第20話 魔の森の帝王の正体、いきなり宇宙戦争!

 俺達は、新たな門番さんから

『私達は魔の森の帝王の木製のゴーレムで侵入者を阻止する目的で作られました。

 今まで負けた事がなかったのです。

 敗北すれば新しい門番と交代し、新しい門番が勝った者を魔の森の帝王の中に案内する役目なのです。』

そう言って魔の森の帝王の所まで俺達を連れていくと歩みはじめた、俺達も帝王の木陰に一歩、歩を進めただけで帝王の根元まで来ていた。


 帝王の根元まで来ると、目の前には木の壁しか見えない。頭上には太い木の枝が生い茂り太陽の光は全く透らないのだが、周りは薄暗く感じて見える程度だ。

 新たな門番さんが帝王の木の壁に手をそっと添えるようにしておくと木のムロの入り口が開く。

 新たな門番さんがその入り口に入る。

 俺達も続いて入ろうとすると、何か柔らかい壁のようなもので侵入を阻まれる。これが結界と言うものか。

 俺の新たな下仕えになったモンが

『御主人様達、そのまま押し進んでください。』

と言いながら進んで見せてムロの中で待っているので、俺達も、そのまま歩を進める。


 柔らかい壁が体を押し返そうとするが、そのまま押し進むと柔らかい壁の中に包まれるようにして入った。

 さらに押し進むと、するといきなり抵抗が無くなり魔の森の帝王のムロの中に入っていた。

 また、しばらく歩くと木の壁が現れる。

 また新たな門番さんが木の壁に手を触れると、壁が開き四角い何もない部屋が現れる。

 新たな門番さんが中に俺達を招き入れる、俺達は四角い部屋に入る?新たな門番さんとモンがその前で立ち止まって

『ここで、お待ちしております。』

と言ってモンがメイドらしくきれいに頭をさげる。

 いつの間にか、モンの肩に水の精霊や木の精霊達が乗って小さな手を振っている。


 新たな門番さんが

『魔の森の帝王の所まで。良い旅路を』

と告げながら頭を下げると、壁が閉まり俺達だけを乗せて上昇し始めた。エレベーターか?

 今までエレベーター等に乗った事がないユリアナとセーラの二人が俺の腕にしがみついて来た。

 一寸上昇感があったが、すぐそれも収まり、壁が消えた、いや壁どころか床も天井も消えて暗い空間に俺達は放り出された。


 真っ黒な何もない空間がはじけ飛ぶ、ビックバン宇宙の死から誕生の始まり。

 いくつもの銀河が産まれ、消えていく。

 一隻の巨大な宇宙船が見えてきた。

 中央が大きなペンシルのような形のロケットで、その外側を五つの巨大な円形のコロニーがゆっくりと回っている。

 俺達は、その巨大な宇宙船に吸い寄せられていく。

 円形のコロニーの中には大きな街や公園や農園等が見える。

 学校なのか色々な種族の子供達が椅子に座り机に向かっている。机から子供達の頭に向かってコードがつながっている。

 頭の中に

『本当はコードも必要ないが、椅子に座らせるために机と頭にコードを付けている。』

と説明された。頭の中にどんどん情報が流れ込む。


 この船は

『移民船R-1』

というらしい、彼らの住んでいた銀河がブラックホールに飲み込まれて消えた。移民可能な星を探しながら彷徨さまよっているのだ。

 移民船のメインコントロールルームにはいる、警報音が鳴り響き、室内の明かりが慌ただしく点滅する。

 慌てて、メインコントロールルームに色々な種族、現在の世界でも見かけるエルフ族やドワーフ族、亜人族の乗組員達が走り込んでくる。


 沢山の肩章を付けたいかにも船長と思われる、滝の裏の家のクリフさんとよく似たエルフ族の小太りな男が中央の立派な椅子に腰を下ろした。

 この男はバリトンボイスで

「第一種戦闘配置、全てのコロニーは非常事態に備えて分離独立航行に備えよ。」

と命令を伝えた。

「こちら戦闘指揮所、迎撃システム作動、迎撃用戦闘機発進準備完了。」

「こちら機関室、最大出力、エネルギー充填率120パーセント。」

「第一コロニー、コントロールルーム立ち上げ完了、分離独立航行準備よし。」

・・・・・・

等の連絡がはいる。


 遠方に巨大な宇宙船が見える、全く別のテクノロジーで作られた宇宙船だ。海の中にいるウニを大きくしたような形だ。

 ウニの黒い棘が蠢き移民船にむけられる。ウニの黒い棘が移民船に向かって発射されて飛んでくる。

 移民船からレーザーと思われる高出力の兵器の光が黒い棘に向かって発射される。棘はレーザーを意にも介さず直進してくる。

 移民船から棘に向かってミサイルが発射される。

 太陽が出来たような原子の爆発の光が宇宙を照らす。眩しい光が収まると、棘の一部を大きく溶かしただけの棘が三番目の円形コロニーを破壊しながら、中央のペンシル型のロケットに突き刺さった。


 突き刺さった棘の先端部分が開きわらわらとのような異形の生物が溢れるように出てくる。乗組員の戦闘員がレーザーライフルを持って迎え撃つ。

 蜘蛛は前脚を上げると先が小型の銃器のようになり、実体弾が発射される。部屋を区切る壁どころか外壁もずたずたに穴を開け、切り裂いていく。

 室内の空気があっという間に抜けていく、宇宙服を着ていない戦闘員が悶え苦しみながら死んでいく。

 蜘蛛の侵攻が続く、移民船の残り四つの円形コロニーが分離を始める。


 ウニから情け容赦なく棘が四つの円形コロニーに向かって発射される。

 二つの円形コロニーが棘の直撃を受けて小さな太陽の光を放って消えていく。

 三つ目の円形コロニーがものすごい勢いでウニ本体に突撃をかける。

 ウニの棘が慌てて迎撃しようとするが円形コロニーとウニ本体がぶつかり、今までにない巨大な太陽が出現する。

 原子エネルギーを満載した円形コロニーがしばらくの間、太陽の輝きを発し続ける。

 最後の四つ目の円形コロニーも棘の直撃を受ける、円形コロニーの半分が切れて飛び散り、残りの半分が宇宙をしばらく彷徨った後、何処かの惑星の重力に捕まって落ちていく。


 ペンシル型の宇宙船の前部のメインコントロールルームと後部のエンジンルームとが分離し始める。

 エンジンルーム付近に突き刺さっていた棘が危険を感じてか後退し始める。棘に乗れなかった蜘蛛が宇宙に

「蜘蛛の子を散らす」

という言葉とおりにまき散らされていく。

 エンジンルームが爆散する、さしもの棘も衝撃と爆風でひしゃげている。

 メインコントロールルームと棘はしばらくの間宇宙を彷徨う。

 メインコントロールルーム内に簡易の冷凍冬眠カプセルを備え付け、生き残った乗務員がカプセル内に入る。しばらく宇宙空間を彷徨ったメインコントロールルームと棘は、ある惑星に引き摺られていく。

 メインコントロールルームは東の大陸に、棘は西の大陸に降り立った。

 メインコントロールルームは巨木、魔の森の帝王となり、棘は西の大陸の魔王城になった。


 長い映像が終わり、暗い何もなかった空間にもどる。

 しばらくすると床や壁、天井が現れて俺達を包む、ユリアナとセーラの二人の指が俺の腕に食い込んでいる。

 床や壁や天井が俺達を包んで元の部屋になると、ホッとしたのか二人の指の力が緩む。

 壁の一方向が開くと、映像で見たメインコントロールルームの中に俺達はいた、俺達の目の前には映像で見た、沢山の肩章を付けた滝の裏の家のクリフさんとよく似た小太りな男が中央の立派な椅子に腰を下ろした。


 男はバリトンボイスで

「ようこそ、我が船、魔の森の帝王へ、私の名はクリフ・ハンガード2123世でこの船長です。貴方の知っているエルフ族の二代目皇帝クリフ・ハンガードは、私の縁につながる者です。

 貴方方にはあの映像で見た蜘蛛の末裔、魔王達と闘ってもらいたいのです。   そのためには、このカプセルに入り蜘蛛の弱点や我々についての教養を深めてもらいたいのです。」

部屋の周りに何本も立っていたカプセルのうち三台が倒れてカプセルの蓋が開く。


 カプセルの中から死臭が漂っている。破滅の臭いがする。いやな予感がする。

 ユリアナとセーラの二人はカプセルに何の疑いもなく入ろうとする。

 俺は彼女達を制する。

 俺は怪しんで、クリフ・ハンガード2123世と名乗った人物を見ると、糸が切れた人形のように崩れて倒れる。

 すると部屋の周りに立っていた、他のカプセルが倒れて乗組員の死体と共に蜘蛛が出てくる、その数14体。

 蜘蛛の前脚があがる。映像で見たとおり、蜘蛛の前脚の先は小型の銃器のようになり俺達に向けられる。

 俺は銃口目がけて火魔法を放つ、銃器と同じ火薬により実体弾が発射する方式だ。銃器を持つ前脚が膨れ上がり爆発する。

 銃器を持つ前脚の中の銃弾が次々と誘爆を始める。


 それを見たユリアナとセーラの二人も火魔法を蜘蛛の持つ銃口に向けて火魔法を使う、何体もの蜘蛛が転げまわり、断末魔の痙攣を起こして倒れていく。

 蜘蛛達が天井に向かって逃げ出す。天井に大穴が開いている、その大穴に蜘蛛が逃げ込む。

 俺は大穴に向かって火魔法と雷神魔法を混ぜて放つ。

 2、3体の蜘蛛がバチバチと雷光を発し、火に包まれて落ちてきた。

 穴の縁に脚一本で1体の蜘蛛がバチバチと雷光を発してぶら下がっている。

 俺は飛び上がって蜘蛛の脚を守り刀で切る。

『ドサリ』

と蜘蛛が落ちてくる。

 落ちた蜘蛛の脚を全て切る。


 落ちた衝撃で目が覚めたのか、丸い頭部の複眼がグルグルと周る。

 短くなった脚を振り回している、脚の付いた腹部が開いていく。

 腹部に大きな頭と大きな黒い目を持つ赤ん坊のような生き物が俺達を見ている。

 俺は守り刀を納めて、両手にピッケルを持つと、身体強化と魔法の小手の力を借りて強引に蜘蛛の開いた腹部を更に広げる。

『バキ~ン』

という物の壊れる大きな音と共に蜘蛛の体が左右に引きちぎられた。


 蜘蛛の中の生き物の手は、4本2対の腕を持ち全身を銀色の服を着ている。大きな頭はどうやらヘルメットのようだ。

 天井から殺気を感じる。

 天井の穴から蜘蛛の脚の銃口が、同胞の蜘蛛の中の赤ん坊を狙っている。俺は蜘蛛の中の赤ん坊を抱えると天井の穴の中にピッケルを次々と投げつける。

 天井の穴から蜘蛛が落ちてきた。まだ、銃口を俺と蜘蛛の中の赤ん坊を狙っている。

 ユリアナとセーラの二人が火魔法を放つ、蜘蛛が燃え上がってのたうち回る。


 俺の腕の中の蜘蛛の中の赤ん坊のヘルメットが取れると、ヘルメット内に溜まっていた水があふれ出し、その中からしわくちゃな醜い顔をした化け物が現れる、その化け物は十字にひらいた口を開け俺の喉に食いつこうとする。

 その口から細長い舌のような器官が俺に向かって伸びる。

 やむなし、俺は蜘蛛の中の赤ん坊を上空に投げ上げ火魔法で火葬にする。

 蜘蛛の中の赤ん坊と話し合えればと思ったが無理だったか。


 俺は身体強化と風魔法を使って天井の穴の縁に取り付き穴の中の状況を確認する。念のため穴の中に火魔法を放ち、水魔法で消火して風魔法で換気しながら穴の中を前進する。何度か繰り返すと白い雪に覆われた樹木の天辺付近に出た。

 映像で見たウニ型宇宙船を小型をにした救命艇が扉を開いている。

 俺は救命艇の中に入る。

 左右の壁に腹部を開けて蜘蛛が下がっている。蜘蛛は宇宙服のようだ。

 そのまま進む、コントロールルームにはいる。室内が異様に暑い。小さなプールが円形状に20個並んでおり、その中には何も入っていなかった。


 俺は一度この船から出て、魔法の袋に収納する。20人乗りの小型とは言え棘があるので、直径100メートルを超える宇宙船が入るのかと思ったが。宇宙船がグニャリと曲がり魔法の袋に吸い込まれたのは不思議な光景だった。

 魔法の袋から

『救命艇:20名乗り、M24星雲の蜘蛛型生物用』

というメッセージを受けた。


 穴の中に入って戻り水魔法で雪を作り穴の蓋をする。

 穴の中を降りる際に木魔法で魔の森の帝王の木を再生していく。

 メインコントロールルームの天井に着く。

 どうやら、外部に出るさいの点検口だったようだ。

 点検口近くにあるパネル表示が俺が苦戦した精霊文字で書かれていた。俺は点検口を閉じてメインコントロールルームに飛び降りる。


 メインコントロールルーム内でユリアナとセーラの二人がメスや注射器をアームに付けた医療用と思しきロボット数体と闘っている。

 アチャ~!

 ユリアナとセーラの二人の文化程度では怪物としか思えないわな。

 俺はユリアナとセーラの二人に闘いを止めさせる。

 医療用ロボットはアームを振りながら、クリフ・ハンガード2123世と名乗った人物の倒れた場所に集まる。

 メスやアームについた手で衣服が剥ぎ取られれ、いくつもの光が瞬き、頭や胴体だけでなく腕や脚に医療用のアームが入っていく。

 医療が済むと衣服を持った円柱型のロボットが現れるとクリフ・ハンガード2123世の服を着替えさせる。

 その間に医療用ロボットは一列になり、壁に入っていく。

 しばらくすると医療用ロボットが付いたカプセルが何体も出てくる。

 一体はクリフ・ハンガードをカプセルの中に入れ、他の医療用ロボットは蜘蛛と共に出てきた乗組員の状態を確認している。


 メインコントロールルームのライトが点滅する。

 非常事態を告げるアラームが1度だけ鳴り

『非常事態、当移民船R-1のメインコンピューターは船長クリフ・ハンガード2123世、負傷指揮を執れないことを認め、次の世代の船長クリフ・ハンガード2124世を起こします。』

と天井から声がして、メインコントロールルームに立っていたカプセルのうちの一本のカプセルが点滅しながら倒れると、カプセルの蓋がゆっくりと開いていく。

 カプセルの中から一糸纏わぬエルフ族の俺達と同年代の美少女が立ち上がる。

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