第22話 新たな仲間
船長の引き継ぎ事項を終えたクリスと共に俺達は乗組員の見送りを受けて、魔の森の帝王を後にする。
下降用のエレベーターに乗る。クリスが言うには単なる様式美だそうだ。
エレベーターを降りて、外に出ると門番さんとモンが待っていた。
水の精霊達も短い命を終える前にモンの中に入ったそうだ。ただモンも不安定でいつまでもつか分からないと言っている。
モンも俺達の後ろをついて来た。モンが言うには
『この魔の森の帝王は『移民船R-1』を取り込んだ形で成長したもので、この魔の森を管理している。
私が魔の森の帝王と連絡を取って領地の範囲を決める。一応今のところ、現在の館の十倍、将来的には魔の森の十分の一までは許すがそれ以上は拡大しないようにして欲しい。
食肉植物は管理できないものがいる。
領地に侵入してくるものは、出来れば水魔法の氷魔法で氷漬けにして領地外に運んでほしい。何度か繰り返すと領地には入ってこなくなるはずだ。』
と説明してくれた。
門番さんについて再度聞くと
『魔の森の帝王と
『移民船R-1』
の技術により作られた木製のゴーレムで侵入者を阻止する目的で作られた。
今まで負けた事がなかった。敗北すれば新しい門番と交代し、勝った者を魔の森の帝王の中に案内する役目だ。』
俺達が転移で戻ろうとすると、目標にしていた樹木が無い。流石魔の森、魔の植物類が移動する際、他の植物類を連れて移動してしまうそうだ。
俺達は徒歩で進む、俺は身体強化魔法を使って楽々と歩く。
ユリアナとセーラも身体強化魔法を真似てみる、クリスとモンはすぐ出来るようになった。
努力家のユリアナとセーラもしばらくすると身体強化魔法が出来るようになり、俺達の徒歩の速度が短距離の走者のような速度になった。
俺達がそんな速度で進んでも魔の森の植物達はそそくさと道を開けることが出来る。
二週間後、午後いつものとおり歩を進めていると、何となくやさぐれた感じで俺ほどの大きさの植物が道をふさいでいた。
擬人化すると、身長2メートルの大男が黒いサングラスをかけ、アロハシャツのような派手な服を着て顎に手ならぬ葉を当て寝そべっているのだ。
モンが
『こいつが食肉植物です。』
と俺に小声で教える。
食肉植物が立ち上がる。葉を振り回す。横にあった大木が食肉植物の葉ですっぱりと切れる。
俺は
『葉ならぬ刃だな!』
等と阿保な事を考える。余裕がある証拠だな。
食肉植物には毒物と葉で切るタイプの2種類があるが、こいつが葉で切るタイプだ。
俺は水魔法の氷魔法で食肉植物を氷漬けにする。
葉を振り回して氷を防いでいたが俺の魔力量に負けて氷漬けにされた。
俺達が横を通る時、俺を食肉植物が驚愕の目で見ていた。
食肉植物には多少の知能があり、葉で捕食した動物を細切れにしながら食べるそうだ。
湖畔の館に行くまでの間、時々俺達4人で中級ダンジョンに入る、ステータス画面を持たないモンはダンジョンの外で待機してもらう。
クリスもネズミが嫌いなようだ。
以前の王女のユリアナと公爵令嬢のセーラが、ネズミの魔物の大群で泣き出し、スライムに覆いかぶされそうになって逃げ出したのを思い出した。
湖畔の館の近くにある中級ダンジョンを攻略する。最後の部屋のゴールデンゴーレムを倒す。この部屋で一晩泊まることにした。
クリスが今日ここで約束を果たして欲しいと迫ってきた。
エルフ族の美少女で雌雄同体の中性的な体で抱き付いてきた。
変に背徳感とエロティシズムを感じる。
クリスが一糸纏わぬ姿になる、美少女の長い銀髪が彼女の胸のわずかなふくらみと股間をかくして、俺の方が押し倒される。クリスの唇が近づく、思わずクリスの唇とあわせる。火がついたように俺とクリスと肌を合わせる。
ユリアナとセーラの二人が固まったように見ていたが、クリスの喘ぎ声に誘われるように二人とも一糸纏わぬ姿になって絡みついてきた。
二人とは結婚式が済むまでは肌を合わせないと思っていたが理性が何処かに飛んだ!獣のように三人とまぐわった。
長い濃密な一夜を四人で共有する。
朝、部屋の壁にある松明が自動的に灯ると、クリスが自分の体を確認して、何を思ったのか体に掛けてあった毛布を広げて
「見て見て!女の子の体になっている!」
と言って恥ずかしげもなく体をさらすと俺にまた抱き付いてきた。
クリスは女の子になれた感激で涙に濡れている顔を見たら・・・まあいいか!今度は俺の方がクリスを押し倒して肌を合わせてしまった。当然ユリアナとセーラの二人も参戦した。
四人とも満足そうな顔でダンジョンから出てきたら、モンがダンジョン内で良い得物でも出ましたか、等と声を掛けてきた。
何も答えられずに湖畔の館に向かった。
魔の森の帝王の場所から半月程で湖畔の館に辿り着いた。
湖畔の館に戻って、皆にクリスとモンを紹介する。
二人を宇宙エルフ族や木製のゴーレムだったとは言えないので、二人ともエルフ族の特徴を持っているので魔の森の帝王を守るエルフ族として紹介した。
湖畔の館に戻った後、俺はモンが言っていた、現在の館を守る城壁の範囲の500平方メートルの十倍の範囲だと思い一度地割してみる。
ところがモンが言うには、館の範囲は田や畑、果樹園、そして温泉の源泉と冬季にスキー場として使っていたゲレンデや俺が最初に連れられてきた大木の周りの範囲等も含む範囲の十倍だと言う。
それに俺がカナサキ村から湖畔の館、湖畔の館から魔の森の帝王の所まで歩いた道も10メートルの幅で道を作れると言う。
地図を作成して範囲をまず指定してみた。
かなりの広さだが、魔の森全体がおよそ530万平方キロで巨大であり、将来はその十分の一53万平方キロもの広さを開墾開発することができるそうだ。
無駄話、前回は世界6位がオーストラリア、7位がインドで、魔の森の広さはその中間付近と説明したが、日本と比べるとどうであろうか?日本の総面積が世界61位で38万平方キロ、ちなみにフランス本国のみで55万平方キロの広さを誇るそうだ。フランス本国程の広さの土地を開墾開発出来る事になる。閑話休題。
訳の分からない人が多数流入してきて無秩序に開墾開発されるのは問題だから道路作りは後まわしだ。その前に足元をまず固めよう。
俺達が湖畔の館に戻るまでの間、皆で付近にあるダンジョンを攻略していたらしい、ベックさんはダンジョン内に奥さんのベルゼさんと入るようになってしばらくしてから、お酒を飲まなくなった。
何でもダンジョン内で危なくなったベルゼさんをベックさんは酔っぱらっていたため助けることが出来ず、代わりに超イケメンのヤシキが助けたらしい。
ベルゼさんがやたらとヤシキを褒めるので嫉妬と反省からかそれ以来ぴったりとお酒を止めて、体を鍛え直しているようだ。
それで、自分の子供達ばかりか、亜人のルウや女官見習の女の子達8人と近衛見習い男の子達8人にも尊敬の眼差しで見られている。
サコンさんは流石に親を近衛の団長に持つだけに、亜人のルウや女官見習の女の子達8人と近衛見習い男の子達8人を統制よく指揮している。
朝、夕は剣術道場の次男の棒術男ジロウさんと超イケメン男のヤシキさんとで、亜人のルウやベックさんの2人の子供達、女官見習の女の子達8人と近衛見習い男の子達8人を鍛えていたらしい。
特に力をつけて来たのが例の汚水三人組だ。
一対一ではジロウさんに簡単に負けてしまうが、三人一組でジロウさんに対すると、よい勝負をする。結果はやはり負けてしまうが強くなった。
10歳以上の子は今年は全員冒険者予備校を受験してもらう。
それで、冒険者ギルドで10歳になった近衛見習いや女官見習いの子供達、クリスの冒険者カードの発行と冒険者カードを持っている皆のダンジョン踏破の登録をしてもらう。
冒険者カードの発行はモンは、長くても1、2年の命なのでと言って断った。
冒険者ギルドの受付で、クリスが宇宙エルフと書いたら受付のキャロル小母さんが、
「宇宙は止めましょう。」
と言ってエルフにした。
年齢もカプセルから出て何やかやで4ヶ月程なので
「4ヶ月」
と書いたら、冒険者になるには10歳を越えないとだめだし、
「見た目はスグルと同じだから16歳にしておくね。」
等と言っている俺の時もかなりいい加減だったけどこれでよいのか。・・・まあ良しとしよう!
ダンジョン踏破の登録でルウやベックさんの奥さん、近衛見習いや女官見習いの子達もEランクまであがっていた。
俺達3人を除いた全員が一ランク上がったが、残念ながら俺達のランクは上がらなかった。2Sから3Sの道のりは遠い!
冒険者ギルドの支部長に冒険者予備校の試験日を聞いたら三日後だという。
全員で王都に向かう、何かデジャヴュを感じる。
何故全員かというと、王都の冒険者予備校は10歳から30歳まで受験する事が出来るが、ベックさんの奥さんベルゼさんは実は28歳で残り3年しか受験資格がないからで、そのうえ、ほとんどの近衛見習いや女官見習いの子供達も受験するからだ。
王都にぞろぞろと馬に乗って向かった。
俺は男爵に叙爵時に館をもらっているがユリアナとセーラの二人の勧めで、冒険者予備校の卒業済みのベックさん達と一緒に宰相の別宅にお邪魔した。
今回の冒険者予備校の試験で10歳児で受けるは近衛見習いの汚水三人組とルウと女官見習いの女の子の4人だけだった。
今回も1週間の予定で冒険者予備校の試験が行われた。
魔法の部も剣士の部も予備選はトーナメント方式で20の予備選の山が作られている。
うまい具合に予備選では全員が別の山になった。
魔法の部の受験者は、ベックさんの奥さんのベルゼさん、クリス、ルウ、女官見習いの五人の計八人であった。
魔法の部ではクリスが圧倒的な強さでトーナメントの山を優勝した。
ルウも俊敏な身体能力で相手の魔法をよけながら火魔法で勝利している。
ルウは明り魔法だけかと思ったが火魔法も使えるようになっていたのだ。
ベックさんの奥さんベルゼさんも優勝者に名を連れ、女官見習いの10歳以上の二人が優勝した。10歳の子を含んだ三人は準優勝だった。
剣士の部の受験者は女官見習いの一人、近衛見習いは汚水三人組を含む五人の計六人であった。
剣士の部では、汚水三人組が健闘してトーナメントの優勝をもぎ取った。女官見習いともう一人の近衛見習いは準優勝であった。
俺は王族達の席の片隅で観戦していた。
王太子はニコニコと両脇に姉を座らせて観戦していた。
王族の席でも賭けは行われる。当然俺はクリスやルウ達受験者全員に賭けた。おかげでとても儲かった。
向かいの席で、カナサキ村のギルドの支部長とキャロルさんがニコニコしていた。デジャヴュを感じる。
これで受験者全員が予備選の優勝者と準優勝者になった。
受験者全員が総当たり戦の本選に参加した。ベックさんの奥さんはトーナメントの優勝者で貴族なのだから、無理をしなくてもいいのに参加するという。
魔法の部ではクリスが圧倒的な強さで優勝し、準優勝はルウだった。ベックさんの奥さんと女官見習いの女の子達も奮戦しベスト8に全員が入った。
剣士の部の優勝者は女官見習いの女の子シズルで、準優勝者は同点で汚水三人組が滑り込んだ、同点の場合は特例で優勝者だけになる場合や今回のように優勝者と準優勝多数の場合もある。
シズルは体力を温存し隙をついた攻撃スタイルで良く戦った。
何でもシズルはウコンさんの姉の子供、姪にあたる子でウコンさんの師匠に鍛えられたので戦法がウコンさんとよく似ていた。
他は団栗の背比べで、汚水三人組を含む近衛見習い四人は、お互いに星を潰し合ってしまい、ウコンさんの姪シズルに名を成さしめられた。
近衛見習いの最後の男の子もベスト8に入っている。
最終日に王家で園遊会が行われた。
俺の時は黒龍様の騒ぎで無かったのだが、俺の冒険者予備校の試験に参加した家臣達は、予選の優勝や準優勝のメダル、本選の優勝や準優勝、ベスト8のメダルをつけて参加させられた。当然引き抜きが多い。
特にクリスとシズルが予備選、本選優勝のメダルを持っているので引く手あまたであった。
その他にはベルゼ子爵夫人が注目の的だった。
子爵で元資産家でカンザク王国の舞踊の華と呼ばれ、しばらく見なかったのが冒険者予備校の初試験で予選を優勝し本選でもベスト8になったのだ。
ベルゼ子爵夫人は子爵夫人に相応しい豪華な衣装で装い、彼女の周りには色々な男性や女性が群がっている。
そのうちベックさんが焦れてベルゼさんをひったくるようにして連れ出した。
その他には、近衛の団長が姪のシズルを引き取りたいといったら、ウコンさんやサコンさんに怒られて小さくなっていた。
ウコンさんと姪シズルの師匠もこの園遊会に参加しており、王が余興にと俺とその師匠が戦うことになった。闘うのはお互いに五手までという条件付きだ。
俺が横に立っていたモンから木刀をもらって対峙したのは、見た目は杖をついた腰がまがった痩せた老人であるが、目が炯々と光、痩せて見えるが細いが強靭な筋肉がついているのがわかる。
老人の体から気が膨れ上がる。曲がった背が伸び始めて、すくっと立って手に持った杖を脇に構え、杖の長さを隠す。
老人はそのまま、スルスルと後退して間合いを外すと
「剣吞、剣吞、命が幾つあってもたまりませんわ、王様この人は化け物や、お相手できませんよ!それに今回の優勝者は私の弟子でも俊逸、その横の女の子も試合には出ていなかったが人外の化け物や無理ですよ。」
といって、近衛の団長に挨拶をして飄々として城外に出て行った。
園遊会には俺が商人に頼んだ清酒が持ち込まれていたので、余興代わりに王や宰相に樽酒を割る鏡開きをしてもらうことにした。
皆で「ヨイショ」の掛け声と共に鏡開き用の槌を振るって樽酒の蓋を割った。枡酒が振る舞われた。口当たりがよい樽酒に皆が酔いしれた時、俺達も城を後にして夜道をカナサキ村へと馬を進ませたのだった。
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