第16話 領地へ同行者は王太子 

 俺の領地になった魔の森に許嫁になったユリアナとセーラの二人と行くという話を聞いて、王太子が魔の森を見たいので連れて行って欲しいとごねた。

 王太子は父王や叔父の宰相にも

「姉達と一緒に魔の森に行きたい。」

とお願いした、それで国王も宰相も許可を出すから王太子を、連れていってあげて欲しいと言い出した・・・いや命令されたのだ。


 俺が男爵になったのだからと正式に部下になりたいと、ベックさんの奥さんベルゼさんが、夫のベックさんとその子供の4歳と5歳の二人の兄妹を連れて来た。

 家族一同連れて来たということは完全に俺の配下になる事を意味する。

 ベルゼさんは俺の地位より高い子爵だが、俺が領地持ちで王女や公爵令嬢を嫁にしているので問題ないそうだ。


 セーラの義父の宰相が初級ダンジョンから中級ダンジョンに変化した事件の際に預かっている亜人、ウサギ族の女の子ルウも引き取って連れていけと言い出した。

 その他にもウコンさんの義弟のサコンさん、剣術道場の次男の棒術男のジロウさん、そして超イケメン男のヤシキさんも部下になって魔の森に連れて行って下さいとお願いされた。

 この人達は配下になると言っても、通常は3年間の仮契約で状況によっては完全に配下にする事も可能なのだ。


 俺は、どうしようかと逡巡していたら、王太子の護衛に息子を連れて行ってくれと近衛の団長さんが言い始めた・・・これも命令だ。

 そういえば近衛の団長さんの息子はウコンさんで俺の許嫁達の護衛についていた近衛の隊長さんで、俺が最初に居合を教えたのだ。

 俺に降嫁する事で二人の身分が剥奪され、自動的に解任されたのだ。それで、王太子付きの近衛の隊長さんに抜擢ばってきされたのだそうだ。


 さらには、女官長も女官頭が必要だからと娘のハラさんを連れて行ってくださいとお願いされた。

 彼女もウコンさんと同じで二人の女官付きが自動的に解任されたので王太子付きの女官頭に抜擢されたのだ。

 国王達との話し合いの結果、王太子が俺の領地の魔の森にいる期間はちょうど1年間と言う事になった。


 ついでに国王から男爵として女官見習いとして、女官長の推薦する女の子達8人と、近衛見習いとして、近衛の団長の推薦する男の子達8人を預けられた。

 女官長や近衛の団長の推薦した子は9歳から12歳位の貴族の次男、次女で、俺の配下として使って欲しいそうだ。

 ついでに冒険者としてダンジョン等に入れて鍛えて欲しいそうだ。将来的には冒険者予備校にも入れるほどの力を付けさせて欲しいそうだ。

 この女官見習いと近衛見習いは、国王からの預かり者で、能力を見るという理由もあって、サコンさん達とは違って5年間の仮契約になった。


 魔の森に行く人数については今のところ俺達3人を加えて総勢29名になった。

 修復途中の王城の外側、外観については俺達がいない間に職人たちが大量のレンガを焼いて造り上げる事になったらしい。

 魔の森に行くにあったって、王からは他国への贈答用の品として、王侯貴族や商人からも俺の作った日本刀が欲しいと大量の依頼があった。

 国王は、どうやら俺が湖畔の館で鍛冶仕事をしている事も薄々わかっていたようだ。俺は湖畔の館に戻ったら鍛冶師の仕事をする・・・国王のお願いと言う命令だからね。

  

 これ以上同行者を増やすわけにはいかないので、馬に乗れるものは馬で、その他の者は馬車や荷馬車に分乗して行くことになった。

 大半の持ち物は魔法の袋に入れてあるので、総勢29名の持ち物はほとんど持っていない。

 カンザク王城の王都からカナサキ村まで馬で3日の距離だから240キロほどである。


 最初の1日目の泊りは黒龍のダンジョンに行くときに造って魔法の袋に入れてあったバンガローの一棟で雑魚寝した。

 さすがに29名もの者が寝るには狭すぎた。あまりに不評なのでバンガローで泊まることを止めた。

 野宿が普通の世界なのに!

 それで翌日は、ステータス画面のダンジョン探知画面で初級ダンジョンを探してそこに総勢29名で入ることにした。


 近衛の隊長さんのウコンさんは武道の達人で火魔法をよく使った。

 義弟のサコンさんも同様だ。

 女官のハラさんは火魔法や水魔法が使え魔力量も多いようだ。

 亜人の女の子ルウは明り魔法を使う。ウサギ族であることから身が軽く、耳がよく聞こえる。俺が身体強化して聴力をあげた時に匹敵するほどだ。

 それで、彷徨している魔獣の足音を聞き分ける。ダンジョン内の探索画面では、ダンジョン内の松明の明かり内でないと画面が表示されなのでとても便利だ。

 皇太子はユリアナとセーラの二人の弟だけあって、ネズミが嫌いだが、勤勉で努力家だ!

 ベックさんとヤシキさん、ジロウさんはベルゼさんや子供達、女官見習いや近衛見習いを守って闘っているが・・・大変そうだ。


 ダンジョン内の部屋の主のいる部屋では、全員が魔力切れを起こしてから寝てみる事にした。

 俺とユリアナとセーラの三人はステータス画面で魔力切れを起こすと魔力量が1あがることを知っていたからだ。

 王太子には魔力切れ起こすまで魔法を使うと魔力量が1あがると以前説明したがあがったように見えない?他の26人も同様だ!

 初級ダンジョン内のダンジョン主のいる部屋も含めて残り5部屋やってみたがあがらないようだ・・・魔力切れからの魔力酔いだけがひどそうだ。


 俺とユリアナとセーラの三人は気が付いた。

 ステータス画面を持っていない他の26人はダンジョンを攻略しても、レベルもスキルも生命力や魔力量も上げる事が出来ないようだ?・・・別の要素もあるかもしれない例えば年齢?。

 他には、俺達3人にも初級ダンジョン攻略の踏破報酬も付かなかった?どうもステータス画面を持っていない人と攻略しても踏破報酬が付かないようだ。

 今後は、ベックさんなどが隊長になって俺達以外で、初級ダンジョンを攻略して貰おう。


 俺達は馬に揺られてカナサキ村についた。

 すぐにカナサキ村の冒険者ギルドに立ち寄り、冒険者カードを持たないベックさんの奥さんベルゼ子爵夫人や亜人のルウと女官見習いの女の子達と近衛見習いの男の子達の中で10歳以上の子供達に冒険者の登録をさせて、冒険者カードを発行してもらった。

 カナサキ村で一泊することにした。

 これから先は魔の森であり、魔の森に入る最後の準備と冒険者ギルドに併設されている大きな宿があるからだ。


 冒険者ギルドの支部長に魔の森が開拓、開墾されない理由を聞いてみると

「魔の森はとても広い、それで伐採や開墾をしようとする者が後を絶たない。ただその者達は、あまり長続きをしないのだ。

 魔の森の中で、広範囲に伐採、開墾すると魔獣や魔の木が現れ開墾した田や畑を壊し、時には開墾している農民を殺してしまうからだ。

 その範囲や規模は、その場所や場合によるらしい。本当のところはよく分からん、伐採開墾していた連中が今では全くいなくなったのだ。

 理由かい、魔の森の中には魔獣植物が生えている。その中には動き回れる食肉植物がいる、それが最近大量発生してしまい、危なくて近寄れないのが真実だ。」

と教えてもらった。

 湖畔の館はかなり大きく造ったが、魔の森の中に入って、木材等の伐採はあまり行っていないから大丈夫だったのかな?

 まずは、無理をしないことだ。ついでにクリフさんにも聞いてみよう。


 その夜、俺とユリアナとセーラの三人で転移で滝の裏の家に行く、クリフさんに

「男爵に叙爵されて、領地として『魔の森』を与えられた。俺が魔の森から出てきていたのがカナサキ村の冒険者ギルドの支部長中にばれていたようだ。そこから国王に連絡が行っていたようだ。

 それと、正式にユリアナ王女とセーラ公爵令嬢の二人と婚約をした。」

と伝えた。

 クリフさんは二人と婚約したと聞いて喜んでくれた。

 領地として魔の森をもらった事については俺と同意見で、これで公に魔の森近辺が、俺の統治下に入るのだから良しとしようするものだ。


 その後クリフさんにダンジョンであったことを告げると、クリフさんはステータス画面と魔力量について話し始めた。

「ステータス画面は失われた技術、ロストテクノロジーで、現在では世界に10個しか存在しない。

 持ち主から他人に譲渡も出来ず、持ち主が亡くなれば元のプラスチックの板にもどるそうだ。

 また、ステータス画面は人を選び、選ばれた人しかステータス画面の力を習得できないのだ。

 この滝の裏の家の宝物庫に三枚ものステータス画面があり、お前達三人が、そのステータス画面に選ばれたことは奇跡に近いことなのだ。

 魔力切れを起こして魔力量が上がるのは本当に魔力量が無くなるまで頑張らないとだめで、ステータス画面を持っていない普通の人は体の中に安全装置みたいなものが働いて魔力量が空になる前に昏倒してしまうようだ。

 とんでもなく強固な意志力を持っている者であるか、何億人に一人、勇者とか魔王とか呼ばれている特異な体質を持つ者だけが可能なのだ。

 また、滝の裏の家の宝物庫にはロストテクノロジーが詰まっており、俺とユリアナとセーラの三人以外は安易に足を踏み入れさせないようにして欲しい。

 俺とユリアナとセーラの三人の子供ならば許すけどな。」

等と言うのでユリアナとセーラの二人が茹でタコのように赤くなった。


 滝の裏の家に今回、部下になりたいとか、姉と一緒にいたいとついて来た王太子等の同行者が、滝の裏の家にある宝物庫のロストテクノロジーに近づかさないようにするためにはどうすればいいのか。

 念のために、滝の後ろに人一人がやっと通れるような岩場の道を破壊して、滝の裏の家の通路も崩した。

 これで転移でのみでしか行き来することが出来ないようにしたが、その後は今回の同行者の様子を見て決める事にした。


 俺が魔の森を支配下に治め、発展のために魔の森の中に自生する魔の植物類、魔獣植物についてもクリフさんに聞いてみた。

「魔の森の中の魔獣植物には動き回れる魔獣植物と、そうでない魔獣植物に分類される。

 魔獣植物は伐採や開墾で誤って人の手による攻撃をうけた場合、動き回れる魔獣植物や魔獣が集まって来て、攻撃を受けた場所を中心に直径約1キロの範囲内にある開墾した田や畑は勿論の事、家屋等の人工物も破壊してしまうのだ。

 ただ、牛馬が魔獣植物を食べてもそのようなことが起きないようだ。

 だから、動かない魔獣植物は牛馬のいる所には集まらない。

 ただ、魔獣植物の中でも食肉植物は気を付けなければならない、動き回れる魔獣植物であり、牛馬をも倒す毒を持つものや、自分の葉を刃のように振り回して牛馬を倒すと群がり集まって食べつくすのだ。

 だからと言って見かけた食肉植物を攻撃すると同様なことが起きてしまう。

 魔獣植物は魔核を持っている。

 基本的には動けない魔獣植物は根に魔核を持ち、動ける魔獣植物は体内に持っているいるようだ。」

というものであった。


 俺達は滝の裏の家からカナサキ村の宿に転移で戻る。

 カナサキ村から湖畔の館までは残り90キロ馬で一日強の距離だ。

 俺はついて来た王太子や部下達に、しばらくの間カナサキ村の宿に泊まってもらうことにした。

 理由は今までほとんどの場合、転移でしか湖畔の館に行っていない。

 湖畔の館に大人数で行く間に魔の森に住む魔獣植物を痛めると魔獣や移動できる魔獣植物に襲われ全滅するかもしれない。

 転移が出来る我々が安全のために先行して湖畔の館まで向かうことにすると説明した。

 その間はカナサキ村の冒険者ギルドの支部長さんにダンジョンを教えてもらい、ベックさん達ベテランに頼んで、冒険者の登録をさせたベルゼ子爵夫人、亜人のルウ、女官見習いと近衛見習いの10歳以上の子供達を新人研修という名目で初級ダンジョンを攻略してもらうことにした。

 初級ダンジョン攻略の間、あとに残された王太子をはじめとする子供達は、ウコンさんと、冒険者ギルドの受付の小母さんのキャロルと女官のハルさんが面倒を見てくれることになった。


 俺が湖畔の館から出て冒険者予備校に向かったのは5年前、その時も馬でカナサキ村まで来たのだ。馬に乗っていれば安全だとは思う。

 カナサキ村から馬で2時間ほどで田園地帯が終わる。

 そこは小高い山が魔の森を守るように隆起して連なっているのだ。その山の一部が流れ出る川の水で渓谷のようになっているここが魔の森の入り口だ。

 ここに関所を造って人の出入りを見張ればちょうどよいだろう。

 馬車がやっと通れるほどしかない渓谷を抜けると、そこは一見すると緑の楽園のように見えるが魔の森と呼ばれる場所、俺の領地なのだ。

 俺はステータス画面を見ながら一直線で湖畔の館を目指した。


 俺の後ろをユリアナとセーラの二人が続く。

 進んでいる間に根にぼんやりと緑色の光を放つ植物が多数見えてきた。これが魔獣植物と呼ばれるものらしい。

 草花にも根に緑色の光を放つ植物が群生していたので、それらを避けて大きく迂回する。

 この頃にはユリアナとセーラの二人にも魔獣植物の緑色に光る魔核が見えるようになったようだ。


 魔獣植物を避けながら湖畔の館に着くのに10時間以上かかった。

 カナサキ村に戻る時に、どこか安全な宿泊地点を探していかなければいけない。

 湖畔の館に着いたが、緊張で馬達も疲れ切っていたので、馬達は馬用の温泉プールに入れて俺達は露天風呂に入ってすぐ休んだ。

 宿泊地点には以前使ったことのあるバンガローを置くことにした。

 それで今日は狭くて不評だったバンガローを大きくする事にする。

 10人が寝れる大きな部屋が二部屋、主寝室と控えの部屋が付いている部屋を二部屋、そして二人部屋を三室増設したのだ。

 この作業が五日ほどかかった。大きくなったバンガローを魔法の袋に入れて出発だ。付近にいた野生の馬を呼び集める。29名全員が馬に乗れるように数をそろえた。

 カナサキ村へ向かう、流石に魔の森で、五日間の間に俺達が馬三頭で歩いてきた後が無くなっていた。

 ただ行きと違い帰りは三人とも魔獣植物を見ることが出来るので、行程が進んだ。


 全行程の5時間ほどのところ、ほぼ中間地点で安全な小川が流れる広場を見つけたので、そこにバンガローを設置した。

 小川は水深が浅く凶暴な水中生物の魔獣はいないようだ。

 この小川の水を使って風呂水やトイレの水にする。汚水は小川に住んでいる小さな水スライムが処理してくれるが、直接流すわけにもいかないので汚水用の水溜を少し離れた所に造った。

 そのバンガローを翌日午前10時頃に出発しても、午後3時頃にはカナサキ村に到着した。

 俺達を待っていたベックさん達は少しぐったりとしていたが、翌日から二日間をかけて湖畔の館に向かう事になった。

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