第23話 青龍とモン
湖畔の館を大きくする。
まずは、牛や馬をいつも飼育するため以前より広くした牛舎や厩、それにサイロも5棟に増やした。
そろそろくず魔石を入れたサイロも一杯になって来たので、くず魔石専用のサイロも増設した。
自給自足で食糧確保のため何面にも増えた野菜もどきの畑や田圃と果樹園等。
それに鍛冶仕事以外にも木工工芸や陶芸の窯、鍛冶場の横には反射炉等も作ってみた。
川沿いには、紙を作る工房と印刷工房を造り、図書館内にも印刷所を併設した。
大きな石造りの館の本館と近衛見習いや女官見習いの子供達のための学校と大食堂、皆がトレーニングルームに朝集まるので明るく大きくした。武道館も大きくして、弓道場も造った。
後で本格的なゲストハウス、迎賓館を作ることにするか。
俺達が本館の居間でくつろいでいると、クリフさんが防犯のためと渡してくれた像をとおしてクリスとモンを確かめる
「この女の子はステータス画面を持ち、名はクリスと申すか、宇宙エルフの純血種で船長だから俺とは遺伝的に兄弟姉妹になる子供か?
モンという名の、この女の子は魔の森の帝王の系統で宇宙エルフの技術で出来た木のゴーレムか?よかろう、この二人は滝の裏の家に入ることを認める。
ところでクリスよ雌雄同体の宇宙エルフが女性体になっておるな。
めでたい!そいつを嫁にしたな!」
と言って喜んでいた。
俺達は滝の裏の家に転移する。
モンは
『この家は感知出来なかった、この家は私の主である魔の森の帝王の力を持ってしても感知出来なかった。将来の約束の魔の森の10分の1には含まない。』
と言っている。
滝の裏の家に
『移民船R-1』
から持ってきた医療用ロボットの付いたポット、医療ポットを設置して、最低でも一ヶ月に一度は体のメンテナンスのために中に入って寝ることにする。
今晩は皆で医療ポットに入って眠る。
『プシュッ』
と言う音と共に医療ポットの蓋が開く、体が最適状態になっている。
朝起きて、いつもの日課を始める。
滝の裏の家のトレーニングルームで、ゆっくりとストレッチをして体をほぐし腹筋を準備運動代わりにしてから、今日は上半身中心のトレーニングをする。軽い重量でベンチプレスから始める。
その頃には、ユリアナとセーラの二人もトレーニングに加わる。後からクリスやモンも見よう見まねでトレーニングをする。
一時間程してから、湖畔の館の本館の温泉に皆で転移する。
シャワーで汗を流してから、大食堂で皆と一緒に朝食を食べる。
ベックさんの子供達やルウ、近衛見習いのや女官見習の子供達が一番喜んでいるのが温泉プールだ。
しかし、これだけの人数になるとプールが小さい、横に流れるプールや飛び込み用のプールも作るか。
念願だったビニールのビーチボールや浮き輪が出来た。クリフさんにビニールという言葉で聞いたのが悪かった、
『移民船R-1』
で付帯脳に知識をもらった時に繊維の部門で化学繊維と言う項目でビニールと同様なものが書かれていた。それでビーチボールや浮き輪を作ることが出来たのだ。
俺は、子供達の遊んでいるプールの中にビーチボールや浮き輪を投げ入れてやった。取り合ったり、ぶつけあったりして遊んでいる。
俺は17歳になった。
前世では高校三年生、俺は進学、教育系の大学に進んで剣道を教える道に進むのか就職、警察官になって剣道を続ける道に進むのかとその時はずいぶん悩んだ。
結論を言えば警察官になる道を選んだのだが。
この世界では人生50年、17歳は十分大人だ。
俺の身長は丁度2メートル、この世界の人類の平均身長が1,5メートルに比べてもでかい。
身長の高いのは、俺のご先祖様の血筋、亜人それも虎人種の血統によるものだった。身体的な能力も基本的に高い。その上俺の意思に反して?精力絶倫‼
ユリアナとセーラ、クリス達と一度肌を合わせてから、夜必ず三人のうちの誰かがいる。二人とか、三人の場合もある・・・が。等と思っていたら、ユリアナとセーラの二人にプールに落とされた。
二人のはじける様な笑顔を見ていたら俺も青春しよう!
アイスクリームを作ってみる。牛乳を水魔法で凍らせてみる。ユリアナとセーラの二人は試食しながら甘みが足りないカキ氷だ等と言っている。
それでも子供達には、とても人気があった。
アイスクリーム作りにベックさんの奥さんのベルゼさんやクリス、モンも参戦してきた。
甘いものはチョット等と言っていたベックさんやサコンさん達も試食と称して舐めていた。
ユリアナとセーラの二人もパティシエのスキルに火がついたのか、果樹園や温室から果物を持ち出してパフェまで作り始めた。
当然子供達には大人気だった・・・翌日子供達は冷たいものの食べ過ぎで腹を抱えてグッタリしていた。
一週間の半分は農業、半分は工業の作業をしてもらう、農業と言っても開墾作業だけでなく酪農畜産や林業もする。
魔の森との共存共栄のためには林業、植林も大事な仕事である。
魔獣植物の木も古くなった枝を落としてあげたりして手入れすると、代りに魔獣植物が木の果実をくれたりする。
魔獣植物の木の果実も絶品である。
湖畔の館が手狭になって来たので、予定していた本格的なゲストハウス、迎賓館を建てることにする。
材料集めに今まで採石していた、4キロ程離れた岩山にはいる。
同行者はユリアナとセーラ、クリスとモンの四人だ。
土魔法を使って石を切り出す。
以前と同様に土魔法だけでなく他の魔法でも石を切ってみる。火魔法で石を割ったり、水魔法で切ったり、風魔法で切ったり、木魔法で根を生やして割ってみたりと色々試す。
以前とは違うのが魔力切れをなかなか起こさないことだ。
モンは石切り場についてキョロキョロしている。
この岩山も魔の森の帝王の支配下に入っていないそうだ。
この岩山は今まで湖畔の館や牛舎や厩、サイロ等を作るため山の形が変わるほど採石をおこなってしまった。
山が崩れないように山頂から採石し、上部が平たい大きな運動場位の大きさになった。それでもモンは何か挙動が不審だ。
そのうちに帰りたい等と言い始めた。
夕暮れが迫ってきた。
俺は明日のために今日最後の土魔法を使って、一際大きな石を切り出した
『ボク』
という、大きな音がしたかと思ったら足元が崩れ大穴が開く、俺は真っ逆さまに落ちていく。
風魔法を使おうとすると、何かに阻まれる。魔法が発動しない⁉
俺の後をユリアナとセーラ、クリスが続いて飛び降りてきた。
彼女達も魔法が発動しないので焦っている。
身体強化魔法を使う、体が虹色に輝いて身体強化魔法は使えるようだ。
それを見た三人も身体強化魔法を使うユリアナは火魔法に特化しているので赤色がきつめの虹色で、セーラは治癒魔法に特化しているので銀色がきつめのの虹色、クリスは宇宙エルフとはいえエルフ族は木魔法に特化しているので緑色がきつめの虹色で輝いている。
身体強化魔法で視力が上がりすぐ床が見えた。
体を回して足から着地する。彼女達も次々と着地した。上を見上げるとモンが心配そうに見下ろしている。
深さ10メートル位か。モンに俺達だけで穴を探検するとジェスチャーで知らせる。
穴の中にはポッカリと下に降る横穴が開いている。穴の中は燐光を発する鉱石や蛍のように光を発する大きな虫が飛び交いほの明るく見える。
全員に俺の作った火魔法の付与魔法した日本刀を渡す。
身体強化魔法を使って俺の作った日本刀を振ってみると発動するようだ。
しばらく進むと扉のある部屋に出る。
ステータス画面をダンジョン探索マップに切り替える、この場所に
『?』
マークがついている。
扉のある部屋を開けると「でかいモグラ」がシャベルのような腕を振って襲ってきた。
日本刀に付与魔法の火を纏わり付かせて、その腕を体で捌いて切り落とし、その勢いのままにモグラの首をも切り落とす。
普通のダンジョンのようにでかいモグラは泡のようになって消えて、宝箱が現れた。
中から俺の持っているドラゴンキラーより一回り大きいキングドラゴンキラーが一振り出てきた。
クリスが俺の以前から持っていたドラゴンキラーを欲しがったので渡してあげた。
その部屋はドアが崩れてセフティールームにはならなかった、そのうえドアの反対側に大穴が開いて通路になった。
ステータス画面のダンジョン探索マップの
『?』
マークから
『元始ダンジョン』
と表示された。
その後何度か扉を開け「でかいモグラ」を退治した。その都度ドラゴンキラーやキングドラゴンキラーが出てきた。
ドラゴンキラーは龍族の至宝だったはずだが?
一際でかい扉にたどり着いた。
扉がひとりでに開く、中に入ると石の牢があり、その牢の中に手枷足枷をした老人が座っていた。
俺達が中に入ると老人が立ち上がる、意外と背が高い身長2メートル近い俺と同じ位だ、石牢が消えて老人の手枷足枷も消える。
老人は低い声で
「石の牢獄の中で待っていたぞ、旅する者よ!」
老人がふらりと俺の前に立つと、回し蹴りを放ってきた。
轟音をあげて俺の頭の上を通過する、頭髪が回し蹴りで切れてはらはらと落ちる。
「ほんの挨拶だ、これから本気で行くぞ。」
老人とは思えない動きで前蹴りを飛ばしてくる、その足をしたから掬い上げる。
反対の足が跳ね上がって蹴ってくる。
その足が俺の顎に向かってくる。
相手の蹴りに対して後退するが足が伸びてくる。
体を捌きながら、俺もその蹴りに対応して蹴りを放つ。
『ガキッ』
と音がして俺と老人の右脚が折れる。
俺が転がると、セーラが俺の折れた脚に直接治癒魔法をかける。
ユリアナとクリスが老人に対して日本刀を構える。
老人は片足で立って距離を取ると
「フンッ」
といって折れた足を振ると足が治る。
「これはこれは赤龍と白龍の加護を持つ高貴な双子の女の子と宇宙エルフの純血種の女の子か、亜人とエルフ族の混血の男はおもてになるようだ。」
治療中のセーラを制して、俺も片足で立ち上がると
「フンッ」
といって折れた足を振ると足が治る・・・折れたのを元に戻しただけだが・・・素知らぬ顔をしているが痛い‼
俺は素知らぬ顔で治癒魔法をかける。
自分の体を自分では治せないはずが身体強化魔法を使えるようになってから治癒できるようになった。
老人は
「フン、無理はせんでもよいぞ、今楽にしてやるからな。」
と言って上空に手を伸ばすと、刃幅の大きな柳葉刀を引きずり出す。
片手で柳葉刀を持つと回すようにして振り始める。
俺は折れた足に重心をかけ、腰に差した守り刀の柄に軽く手を添える。
老人は俺の構えを見て、回していた柳葉刀を上空に戻すと全長2メートルはあろうかと思われる
『青龍偃月刀』
を引きずり出してきた。刃は、青々とさえわたり青龍が彫り込まれる。
老人はゆっくりと青龍偃月刀を頭上で回す。
ゆったりとした動作だ。
俺も魔法の袋から刃渡り3尺9寸6分(約120センチ)もある大太刀を抜き出すと構える。
俺は中段で老人の左拳に刃先をつける。
老人は俺の構えを嫌って右へ右へとじりじりと動く、折れた右足を踏み込むときに少し動きが悪くなる。
ゆっくりと俺を中心として円を描くように動く、無限の時を二人で円を描く、その間に頭の中でお互いに隙を見つけては打ち込んでいくが、お互い相打ちになり、お互いが地に伏せてしまう。
俺と老人の額に汗が滲む、老人から時々凄い殺気が噴き出す。俺もその殺気に呼応して殺気を放って相殺する。
一周する。また一周する。
俺と老人の額の汗が玉のように流れる。
老人の目に汗が流れ込む、嫌がり少し首を振る。
俺は隙と見て痛む足で踏切り、老人の面に向かって小手もろとも切り飛ばすつもりで大太刀を振り下ろす。
老人は俺の太刀を外すため左手を離して右手一本で青龍偃月刀を俺の左面に打ち込んでくる。
俺は踏み込んだ足に力を込めて全身の体のバネを使って振り下ろした大太刀を振り上げ無〇直伝〇信流の太刀打之位九本目心妙剣の要領で老人の青龍偃月刀を巻き落とし勢いそのままで老人の首を狙って打ち込んでいく。
老人は青龍偃月刀を巻き落とされた力を利用して地に伏せる。
老人の髪が切れ飛ぶ。
老人は倒れながらも俺の足首目がけて青龍偃月刀を打ち込んでくる。
俺は青龍偃月刀の太刀筋を見極めて軽く飛び上がって避けると老人の頸椎に向かって膝を落とす。
老人の体が青龍偃月刀に吸い込まれ見る見るうちに青い龍・・・青龍に変身する。今まで出会った白龍、赤龍、黒龍達よりも年老いた古龍種だ。
青龍は口を大きく開き俺に食らいつこうとする。
俺はその顔を右手で殴り飛ばす。頭を振ってダメージを散らそうとする。
俺は竜の顎を蹴り上げる。
青龍になった分だけ的が大きくなった顎にクリーンヒットする。
長い体がもんどりうつように倒れる。
そのまま、ドラゴンキラーを取り出して首を切り飛ばす。
青龍が泡となって消え始める。
「ありがとう、龍を制する者よ。これで新たな生を手に入れることが出来る。縁があったら百年後に会おう。」
消えたその後に青龍偃月刀が落ちていた。
倒した後には宝箱は現れなかった。
元始ダンジョン踏破の赤文字が表れるが、時間が表示されていない・・・?
青龍偃月刀が小さな人形になる。顔はのっぺらぼうで胸にわずかにふくらみがある。
小さな人形は周りを見回すと、俺達が降りてきた横穴を駆け上がり始めた。
俺達も小さな人形を追いかける。俺達が落ちた穴まで駆け戻る。
小さな人形は上を見上げる。穴の縁からモンが見下ろしている。
小さな人形は手を差し伸べるようにしてモンに向かって飛び上がる。
モンも小さな人形に向かって手を差し伸べた。
二人の手が触れあうとそこから二人が融合していく。モンは目に険があり筋肉質で豊かな双丘を持つ青い髪を持つ美少女になっていく。
俺達は身体強化魔法を使って穴側面のでこぼこした石を足掛かりに駆け上る。
青龍と融合したモンが跪いて俺達を迎えた。
「このダンジョンは古すぎて、私、青龍を再生する事が出来なかった。ちょうどここに魔の森の帝王の木のゴーレムの成れの果てがいた。このゴーレムの寿命がわずで今にも朽ち果てるところだったので、私と融合して寿命を延ばした。青龍の知識とモンの知識がある、このままモンとして雇ってもらえないか。」
と言うではないか・・・まあよいか!
何でもモンの体が一時的にダンジョン代りになっているそうだ。ところで、聖龍のみが男性体になるようなことを以前聞いたことがあるが・・・?
モンが
「龍種は宇宙エルフと同様に雌雄同体で生まれてくるのだ。
一応取り決めとして聖龍以外は女性体に自分の意志でなるそうだ。
例外として、雄つまり聖龍に雌雄同体の時に犯されると雌になるのだが。
今からちょうど一万年ほど前に私が生まれた、その時は私はどちらかと言えば雄になる要素が強かったようだ。
それを危惧した聖龍が私を襲ってきたのだ、何度も操を守るために戦った。
見た目も爺だし気持ちが悪かったので、戦い抜いた。
今のお前みたいに男前だったら文句もなかったのだが。
私が青龍として男性体になったところで、聖龍は自分の地位を脅かすものとして討伐が言い渡された。
聖龍としては、お山の大将は一人で沢山だからな。
私も対抗処置として聖龍のそば仕えのワイバーンに奴のドラゴンキラーを盗み出させた。
このダンジョン内にあったドラゴンキラーは奴のドラゴンキラーの複製品だ。
私も聖龍以外の同僚の龍種を怪我させるわけにはいかず。
捕まってあの様だ。
石の牢に手枷足枷され、その上、大きな石の蓋を載せられた。
私は誰かが訪れなければ、あと千年もしないうちに崩れ去り二度と陽の目を見ることが出来なかったところだった。」
と説明してくれた。
青龍に戻るには、旅をしている間に再生可能性のある上級ダンジョンを見つけて再生に挑戦するそうだ。
今のままでは龍になることが出来ないらしい。
今日は一度湖畔の家に戻ることにする。
転移で戻る。一応俺が領主なので皆が迎えてくれる。
そのからくりは湖畔の家の門外にちょっと大きめの鐘突き台があり、それを鳴らす。しばらくして湖畔の館の中から鐘の音がしてからはいるのだ。
迎賓館用に大量に作った石のブロックよりも、モンが青色の髪に目が一寸きつめの美少女になって戻って来たのには皆が驚かされた。
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