第3話 廃嫡

 この世界に転生をして直ぐに魔法を測れる水晶で全魔法を使えることが分かった。

 そのおかげで皇太子に任命されて『雷神』と言う話せる守り刀を与えられた。

 こいつ超頭良くて!魔法の事に精通している。

 それで俺の魔法の家庭教師をしている。

 ただこいつと繋がったせいで俺に前世の記憶があるのはもうばれている。

 こいつ俺が魔法の練習をしている間に前世の記憶にある娯楽雑誌・・・主に漫画を読んで楽しんでいる。

 俺も前世の記憶の整理で良いのだが。


 魔法の練習は毎夜、そう母親や使用人が就寝の為にいなくなると雷神が教えてくれた練習方法で「火」魔法や「水」魔法の練習をするのが日課だ。

 魔法等すぐ使えると思ったのだが最初の二ヶ月は全く使えなくて腐っていた。

 三ヶ月経ったある日体に何か変化を感じた、キラキラ輝く魔素が俺の体に集まり始めたのだ・・・磁石に寄ってくる金属の様に・・・それで俺は突き出した右手の人差し指に意識を集中して

「火」

と魔法を唱える。

 何とキラキラした魔素が渦を巻きながら指先に集まってきた。

 集まった魔素に火をイメージすると、魔素が燃え上がった。

 小さなマッチの火程だが指先に火の塊が出来上がった。


「あちっち」


感動してのんびり見ていたら指先を火傷した。

 この火の塊をどうしよう!

 そうだ、皇太子就任祝いで正妻の父親の宰相が送ってくれた机の上にある花瓶目がけて投げつける事にした。・・・どうも虫唾が走るような男がくれたものだから的には丁度良い!

 指先を目標にしていた花瓶に向けただけで、火の塊が花瓶に向かって飛んで行き花瓶が燃え上がる。・・・ワオー指鉄砲で火の弾が飛んで行く銃器が発展しないわけだ!

 初めて火魔法が出来て、盛大に花瓶が燃えている⁉・・・(実は初めて成功してマッチの火程度)なのだが、少し焦ってしまい「水」魔法を唱えて消火しようとしたが上手く出来ない。

 肝心の魔素が集まらないうえに水のイメージが上手く出来ないのだ。


 呼吸に意識を集中して、心を落ち着けさせて魔素を集めていく、漂っていた魔素が右手の人差し指の指先に集まってきたので、今度は水をイメージして

「水」

魔法を唱えると右手の人差し指に水の塊ができた。

 その水の塊を燃えている花瓶に向かって右手の人差し指を向けると水の塊が鉄砲玉の様に飛んで行き、花瓶に当たると火が消えた。・・・本当にワオー!今度は水鉄砲だぜ!!


 花瓶が少し焦げた程度で済んでホッとした・・・!ホッとしている場合ではない。

 花瓶が焦げて、机の上が水浸しだ!温風で乾かそうとするが、上手くいかない。マズイ、まずい、不味い、花瓶に向かって

「風」

魔法をぶつける、風魔法に当たって花瓶が倒れる水を垂らしながら、机の上をゴロゴロと転がり床にガチャンと落ちる。焦げた破片は風魔法をぶつけて粉々にする。・・・風魔法の指鉄砲は何か虚しい!餓鬼の頃の鉄砲遊びが思い浮かぶ。


 物音を聞きつけて、母親が部屋に入って来た。俺は狸眠りをする。

 指先が火傷で痛い!これは俺に対するいましめだな。

 だからと言って火傷の痕を残すのは不味い!

 母親が部屋のかたずけをして出ていくと直ぐ治療魔法を試みた。

 スゲー!!傷痕も残さず完治した、しかし本日初めて火魔法が等が使えたが、これは少し不味い。

 産まれて1歳にも満たない赤ん坊が魔法を使えるはずがないからである。

 俺の魔法が使えるかどうか調べた時に母親が、実際に魔法を使えるようになるには早くて6歳位、遅くても12歳位から使えるようになると独り言で漏らしていたからだ。


 1歳にも満たない俺が魔法が使えることを周りに悟られないようにするため、痕跡が残る火魔法や水魔法を封印して風魔法を使うようにした。

 まずは開口部の窓だ雨の日も風の日もガラス替わりに風魔法のカーテンを使う。・・・う~ん火魔法の時と同様に失敗した。

 突然の雨で窓の蓋をしようとした使用人が俺の風魔法で吹き飛んだのだ。・・・突風が吹いたということになって一応誤魔化せたのだが・・・ヤバイ!ヤバイ!!

 それでも使用人が吹き飛ぶのだ風魔法を上手く使えば空も飛べる!

 魔法世界のロマンの扉が開きそうだ。


 風のカーテンは中止だ、それで風魔法を別の方法に使えるか試してみた。

 魔法を使えば使う程、魔力の量があがり、魔法の強さがあがるのだ。

 俺は風魔法でドンドン魔素を集めていく、魔力量が一杯になったところで、集めた魔素を風魔法にのせて広げていく。

 机にぶつけると、机の形が把握出来るようになった。そんな訓練をすると飛躍的に魔力量があがる。

 魔法が使えるようになって毎日魔力切れが起きるほどやっていると、翌日には集められる魔力量が上がる。


 いつものように、風魔法で魔力量をあげて魔素を広げていくと、誰もいないのに

声が聞こえてくるようになった。

 幻聴かと思っていたが、使用人が女中頭に怒られていたり、使用人と誰かが母親の話をしている。

 どうも、内容が不穏だ。時々、俺の話も出ている。

 俺の母親は第二夫人で、老人の夫、ヤマト帝国皇帝は俺を皇太子に任命してから全く来ていない。

 母親が第二夫人だから当然、老帝には正妻、皇后様がいる。

 皇后様と言うには少し生臭い女なので正妻としておこう。

 正妻は老帝の義弟で宰相の娘だそうだ。老帝がヤマト帝国の皇帝の地位につく際、義弟を宰相にすることと、彼の娘を正妻にする事により手に入れたのだ。

 どうも、母親の使用人たちは正妻に寝返ったか、正妻の手の者になったようだ。

俺は、風魔法で噂を集めることができるので、母親の立場が危うくなっているのがよく分かる。


 正妻には、姉妹二人の子供がいる。二人とも俺より年上なので義姉になるのか。

 その正妻が俺が皇太子として認証された時に見に来た。

 二人の娘も連れてだ。

 正妻の顔は美人だ!それに俺の母親に比べて豊満な胸!!いわゆる巨乳だ!!!

 二人の娘は赤子なのでよくわからないが正妻を見ると美人になる予感がする。


 正妻が俺を抱き上げる・・・誰も止める者がいない・・・正妻は俺に向かって


「どうだい私の娘は美人だろう!私に男の子が生まれなければどちらか、いや二人ともでもいい嫁にもらっておくれ。

 そうすればヤマト帝国が私の物になるのだ!!」


等と言う・・・おお怖!俺ビビッて泣き出すと


「お腹が空いたかえ?」


と言って豊満な胸が俺の目の前に来た。

 悪女なのに!悪女なのに!!俺も男だった豊満な胸に負けた!!!・・・薄い胸のお母さんごめんなさい。思わず武者ぶり付いてしまった!!!!


 その後も何度も足繫く俺の様子を娘二人を連れて見に来て、俺を懐柔するためか豊満な胸から乳を与えてくれた。

 その時の顔は美人で天女のように美しかった。・・・どうやら俺も悪女の正妻に懐柔されかかっているようだ。

 その正妻が俺が乳離れを始めた1歳9ヶ月のころからピタリとこなくなった、どうやら正妻が妊娠したらしい。


 問題は産まれてくる子供の性別だ!


 また産んだ子が女の子だったら、その子や二人の義姉を俺と結婚させてヤマト帝国の政権を将来掌握するつもりでいるらしい。

 何でもこの世は、一夫多妻制で姉妹と結婚している人は多いらしい。しかし義理とはいえ、それも姉妹二人とも結婚とは・・・!下手をすると産まれた妹を含めて三人と結婚か?ハーレム一直線か??そんなうまい話はない!!


 結婚といっても俺はまだ二歳にもなっていないのに。


 それよりも問題は男の場合だ!

 正妻が、今度産んだ子が男の子だったら、俺を廃嫡し何処かに幽閉する。

 母親も同様にする等という話を使用人がまことしやかに噂しているのだ・・・噂をしているのが正妻から金を貰っている連中だから信憑しんぴょう性も高い。


 本当に俺はどうなるのだろう、まあ、俺の今出来る事をするしかないか。

 それは今以上に魔力の量と質を高める事だ。

 俺は昼寝て、夜はこっそりと風魔法を使う日々を過ごした。

 正妻が妊娠したという噂を聞いた十月十日後の産みつきに、正妻が玉のような男の子を産んだという話を風魔法を使って噂を集めているうちに知った。


 その男の子が産まれるやいなや正妻や正妻の父親の宰相が俺の廃嫡などの手を色々と打っているらしい。


 正妻の子供が産まれたもう次の日、老帝がさらに疲れて老けた顔をしてお付きの者を何人も引き連れて俺の部屋に訪れた。

 老帝は母親に、俺を『皇太子』の地位から

『御継様』という皇太子の予備の地位につけると告げた。

 老帝は皇太子の象徴でもあり、守り刀である『ライジン(雷神)』も取り上げる旨を告げる。


 老帝も空に浮いている雷神を見て少し驚いている。

 いっぱいついてきた老帝のお付きの者の一人が、俺の周りを漂っている雷神を取り上げるため、掴もうとすると雷神の名前のとおり雷光が走り掴もうとした掌から煙があげりその手のひらを焦がす。

 老帝は手を抱えて転げまわる家臣を見てから、空に漂う雷神に注意しながら手を伸ばす


『バチ』『バチ』


と雷神から老皇帝の手に向かって雷光が走る。

 老皇帝は伸ばした手を戻す。赤くなった掌を見ながら


「今まで、ライジンが宙に浮いているなど見たことも無ければ、ライジンが雷で抵抗してくるなど聞いたこともない!?」


と言って老帝は守り刀を取り上げるのをあきらめて


「正妻の子に守り刀を与えられないが彼が『皇太子』で、お前は『御継様』でよいな。」


と言うと、何となくホットしたような顔をしてお付きの者を引き連れて部屋から出て行った。

 どうやら俺はこれで御継様とは言え廃嫡されたらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る