第14話 久しぶりの我が家

 湖畔の館からカナサキ村まで90キロ、カナサキ村からカンザク王城馬で3日で240キロ、合計で310キロある。

 310キロだから魔力量が31万あれば俺一人であれば転移する事ができる。ユリアナとセーラの二人を抱えてた場合その二倍の魔力量62万必要だ。

 今の俺の魔力量があれば、カンザク王城から湖畔の館まで二人を抱えて楽勝で転移することが出来る。

 ただそれでは面白くない、俺とユリアナとセーラの三人で、カンザク王城から湖畔の館までの圏内にある、目ぼしいダンジョンの攻略に行くことにした。


 最近では中級ダンジョンどころか黒龍様の上級ダンジョンも三人で攻略しているので、初級ダンジョン攻略などそれ程手間がかからない。

 この辺は初級ダンジョンばかりで、あまり中級ダンジョンがない。

 初級ダンジョンを攻略しても、たいした宝物もなければ生命力も魔力量もあがらない。

 中級ダンジョンだけ選んで攻略することにした。

 中級ダンジョンの攻略は1日で出来るようなものではないが、三人で倒しまくるので割と簡単に攻略できる。

 宝物も黒龍様の所まで行く間の中級ダンジョンの宝物に比べるとそれほど面白いものがなかった。

 宝物はどちらかと言うと、金塊や金の鎧やティアラ等の金ぴかなものが多い。中級ダンジョンを攻略すると一財産になるほどのギリが溜まった。


 クリフさんが湖畔の館の防犯用にと滝の裏の家の宝物庫の中から、クリフさんのホログラフと同じ等身大の銅像を渡された。

 クリフさんの銅像は、湖畔の館の応接間に設置された。

 湖畔の館は冬季はとても寒い、ユリアナとセーラの二人は寒いからと滝の裏の家に籠って外に出てこなかった。その間にクリフさんから転移魔法のレクチャーを受けていたようだ。

 湖畔の館を暖かくするためにも温泉が出ないかと土魔法や水魔法を使って探す。

 以前と違い魔力量が凄く増えているので、かなり土中深くまで調べることができたが、家の下には温泉の源泉や温泉も流れていないようだ。

 残念に思いながら体力をつける為、以前ダンジョンで見つけた重いだけの鎧や小手、脚絆を着けて湖畔の家の周りの雪かきを魔法を使わないで行った。

 雪かきの手を止めて、ふと山の方を見ると2キロ程さきに細い湯煙のようなものが見えた。


 風魔法でそこまで空を飛んで行き上空から見る。細い湯煙のようなものがあがっているところの雪が解け、小さな池のようになっている。

 そこに降りて土魔法で地中を探る。

 温泉の源泉だ!

 湖畔の館へは大きな岩で温泉の流れが阻害されているようだ。岩を持ち上げて湖畔の家にまで温泉のお湯を流すか?

 俺一人で岩を持ち上げることが出来るが、俺一人でやるよりはと、ユリアナとセーラの二人を呼んでくる。二人ともブウブウ言いながらも毛皮の防寒着を何枚も着て手伝ってくれた。

 大きな岩をどけて湖畔の家に向けて温泉のお湯の流れる溝を作って流す。


 湖畔の家に露天風呂と屋内に風呂やサウナを造った。

 二人とも雪の中だと流石に露天風呂は入らなかったが、屋内に作った風呂やサウナに入った。

 俺が屋内の風呂にはいっているときに二人は俺が考案した水着?ビキニを着て乱入してきた。俺もこんなことがあろうかと、ボクサータイプの水着を履いていたので一緒に入った。

 今度は俺がユリアナの赤いビキニとセーラの白いビキニをジロジロ見てやったら二人が真っ赤な顔をして出て行った。

 水着で思い出した温水プールを造ろう。

 露天風呂の隣に100メートル×50メートルの温水プールを造る。俺がそのプールで泳いでいると、寒がりな二人が寒いのにプールにはいってきた。

 この世界では風呂もそうだが、川や湖で泳ぐ文化もない。川や湖に入ると魔物の水生生物に襲われるからだ。

 それで二人ともプールに入ることがとても楽しそうだ。二人ともまだ泳ぐことは出来ない。俺は木で作ったビート板を二人に渡して、俺がビート板キックをやって見せる。二人は、これにも喜んで挑戦している。

 浮き輪やビーチボールなんかあったらとても喜ぶだろうな。

 しかし、プールや露天風呂から出ると寒い!温室みたいなガラス張りにするか?

それでは室内の風呂と同じだが。

 とにかく寒いので屋内の風呂にはいる。


 湖畔の館の室内を温めるため、温泉水を床暖房用のパイプに流す。

 最初は温泉のお湯を直接パイプに流したところ、湯の花でパイプが詰まってすぐ流れなくなった。

 それで温泉のお湯でパイプの中の水を温めてから、湖畔の館の床暖房どころか壁にもパイプを張り巡らしてお湯を流した。

 湖畔の館の中は、暖炉の火によるオンドル風な暖房と温水の床暖でかなり快適な暖かさになった。

 二人がプール遊びで疲れたのか、暖炉の前で毛皮に包まって抱き合ったまま寝ていた。二人の頭に枕を持って来て、毛布や毛皮をかけてやる。


 矢張り寒い!温室造りだ!

 クリフさんにビニールについて聞くが、知らないようだ。

 次にガラスについては、土魔法で砂の中から透明なガラスの素を取り出して固めるというものだった。

 早速つくってみる。何とかできた。

 プールを二重ガラスにして囲めるほどの大きいガラスを何枚も造ったところで魔力切れを起こしたので寝ることにした。俺の体の上に毛皮がかけてあり、心配そうに二人が俺を覗き込んで見ていた。

 二人に二重の板ガラスを見せて、それをプールの周りを囲むと説明する。

 雪が深い場所なので雪囲いの内側に雪でも潰れたり、ガラスが割れないように二重の板ガラスの温室を造る。それで今後は暖かくプールに入って遊べた。


 遊んでばかりいたわけではない、王侯貴族用の日本刀の鍛造や当然朝夕の体の鍛錬は勿論のこと魔力上げにもいそしんだ。

 ユリアナとセーラの二人は鍔や目貫等の刀装具に彫金を施していた、二人は彫金師のスキルを身につけたようだ。

 俺はユリアナとセーラの二人より早く15歳になった。

 15歳、中学校卒業、高校入学の歳だ!この世界では15歳が冒険者予備校の卒業の歳だ!入校してから、今春まで全く行っていなかった冒険者予備校を卒業することになる。


 俺は15歳になったことから、滝の裏の家にあるトレーニング施設で、前世のスポーツジムのような高重量を扱えるトレーニングマシンが並んでいる、この高重量のトレーニングマシンを使うことにする。

 身体に魔法を纏って強化魔法を使っても、白銀の小手や膝当てを付けて腕力や脚力、素早さを倍に上げても元の体力が弱ければたいした効果は得られない。

 トレーニングマシンによって基礎体力をあげる。湖畔の館にもトレーニングマシンを造った。


無駄話だが、ボディビルと言うと、無駄な筋肉等と言う人が大勢いるが、ストイックに200キロ、300キロの高重量をスクワットマシンでスクワットをする映像を見ると感動すら覚える。閑話休題。


 母親のエルフ族の血筋からするとアポロンタイプになると思ったが、父親の白虎の血筋かヘラクレスタイプで、例えばボディビルダーで1978年に「世界で最も筋肉が発達した男」としてギネスブックにも載った映画俳優のアー〇ルド・シュ〇ルツェ〇ッガーのような体形になってきた。

 最近では身長も伸び始めたのだ。ユリアナとセーラの二人とは今までは身長が同じ位か低いぐらいだったのが頭一つ分程高くなってきた。

 最近は居合だけでなく、二人には剣道も始めさせた。ユリアナには赤胴、セーラには白胴を着けさせた。ついつい前世の警察官特練時代のつもりでやりすぎて二人に凄い目で睨まれる。それでも頑張って剣道を続ける二人には頭が下がる。


 ユリアナとセーラの二人の両親用と王侯貴族用に何振りかの太刀や小太刀を打ったところで、雪解けが始まってきた。

 山々の雪が解け始めて、木々や草花が青々と芽吹き始めた。

 今度も一度で転移でいかないで、中級ダンジョンを探して攻略しながらカンザク王国に戻ることにした。中級ダンジョンは攻略済みが多くて10年後でなければ再攻略できないようだ。

 今回クリフさんのレクチャーで、ユリアナとセーラの二人も転移魔法を使えるようになった。それでも二人は使えないふりをして俺に抱き付いていた。

 俺も美少女二人に抱き付かれて鼻の下を長くして転移していた。


 旅の終わり間近のダンジョンで二人は大ネズミの大群に襲われて、慌てて転移して俺にばれた。転移については、ただ三人で手を繋ぐだけでは俺より魔力量の少ないユリアナとセーラの二人の魔力量の距離しか転移できないが、お互いに抱きあって転移すると俺の1,5倍の距離が転移できることがわかった。

 他の魔法でもお互いに抱き合うと威力が1,5倍にもなるので、魔法で魔物を倒すのが飛躍的に楽になったのだ。

 ユリアナとセーラの二人が抱き合っても、その効果は無かった。


 カンザク王国の王城に着いたので、ユリアナとセーラの二人の両親用にと土産に用意して打った太刀と小太刀を渡した。

 頼まれた王侯貴族にも太刀と小太刀を渡した。鍔や目貫等の刀装具はユリアナとセーラの二人が造ったものだといったら王侯貴族が

「家宝にします。」

と言って有り難がられた。


 王城の復旧作業を再開始する。

 奴によってつくられた大穴の状況をみる。雪の重みや雪解け水で大穴の地盤が少し下がり水が内部にだいぶ溜まっているようだ。

 雪解け水を大穴から水魔法で取り出す。王城の地盤になるところだけに、しっかりと土を入れて地盤強化を行った。

 王城は、城としての防御力よりも、ここに住まう王族の居住性は勿論の事、中央集権国家の中心、つまり警察権をあわせ持つ軍制の中心であり、司法行政立法府としての象徴である豪壮華麗な建築を目指すことにした。

 王城の復旧というよりも完全に新たなものを建てることになった。かなり大きな石造りの城のようなカナダのバンフスキー場にあるフ〇アモ〇ト・バンフ・スプ〇ング〇ホテルのようにするつもりだ。


 ユリアナとセーラの二人だけでなく、二人の両親である国王と宰相、次期国王の王太子、近衛の団長を交えて当然相談した。

 国王と宰相、王太子、近衛の団長は軍制については理解できたが、司法、行政、立法の三権分立の考えについては全く理解できなかったようだ。

 それでも中央集権国家で三権を集中している司法行政立法府としての豪壮華麗な王城を建設することには反対しなかった。


 次期国王の王太子は7歳でユウジという名前であった。

 ユウジはユリアナとセーラの姉二人に似て凄い美男子で聡明な男の子だ。姉二人に今は時々魔法を学んでいる。

 ちなみにユリアナとセーラの上の姉は遠方の国の王妃として嫁いだそうだ。

 外見は、フ〇アモ〇ト・バンフ・スプ〇ング〇ホテルのよな石のレンガを積み上げた石造りの建物だが、外壁は白い漆喰を塗るつもりだ。日本の誇る名城、姫路城別名白鷺城をイメージして塗る。和洋折衷のお城になる予定だ!

 俺や姫様二人だけに任せるわけにはいかず、国王や宰相が何人もの石工や壁屋、瓦屋を雇い入れ復旧作業を手伝ってくれた。


 石のレンガが足りなくなった。カンザク王城の田園地帯の真ん中にある岩山を崩して復旧の資材にしていたが、さしもの大岩も姿を消した。田園地帯を管理する役人には感謝されたが、建築の重要な資材が無くなった。

 レンガを焼くことにする。

 石で今まで家を建てていたものが、レンガを焼くなど?粘土と砂を混ぜて泥んこの塊が窯で焼くとレンガが出来て職人が驚いている。

 新たにレンガ職人が産まれた瞬間だ。レンガを焼く窯がいくつも出来る。


 王城も冬季は当然寒い、暖房は暖炉と火鉢だ。

 暖炉の火で暖まった空気をオンドル風に床に送って出来るだけ暖かくする。特に2階部分は王族の居住で暖かくする。

 前世日本人としては風呂は外せない。残念ながら近くには源泉が全くなかった。それならばと、屋根の上に太陽熱温水器を取り付けて温水を流すことにしてみた。

 頭を捻りながら、太陽熱温水器の構造を思い出して作ってみる。ユリアナとセーラの二人だけでなく王太子もついて来てみている。


 土魔法で土の成分を分類していく。ユリアナとセーラの二人も土魔法で魔力量が相当高くなったのでかなり分類採取することができる。

 王太子も負けじと分類しようとするが出来ないようだ。まじめで負けず嫌いな王太子が魔力切れを起こして昏倒した。

 姉二人は魔力切れはよく経験してきたことだが、お付きの女官や近衛が王太子が昏倒したことに驚いてバタバタしている。

 姉二人が父王と宰相に事情を聴かれて怒られていた。俺も凄い目で睨まれた。

 普通なら魔力切れを起こすと魔力量があがって喜ばれるはずなのに。

 変だ王太子はステータス画面を持っていないのではっきりとは言えないが魔力切れを起こした王太子の魔力量があがっていないのではないか?

 そんなことをしている間に冒険者予備校の卒業式を迎える事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る