ばれると国家間の問題にまで発展しそうだ。

 家族や使用人も連れて夜逃げしたように見せかける為に家財道具等一式全て魔法の袋に入れて転移した。


 能天気二人娘や俺に臣下の礼をとった者達は配下に加えた。

 ヤマト帝国の帝都から一番近いのが真正カンザク王国なので配下に加えた者達は自力で向かってもらった。・・・一応追跡型のナノマシンを打ち込んでいるのでどこに居るかは手に取るようにわかる。宇宙エルフの科学力だ、素晴らしい!

 ヤマト帝国から真正カンザク王国まで向かえないような者は配下に加える技能や技量が無かったのだ。

 別に見限ったわけではない追跡型のナノマシンで居場所を確認しているので、あとはどうにでもなる。

 中には仲間を呼び集めて我が国に向かって来る者もあった。


 宰相のクローゼット内の隠し扉の奥にあった三畳間から見つけた書類の中には、商業ギルドが俺を暗殺するように依頼した依頼書まで残っていたのだ。

 俺はこんな依頼書を手にいれたことから、商業ギルドも俺に手を出せなくなったようだ。・・・商業ギルドの本拠地もこのヤマト帝国内にあり、その後ギルド長とは夜間何度か面接してよく分かってもらった。


 商業ギルド長は本当に懲りない奴で最初は穏便に済まそうと思ったのだが、我が国、真正カンザク王国の青息吐息の商業ギルド長に命じたのかギルド長自らが刺客となって襲ってきた。

 翌夕、商業ギルドの本拠地にこの事について再度訪れたところ、前日応対してくれた美女の代わりにむさ苦しい野郎どもを侍らせていた。

 俺にとっては物の数では無かった。


 商業ギルド長は今度は、オーマン国の商業ギルドに命じて俺の盟友ともいえるオーマン国の豪商に横槍を入れて商売を出来なくさせた。

 やむなくオーマン国の豪商は商業ギルドで商売が出来なくなったと俺に泣きついて来た。

 三度目に商業ギルドの本拠地に訪れたところ、流石に二度目で懲りたのか腕利きを揃えてきた。

 冒険者ギルドのA級、S級の冒険者5人程だ。

 そいつらを何とか昏倒させたが、そのおかげで商業ギルド長の屋敷が半壊した。


 もっと怖い人が出てきた商業ギルド長の自慢の奥さんだ。

 ビヤダルのような巨体でギルド長と俺を睨むと

「うるさい!毎晩毎晩ドタバタとうるさくて寝られないし、近所迷惑よ!

 貴方あなた!何とかなさい!」

の一喝で商業ギルド長が俺から手を引いた。

 

 その他にも色々と暗殺の依頼書を手に入れた。

 これは誰が誰を恨んでいて等の相関図が良く分かる。

 ヤマト帝国の第二宰相を狙ったものもある。

 この第四宰相の近くの屋敷・・・(オーマン国の豪商の屋敷と言い、宰相の屋敷と言いとんでもない程の広さだ。)は第二宰相の屋敷だったので、魔法を使ってこっそりと・・・(流石に腕利きの身辺警護の騎士が何人もいたが、精神感応で夢の世界に入ってもらった。)面会して身辺の警護の強化をしてもらう。


 ついでと言っては何だが第四宰相邸で捕らえてた暗殺ギルドの連中以外の身柄の確保もお願いした。

 暗殺の為に出かけている者や、よそに住んでいて暗殺者ギルドに仕事の依頼を受けに来る者もいるはずだ。・・・夢の中の身辺警護の騎士を起こして向かわせた。

 第二宰相さんは流石に暗殺者ギルド等と言うことは大事に出来ないので秘密裏に処理したようだ。・・・第四宰相邸が燃え上がっている。


 面倒なことに俺への暗殺依頼が商業ギルドの他に、二本見つかった。

 一つはヤマト帝国の皇后となっているが、皇后派の誰かの仕業だ。

 皇后の署名の筆跡が違っているのだ。


 もう一つはオーマン国の重鎮の一人熊族の長老からだ。

 熊族の長老とすれば、息子の守備隊長がキツネの宰相の嫁の反乱の際に、俺に殺されたのが気に入らないのが原因のようだ。

 ヤマト帝国の方は放置可能だが、インドラ連合国の主要国の重鎮がこんな事をしては如何かということで、俺は宵闇迫よいやみせまる中オーマン国に転移魔法で飛んだ。


 俺への暗殺は反乱・反逆罪で一族郎党全て死刑が今までの法律だが、それを厳格に実行するとオーマン国に住んでいる熊族がすべて息絶えてしまうのだ。

 ただでさえ、熊族が王国を守る守備隊という任にありながらキツネの宰相の妻の反乱に加担して大きく人数を減らしてしまっているのだ。


 俺は一人で熊族の長老の屋敷に赴く

「このような夜分、どのようなことでおいでになられたのか?」

等ととぼけているが、既に事敗れた思っている熊族の長老のシャツの首周りに汗がにじむ。

 俺は一言

「身を引け!」

と言って暗殺の依頼書を見せる。


 熊族の長老の顔がみるみるうちに青ざめる。・・・年老いて白髪化しているので良く分かる。

「私に死をたまわるので?」

と低い地獄の底から這いあがるような声でささやく、

「死ぬことは許さん!

 死ねば真相を探ろうとする者が現れる。

 いさぎよく身を引いて後身に地位を譲れ、そして口をつぐめ!

 さすれば今回の件は不問にふす。」

と告げると、

老醜ろうしゅうさらして生き続けるのが、私への罰か・・・。

 私の孫に地位を譲り、森の中で隠棲いんせいしましょう。」

と静かに語るのだった。


 これで、オーマン国の重鎮が起こそうとした暗殺計画は終焉しゅうえんを迎えた。

 彼は孫に地位を譲り、オーマン国の重鎮の身を引いて深い緑の森の中へと消えていったのだった。・・・どうも熊族の親子そろってオーマン国の悪しき伝統

『力が正義』

を悪く解釈して力を誇示するところがある。

 熊族の同じ血を引く孫も力が強いために力を誇示したがる傾向にあるので将来が心配だ。


 その他暗殺依頼書は過去のものや現在のものが多数残っていた。

 その中には、真正カンザク王国やプロバイダル王国内においても貴族の地位を狙って暗殺ギルドに暗殺を願った者が多数いるのだ。

 弟が兄を殺し、兄が弟を殺す。・・・闇の歴史が白日の下に晒されていくのだ。

 もう、亡くなった者も多いが存命する者も多い。

 暗殺等の不正な行為で地位を手に入れた者は、やはり実際の行政面等で不正な行為が多いのだ。


 俺が一軒づつ訪問して、オーマン国の熊族の長老のように対していく。

 ただこの場合は、本人の息子や娘に地位を渡すのではなく、正統な後継者である暗殺された弟や兄の子弟に渡すのだ。

 当然混乱はあった。

 貴族の地位が手に入ると思っていた、本人の息子や娘の手からするりと抜け落ちたのだから。

 反発して正統な後継者に害をなそうとする者が現れる。

 この場合、闇の歴史が白日に晒され、名誉どころかその者にも死を与えなければならないのだ。

 それでは負の連鎖になりかねない、正統な後継者に害をなそうとする輩には新天地としてヤマト帝国から割譲されたテン・ムスタッチ他の俺の領土で開墾開拓作業にあたって頭を冷やしてもらったのだ。


 しかしどうしても、テン・ムスタッチ等で開拓開墾作業を行わせても貴族意識と今までの生活から抜け出せないようだ。

 自分は汗して働かないどころか一応与えられた領地の領民を鞭うつ者、強姦殺人者まで出る始末だ。

 そいつらには本来は死刑だが、鉱山奴隷として働いてもらった。

「俺は貴族だ働かんぞ!」

等と言っていたものが、鉱山奴隷は

「働かざる者食うべからず。」

だ、絶食に負けて働き始めた者もいるが、そのまま食を絶って亡くなる者も多かった。

 こんな事をしているから貴族階級の人口が少なくなってしまうのだ。


 その反面、貴族階級の中には意欲的に働く人々も多いのだ。

 その一人がオーマン国の豪商なのだ。

 彼等を見習うべきだ。

 俺がオーマン国の豪商と手を組んで行っているのが、テン・ムスタッチ領にある商館における商品の販売だ。

 真正カンザク王国やプロバイダル王国の商品を倉庫に積み込み転移で、テン・ムスタッチの商館の隣に持ってくる。

 今度はテン・ムスタッチの倉庫を真正カンザク王国やプロバイダル王国に持って行くというものだ。


 この転移も段々と一月に一度とはいえ面倒になって来たのだ。

 そのうち転移装置が使えるほど口が堅く、倉庫が入るほどの容量がある魔法の袋を渡せる人物が出てくれば良いのだが。・・・俺の妻達でさえ大型のトラック一台分の魔法の袋しか渡していないのだ。倉庫が入るほどの大きさになると値も付けられない国宝級の品物になり命さえ狙われる品なのだ。

 今のところ俺の割譲された領地の巨大な商館長になった、豪商の双子の兄妹の義理の兄が人柄が良く打って付けの人材なのだ。


 今回の暗殺者ギルドで拾ってきた能天気二人娘が商館長のボディーガードと店内の売り子を兼ねている。

 二人とも歩くマネキン人形と思われるほどスタイルが良くて美人なのだが、能天気すぎるのが玉に瑕だ!・・・それと直ぐに万引きだと言って火魔法を放つところだ‼商館が丸焼けになるだろう。

 何が

「テヘッ。」

だ、美人で愛嬌があるので怒っている俺が馬鹿みたいだ。


 商館長も能天気二人娘も商人や売り子としては、識字率が低い事に気が付いて引け目を感じていたのだ。

 その商館長が、カボサン王国の王女様のジェネシスが真珠の首飾りを注文しに来た時の知性と教養のある受け答えに驚いたのだ。・・・能天気二人娘がそれを見て悪い顔をしていたが、何もなければよいのだが。

 流石に、このジェネシス王女様は聖魔法が使えるので、宇宙エルフ族の高度な医療を学び、紋章官としても一流の技術を身につけているからなのだ。

 本当は商館長は彼女の美貌の虜になったのかもしれないが。・・・⁉

 商館長なんと、彼女の注文に来た真珠の首飾りをタダ同然にする代わりに、彼女から自分の至らない部分の教養を教わる事にしたのだ。・・・しばらく様子を見てみよう。横で眺めている能天気二人娘が俺にニンマリ笑いかけるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る