第11話 黒龍のダンジョンと赤龍

 雪が解けるまでの間に、ユリアナとセーラの二人に守り刀を造って与える事にした。

 ユリアナとセーラの二人の守護神にあった魔法を付与した守り刀を造りたかったのだ。それに以前、二人に贈った銀製の笄についても魔法を付与してあげたかったのだ。

 俺は付与魔法について知っているクリフさんのいる滝の裏の家に転移で向かった。クリフさんからは付与魔法習得には時間がかかると告げられたことから、ならばと二人を滝の裏の家に連れて行く事になった。

 クリフさんも連れてくるのを望んでいたのだ。


 クリフさんは滝の裏の家の中ならばホログラムのような映像で現れることが出来て、ユリアナとセーラの二人は滝の裏の家の宝物庫内にあったステータス画面をクリフさんからもらった。

 ステータス画面をもらって作動させた時に、二人は物凄いカルチャーショックを受けた。それは当然な事だ、石器時代の人類が現世のパソコンやテレビ画像のある世界に放り込まれたようなものだからだ。

 クリフさんは二人にステータス画面の使用法などを懇切丁寧に説明する。俺の時はしなかったのに⁉

 それでもなお、しばらくの間、二人は理解が追い付かなかったようだ。

 俺は、前世で仕事のためパソコンで報告書を作成したりしており、それに子供達がパソコンや携帯電話のゲーム等で遊んでいるのを見ているので、ステータス画面については、あまりカルチャーショックを受けなかった。

 ステータス画面のユリアナとセーラの二人の職業欄は王女と公爵令嬢との記載以外は同じで、ユリアナの場合は


職業 カンザク王国王女、ダンジョン探索者、冒険者予備校生・・・

年齢 13歳

レベル 1(1~無限まで習得可能)

生命力 15/15(分母は無限まで習得可能)

魔力 60/60(分母は無限まで習得可能)


であった。二人は俺がいつも何を見ていたのか分かったようだ。

 俺のステータス画面の表示は生命力と魔力の数字の桁が億単位まで増えてしまった。それに何やら色々と項目が増えすぎて凄いことになっている。


 クリフさんは二人に色々と教えていて、俺には付与魔法の書物を一冊くれただけだった。待遇が違いすぎる。

 ただ、ステータス画面でテレビ電話のように相互に連絡する事が出来るようだ。

クリフさんともステータス画面で連絡を取ることが出来る。

 それで、俺は二人を滝の裏の家に残して、湖畔の館の鍛冶小屋で書物で覚えた付与魔法を色々と試しに造ってみる事にした。解らないところはクリフさんとステータス画面でやり取りしながら造っているうちに、かなり良い状態で付与魔法を付ける事が出来るようになったので二人の守り刀を打ち始めた。


 ユリアナは火の女神様が守護神なので守り刀には火魔法を付与した。鍔や目貫などの刀装具も銀製の笄と同じ火の女神をモチーフにしてそろえた。

 セーラの方が水の女神様が守護神なので水魔法を付与し、刀装具は銀製の笄と同じ水の女神をモチーフにしてそろえたのだ。

 二人に守り刀を与えて、外で二人がそれぞれの付与魔法を使って見る事にした。 ユリアナが守り刀を通して火魔法を使うと今までの3倍の威力で付近一帯の雪があっと言う間に溶けてしまった。

 セーラが守り刀を通して水魔法を使ったら豪雨が降り注ぎ雪解けと魔法の水で大きなプールが出来上がり三人とも水浸しになってしまった。

 俺は慌てて転移で湖畔の館の温泉に転移した。

 三人で温泉に浸かって大笑いした。

 笄についても付与魔法を付けてみたが2倍程の威力しか出なかった。


 春になり雪が解けて道が歩きやすくなったので、俺は懸念事項であるユリアナとセーラの二人を連れてカンザク王国の守り龍で黒龍山に住んでいる黒龍様に会いに行くことにした。

 二人は革のドレスのような鎧を着て額には革の汗止めを巻き鉄の笄を挿していた。腰には俺の造った守り刀を差した。

 雪解けまでまだ時間がある間に二人の鉄の笄にも付与魔法を付けてある。これも約2倍程の威力で、これでも世間に出せば国宝級の品だという。それに二人にとって俺からの初めての贈り物なので粗末にしたくないといってお願いされたのだ。

 その他二人にはステータス画面に反応する魔石のペンダントを渡してある。不測の事態、つまり誘拐されたり、ダンジョン内で迷子になった時など、俺がすぐ見つけて対応することができるようにするためだ。


 三人で馬に乗って黒龍山に向かうことにした。俺が近くにいた馬の群れに近づくと、馬体の良い馬が四頭、連れていってくれというように寄って来た。

 それで、三頭に馬具を着け、一頭は替え馬にして黒龍山に向かう事にした。

 旅が始まるとすぐに、二人が汗臭くなった!風呂に入りたいと我が儘を言うので、檜の風呂を造って皆で入った。

 その後も、夜はハンモックではよく寝れない、フカフカで柔らかいベットで寝たいと言うので、羽毛や羊毛等で作った大きなベットを造った。

 しばらくすると雨に祟られた、二人が雨が降った中での野宿は嫌だというので、バンガローも造った。

 それらは魔法の袋の中に入れて持ち歩いた。魔法の袋は本当に便利だ。

 土魔法で地面を平らにしてバンガローを出し入れする。旅がとても楽になったのだ。


 二人のレベルや生命力、魔力量、スキルをあげるため、黒龍山に行くまでの途中にある初級ダンジョンや中級ダンジョンに出来るだけ三人で入ることにする。

 黒龍山に近づけば近づくほど中級ダンジョンが増えてきて、初級ダンジョンの数が減って来た。中級ダンジョンも三人で攻略すると割と容易に攻略することが出来て、攻略すればするほど攻略が容易になった。それに攻略報酬等でレベルもそうだが生命力や魔力量それにスキルポイントがものすごい量で溜まっていった。

 俺も、とんでもなく魔力量が増えたことから、ステータス画面の地図表示がこの星の南半球全てをカバーするようになった。


 それで今までは表示されていなかった、黒龍山の黒龍のダンジョンが赤色表示の上級ダンジョンで表示された。 

 黒龍のダンジョンに近づく間にあった中級ダンジョンを何か所も攻略した。

 中級ダンジョンの宝箱からは、変わったものでは身代わりの石や一日だけれど生命を延ばすことが出来る生命の石が何個か手に入れることが出来た。

 それで黒龍のダンジョンに着くのには1年ほどかかった。

 三人とも14歳になった。この1年間でユリアナとセーラの二人は魔力量が増えて剣技も向上したことから、ヤマト帝国の豚皇太子の事についてはあまり気にならなくなったようだ。

 黒龍のダンジョンは流石に上級ダンジョンだけあって、三人共同で戦ってもなかなか倒せないようなドラゴンや小型の龍が部屋の主の場合が多かった。

 ただ、その部屋にあった宝箱にはユリアナとセーラの二人に合った華麗な防具や道具類が沢山あった。

 例えば、ユリアナには炎の魔法が付与された真赤な防具とティアラ、セーラには水の魔法が付与された真青な防具とティアラ等であった。

 少しエッチなスケスケな衣装は恥ずかしがって着なかった。一緒に風呂に入るまでの間柄になったのに。


 黒龍のダンジョンの最深部にある黒龍様の部屋の前には、このダンジョンに入ってから2週間もかかってやっと着いた。

 黒龍様の部屋は、黒龍様の姿が掘られた黒々とした大きな両開扉だったので一目でわかった。

 俺達がその前に立つと大きな扉が自動的に内側に開いていった。

 俺達がその部屋に足を踏み入れる。黒龍があしらわれた黒い何本もの柱に支えられた、広い大きな格天井のある部屋の中央の椅子に黒龍様が座っていた。

 黒龍様の様子がおかしい?

 黒龍様は以前見た事のある人形の姿になり、部屋の中央の龍の模様が掘られた豪華な椅子に傷を負ったのか、ぐったりとした様子でひじ掛けに持たれるようにして座っていた。


 黒龍様の横には黒龍様とよく似た雰囲気で真っ赤なドレスを身に纏った女性が立っていた。その女性は

『黒龍の証を持つ者か?妾は赤龍なるぞ。黒龍の姉じゃ。

 黒龍は先般、カンザク王国の王に頼まれてヤマト帝国の使者に会ったのじゃが、ヤマト帝国の守護龍の白竜が使者の中に紛れておったのじゃ。

 まさか白龍が紛れておるとは思わず、油断から手痛い傷を負ったのじゃ。黒龍の仇を討ってはもらえぬか。』

『その礼として妾からは、うむ・・・そこなおなご、妾の力を授けよう。』

と王女のユリアナを手招きする。

 ユリアナは赤龍の手招きに誘われるように近づくと、赤龍が腕の鱗を剥がす、その鱗が輝き赤龍とよく似た若い女の子の姿に変身する。その女の子が

『お母さま、何か御用でしょうか?』

と尋ねる。赤龍が

『妾の分身よ、その者に力を与えてはくれぬか?』

と告げると、女の子が鱗に戻ると、ユリアナの額に向かって飛んで行って、額に張り付く。

 ユリアナに張り付いた鱗が光り輝きを発し始める。

 鱗からの光が広がりながらユリアナの体を包んでいく、そして、その鱗が輝きながらユリアナの額の中に沈んでいく、ユリアナを包んだ光も体に吸い込まれるように消えていく。

 ユリアナがくたりと崩れるように横になり死んだように眠っている。


 赤龍が俺に向かって

『この者を起こすのには、ここにいる黒龍を倒すのじゃ。

 黒龍は外での白龍との戦いで傷を負い、今にも本当に死ぬかもしれぬのじゃ。

 外での傷で死ねばダンジョン内に戻っていても蘇ることは出来ないのじゃ。特に同族の龍種に傷付けられればダンジョンに戻っても治らないのだ。

 助ける方法はお主が黒龍を倒すのじゃ。

 ダンジョン内で竜種以外の者に殺されれば一定期間で蘇るのじゃ。手を貸してもらえぬか。』

と頼まれた。黒龍が弱弱しい声で

『妾からも頼む、このままでは妾は消えてしまう頼めぬか!』

と訴える。

 俺は愛刀を抜く、黒龍が

『ドラゴンキラーで倒してくれ、それで切られると蘇るまで魂が痺れて震える。』

俺は魔法の袋からドラゴンキラーを出して持ち替えると、黒龍の首を切る。黒龍が泡となって消えていく。黒龍の消えた後に白銀の鎧が置いてあった。赤龍が白銀の鎧を俺に渡す。

『妾は赤龍山に向かう、縁があれば妾のダンジョンにも来るかよいぞ。』

人形から龍の姿になると赤龍は空間をゆがめ飛んで行った。


 ダンジョン内には宝箱が残った。宝箱には嫌な感じがする。

「この宝箱は開けないでおこう。」

とセーラに言う、セーラは不思議な顔をするが、トラップがあると言ってあきらめさせる。

 一晩その部屋で休むとユリアナが目を覚ました。

 俺がユリアナを見ると、守護神に赤龍が加わっていた。赤龍の上に立つ火の女神様が見えた。すると不思議なことに、守り刀の刀装具や銀製の笄のモチーフが俺の見た赤龍の上に乗る火の女神様に変わっていたのだ。

 ユリアナが目覚めて、ユリアナのステータス画面を見ると守護神の加護として「獄炎の輝き」という魔法が使えるようになっていた。


 ユリアナが目覚めたので三人で黒龍様の部屋の外に出ると、ダンジョンの外どころかカンザク王国の王城の謁見室に転移してしまったのだ。

 その時、上級ダンジョン踏破報酬と初上級ダンジョン踏破報酬として生命力と魔力量が各々1万づつ計2万増えていたのだ。

 ユリアナとセーラの二人も同様に増加していた。

 王城の謁見室にはカンザク王国の王とヤマト帝国の皇太子の使節団と対峙しているところだった。ヤマト帝国の使節団はユリアナとセーラが出奔した後一度戻ったが、再度来訪してきたたらしい。

 いきなり姿を現した俺達を見て双方がギョッとして驚いていたのだった。

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