第9話 黒龍の乱入と冒険者予備校の本選
冒険者予備校の予選トーナメントが終わり、優勝者20名と準優勝者20名による本選のリーグ戦が始まる。
俺を除く剣士の部のトーナメントの優勝者19名全員が本選を辞退した。
辞退した理由は
「私は貴族であるから、学費や寮費等支払えるうえに、準優勝者にチャンスを広げてあげる。」
と言うものだ。
魔法の部門では、俺と同い年だった炎のように紅いドレス姿のカンザク王家の第2王女ユリアナと純白のドレスを
彼女達以外の優勝者達は剣士の部同様に貴族を理由に本選を辞退した。
本選開始前に、剣士の部門の優勝者20名と魔法の部門の優勝者20名に入校許可書と記念のメダルの授与式があり。少し休憩のあと本選のくじを引きが始まる。
本選のくじの発表が終わると同時に、一天にわかにかき曇り、雷鳴が轟き、黒々とした雲の中から、雷光を伴って黒き龍が現れた。
以前戦った西洋的な竜種ワイバーンではなく、東洋的な胴体の長い龍、黒い龍だ!
人々は恐れおののき、蛮勇を発揮した王族の警護の兵士が向かっていくが、その黒龍が体をくねらせただけで警護の兵士が飛んで行った。
俺は、白銀の小手とドラゴンキラーを魔法の袋から取り出し手早く装備する。
龍が地面に降り立つと、長い振袖を付けた黒いドレス姿の妙齢な女性に変身する。
彼女、黒龍はつかつかと王の前に進む。
『あれから、約束の100年がたった、我に王族の娘を差し出せ!』
と言うではないか、何でも100年程前隣国との間に戦争があり、敗戦まじかと言うときに国の守り龍である黒龍に当時の国王が助けを求めた。
その時に100年後、王族の娘を差し出すという盟約のもと黒龍が戦闘に介入、隣国を瓦解併合したのだ。
すると、炎のように紅いドレス姿のカンザク王家の第2王女ユリアナが彼女の前に進み出て首を垂れて
「
と告げる。黒龍は王女の手を取ろうとする。
俺は、転移で咄嗟に王女の手を取ろうとした黒龍の手を上から押さえる。
黒龍が
「えい、汚き手で我に触るな!」
黒龍の雷撃が走る。背中の雷神がそれに呼応して雷撃を相殺する。
黒龍がいきなり現れた俺と、俺の背中の雷神に驚きながら俺の手を振り払う、王女は雷撃の余波にあったのか倒れてしまう。
スーッと白い影が王女に近寄ると聖魔法の癒しで王女を介抱している。純白のドレスを纏った公爵令嬢のセーラだ。
俺は木刀から取り替えたドラゴンキラーを魔法の袋から抜き出す。
黒龍がドラゴンキラーを見て更に目を剥く、
「お主は、何処でそれを...!それは我が実家、王家に伝わる至宝ぞ⁉確か王家の下僕のワイバーンが盗んでいった...!お主はワイバーンを倒したのか?」
「よかろう、お主の顔を立てて盟約の件は反故にしてやろう、お主達に土産にこれをやろう、暇になれば我が黒龍のダンジョンに遊びに来よ。」
と言って元の龍、黒龍の姿に戻り3枚の鱗を腕から剥がすと、俺と気が付いた王女、公爵令嬢のセーラに投げ渡した。
黒龍はス~ッと上空に登ると、更に黒々とした雲が湧きあがる。
黒龍は雷光を伴いながら遠い黒龍山と呼ばれる山に向かって飛翔を始めた。
しばらくすると黒龍が転移を使ったのかフッと消える。黒龍が消えると俺達の周りを湧いていた雲も消えていった。
ドラゴンキラーを魔法の袋に戻す。それを見ていた王女とセーラの視線が痛い。
翌日から本選が行われた。
龍を追い払った俺の相手は誰も出てこなかった。全試合不戦勝で俺が優勝者になり報奨金と言う名の優勝賞金1千ギリと冒険者ギルドからDランクの冒険者カードをもらった。
冒険者カードはBランクまでは上書きをするそうだ。Aランク以上はゴールドカードになるそうだ。
準優勝者は予選トーナメントで戦った二日酔いのベックさんで報奨金と言う名の準優勝賞金500ギリを受け取っていた。
ベックさんはもうEランクどころかCランクの冒険者カードを持っており賞金稼ぎで出場したそうだ。
賞金稼ぎで高ランクの冒険者が冒険者予備校の試験に参加する事はよくあるらしい。それに、本選の優勝者、準優勝者の就職先は引く手あまたで、五月蠅い勧誘に逃げ回るそうだ・・・。よくわからないが?
魔法の部門は優勝者は王女様、準優勝者は公爵令嬢のセーラ様で二人とも褒賞金は国に返納したそうだ。
三日後入校式があった。ベックさんが俺の横にきて本選の優勝者や準優勝者は授業に出る必要がないと教えてくれる。
冒険者カードを持っているのでダンジョン探索をして、冒険者カードにダンジョン踏破完了が自動的に記載されるので、それを冒険者ギルドや冒険者予備校に持って行けば単位をもらえるそうだ。
冒険者予備校の5年間で1箇所初級ダンジョンを攻略すればよいというものだ。
俺は1週間だけ授業を受けて見た。剣術の講師は審判をしていた老人で、そこそこの力量だが俺の相手ではなかった。
俺を配下にしようと、近衛や親衛隊が勧誘にくる。大物貴族も勧誘にくる。
五月蠅いので逃げ回る。こういう事だったのか!
俺は勧誘活動を逃れるため、ダンジョン探索をすることにした。
ステータス画面を開き、ダンジョン探知画面にする。視線を感じて後ろを振り向くと王女様と公爵令嬢様が何をしているのだろうと言う顔で俺を見ていた。
冒険者予備校内の冒険者ギルドの受付に行く、一番近くのダンジョン探索に行きたいのでと聞いて、地図をもらいぶらぶらと歩いて郊外に出る。王女様と公爵令嬢も俺の後をついてくる。
ステータス画面で確認すると教えてもらった場所はカンザク王城の城下近くの青色の初級ダンジョンで再度開かれる時間と踏破済みと赤色で表示されている。
魔の森以外では踏破済みのダンジョンでもダンジョン内に入ることが出来て、ダンジョン内に沸く魔獣を倒す事が出来る。
そのうえ、魔の森のダンジョン内では魔獣を倒すと時々アイテムを落とすことがあるが魔獣本体は泡となって消える。魔の森以外のダンジョンでは魔獣を倒してその肉や魔石を冒険者ギルドで売れるそうだ。
俺は郊外に出ると馬を呼ぶ、賢い馬で俺が思念で呼ぶとすぐ来る。俺は走って来た馬に飛び乗っる。ステータス画面を使って王都からかなり遠い初級ダンジョン見つけて、そこを探索をする。
そのダンジョンを探索する事三日目にダンジョンマップに五人の人間の表示が現れた。後3箇所で踏破完了するのに。このダンジョンは初級の割には結構強い魔物が出るうえに小さな地震が頻発する。
スライムも小さな地震の後に大きさが大きくなり、色が濃くなる。大きくなり色も濃くなればなるほど強くなるのだ。そのうちに、ここのスライムは身体強化魔法を使わないと倒せないものが出てきた・・・何か変だ⁉
地震か?今までになく大きくダンジョンがゆれている!
ステータス画面のダンジョンマップが明滅してダンジョンが変化していく。
ダンジョン探知画面に切り替えると青色が点滅して、黄色に変化していく。
ダンジョンが育った?中級ダンジョンに育ったようだ!
もう一度ダンジョンマップに切り替える、ダンジョンが2層になって、俺は入り口付近の部屋に移動させられ。
入ってきた五人は、出入り口のある第一層の中央付近に移動させられたようだ。おれが踏破した跡が細切れのように移動している。
俺が倒したこの部屋の主はゴーレムだったのが、アイアンゴーレムになってよみがえり襲ってきた。体の硬さと動き、力が段違いだ。白銀の小手を装備する。ロングソード1本駄目にされた。
出てきたアイテムが「鉄の脛当て:防具、重さ片方5キロ、販売価格10ギリ」だ、トレーニングする時にでも着けるのにはいいが、重すぎて防具にならんぞこれは。
宝箱も再生され、生命回復薬(中:生命力20~50まで回復)が2本魔力回復薬(小:魔力1~5まで回復)が5本手に入った。
宝物の部屋でひと眠りして外に出る。
ダンジョンマップが黄色表示の中級ダンジョンになり、この部屋が再度開くには7200時間、300日後でなければいけないようだ。
ダンジョンマップを見ると五人が、魔獣に追われて逃げている。かなり出口に近づいているようだ。
五人のうちの一人が最後尾を逃げている奴を、追いかける魔獣に向かって押した。俺はダンジョンマップの画面でその地点に転移してみる。上手く出来た。
犬ほどの大きさのネズミの大群だ、齧歯を煌めかせて、倒れた人に襲いかかる。
思い切り火魔法の火力をあげる。確かこのダンジョンはどんな手段で倒してもスキルポイントが付くんだったな。しかしながら、体に火をつけたまま向かってくるネズミは気持ち悪い!
初級ダンジョンで、襲ってきたネズミの魔物を全部で350匹も倒したが、スキルポイントが3,5で、落ちたアイテムが『ネズミの肉』が5個だった。
今回はそれを一回り大きくしたネズミで全部で350匹、スキルポイントが35で、落ちたアイテムが『大きなネズミの肉』5個だとは、何となく腹立つな!
助けた人が身を起こす。5歳位のウサギの獣人の女の子だった。
逃げてた4人が戻って来てウサギの獣人の女の子を黙って連れて行った。そういえばダンジョン内では手助け無用だった。それでも、何となく腹立つな‼
後ろから4人の殺気が膨れ上がった。ダンジョン強盗という奴だ。殺して身ぐるみ剥いで置いておけば、ダンジョン内の魔獣がきれいさっぱり片付けてくれるというやつだ。
ところが奴らの後ろにスライム、それもかなり大きいのが出現し、奴らに広がるように覆いかぶさる。
4人とウサギの獣人の女の子も一緒だ。
身体強化魔法で腕力をあげて雷神を使い覆いかぶさったスライムを真っ二つにする。スライムがはじけ飛んで、生命回復薬(中:生命力20~50まで回復)が1本手に入った。
すぐ横に扉があるので開ける。
その部屋の主は、またスライムか!それもゴールデンスライムだ‼こいつの表面は魔法を弾いてしまうので直接の魔法が効かない、身体強化魔法で腕力をあげて表面に穴をあけて雷神を使って真っ二つにする。
その跡には1キロ程の黄金の塊が落ちていた。宝箱の中は魔力回復薬(中:魔力量20~50まで回復)が1本は入っていた。
俺の雷神の余波で痺れている5人を部屋の中に放り込む。
俺は、その後出入り口のある第一層の残り3部屋を攻略し最後の部屋で休む。
翌日は広がったダンジョンの残りの地下、第二層部分を攻略する。ダンジョンマップを確認すると5人の表示がなくなったので出て行ったのだろう。
下に向かう階段を見つけ地下の第二層部分に降りる。第二層部分は宝箱がある部屋が15部屋もあった。
二つの部屋の主がアイアンゴーレムで、アイアンゴーレムを倒したときに出てきたアイテムが「鉄の腕当て:防具、重さ片方5キロ、販売価格10ギリ」と「鉄の鎧:防具、重さ20キロ、販売価格20ギリ」だった。
今の俺では、全部付けたら身動きもできない、シャレにならない防具だ。
宝箱の中身はそれぞれ、生命回復薬(中:生命力20~50まで回復)が1本、魔力回復薬(小:魔力1~5まで回復)が1本だった。
最後の部屋、中級ダンジョンの主はゴールデンゴーレムで、とにかく硬いゴーレムだった。
こいつを倒すと面白いアイテムが手に入った。『白銀の脛当て』というもので『白銀の小手』の脛当て版だ。
その他には目新しいものは無かった。なんやかんやでこのダンジョンで1週間以上過ごした。
外に出るとステータス画面の表示が初中級ダンジョンの攻略の特別報酬でレベル2と魔力量も生命力も2千づつあがり、そのうえ中級ダンジョン踏破報酬としてレベルが2上がり生命力も魔力量も2千づつあがった。
踏破報酬金額は1万ギリであった。ダンジョンマップではダンジョンの主、ゴールデンゴーレム討伐時間で2年後再生と赤色で表示されていた。
それよりもダンジョンの外には、助けた5人とカンザク王国の兵士とそれを指揮する王女ユリアナと公爵令嬢のセーラ、護衛で雇われていたベックさんが待っていた。
何でも俺が助けた5人から
「5人で弱らせた魔獣を俺に横取りされた。」
と訴え出たらしいのだ、助けてあげたのに。
その後王城にて、俺や俺が助けた5人が王女のユリアナと公爵令嬢のセーラ等に取り調べを受けた。
王女と公爵令嬢の二人は冒険者予備校本選の優勝者がそのような些末なことをする事がないと、逆にあの5人について部下に念入りに取り調べを命じた。
5人は俺が冒険者予備校本選の優勝者だとは知らなかったようだ。
ウサギ耳の亜人の女の子が事実を告げた、その結果4人は誣告罪で犯罪奴隷として2年間鉱山で働かされるそうだ。
ウサギ耳の亜人の女の子は奴隷の身分を解除され、公爵家で下働きをすることになったそうだ。
王女のユリアナと公爵令嬢のセーラが俺に
「今回の事感謝しなさいよ!ありがたいと思ったら一緒にパーティーを組みましょう。」
とパーティーに誘われた。
俺は、今までは遠くからでしか見ていなかったのだが、この二人を間近に見て驚いた。
遠くからでも美少女で二人ともよく似ているとは思っていたが、近くで見ると鏡に映った双子かと思う程よく似た美少女だ!それに前世の俺の奥さんの中学時代にそっくりなのだ。
そういえば、俺の初恋の相手が俺の奥さんで、剣道馬鹿の俺は、中学校の道場から町道場と渡り歩いているとき、不良に絡まれている同級生で美人で有名な彼女を助けてから・・・俺の奥さんどうしているかな?
等と思っていたら、二人に
「時々ぼんやりしているけど聞いているの?」
と尋ねられた。兎にも角にも俺は、二人の実力を見てから決めると言うことで手始めに、俺とベックさんを含めた4人で青色の初級ダンジョンに入った。
王女のユリアナと公爵令嬢のセーラが、ネズミの魔物の大群で泣き出し、スライムに覆いかぶされそうになって逃げ出した。
結局初級ダンジョンも攻略できなかった。とても面倒見切れない。
二人も
「冒険者予備校で実力を磨くから、冒険者予備校を卒業したらパーティーを組みましょう。」
と言って、二人で泣いている。そんな二人を見てベックさんは呆れて喉が渇いたと酒を飲みに行ってしまった。
それで俺は二人を連れて冒険者予備校に戻ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます