第2話 出会い

この村に案内してくれたのは10を少し過ぎたくらいの少年だった



雪山で迷い吹雪になってこのまま遭難して



死んでしまうのかと思いかけていた時に少年は現れた



少年の瞳は真紅に染まっていて反逆者だということがわかった



反逆者は忌むべき者



そう教えられてきた私は少年を殺そうと思った



体力は減っているが私も大人だ



少年一人くらい殺すことくらいできる



荷物にロープやナイフもある



殺すことくらいはわけのないことだ



そう考えている私に向かって少年は言った



「遭難している人を見捨てることはできません



けれど僕たちに危害を加えるのであれば村には連れていけません



危害を加えないと約束できるのであれば村まで案内します



約束できないのであれば自分たちで麓まで行ってください



ここからまっすぐ南に進めば最短距離で麓まで降りれるはずです



今のあなたたちでも麓の村まではたどり着けると思います



さああなたたちはどうしますか



僕について来ますか?それとも頑張って自分たちでここを降りますか?」



少年から問いかけられ私たちは考えた



反逆者なんかに助けてもらうのは恥になる



だけど方位磁石は持ってないからずっと南に進み続けるのは困難



吹雪の中にいたから凍えていて動くのも結構つらい



私たちは相談して



ここは後で恥になっても生きる確率が高い道を選ぶほうがいいと考えた



最悪反逆者たちを全員殺してしまえば問題ないだろう



そうだそうしよう



私たちは考えた結果少年についていくことを決めた



今思えば私たちは何も考えていなかったんだ



反逆者が私たちと同じ人だってことも



なんでこんな場所で暮らしているのかも



どうして約束をするのかも



全然理解してなかったんだ









「約束するあなたたちに危害は加えない」



私は少年に告げた



ただこの状況から脱出したいから口ではそう言ったが



反逆者との約束なんて守る気はなかった



「わかりましたついてきてください」



少年はそう言うと雪の中をどんどん進んでいった



赤と黒の服を着た少年は雪の中で良く目立ったので見失うことはなさそうだ



敬語だしにこりともしないし、子供らしくなくてなんて気味の悪い少年だと思った








雪の中を30分ほど進むと遠くに村が見えてきた



赤色を基調とした家が立ち並ぶこじんまりとした村だ



この村に反逆者が住んでいるのか



のんびりしてそうで全然そんな風には見えないなぁ



始めにこの村を見た印象はそんなものだった



「おかえり」



瑠璃色の瞳の女性が少年に向かって笑顔で話しかける



「ただいまー」



少年も笑顔で返事をした



周りを見ると真紅の瞳の人もいるけど普通の目の色の人もいる



意味が解らない



反逆者でないのならこんなところにいる必要なんかないだろうに



「こっちに来て」



少年は村の奥にある少し大きな家に私たちを案内した



その家の中には真紅の瞳の青年がいて私たちを迎えてくれた



「レイさーん



迷子居たんで連れてきましたー



一応あのことは約束してもらってるよ



まあ守ってくれるかは知らないけどさ



4人くらいだったらレイさん家で泊めれたよね?」



青年の名前はレイと言うらしい



真っ先に連れてこられたのだからここが村長の家だと思うけど



この青年が村長なのだろうか



反逆者の村だけあって村長も反逆者なのか



「うん4人なら客室に入る



案内しておいて」



「りょーかい!



では部屋に案内するので付いてきてください」






案内された部屋は6人が泊まれるスペースのある部屋だった



ベッドやテーブルがあって雰囲気はホテルみたいな感じ



「ここがあなたたちの部屋になります



部屋の中の設備は自由に使ってもらって結構です



村の中ならば遭難する危険はないと思うので自由に行動してください



但し看板の無い家は個人の家なので侵入禁止



あとこの家の中もこの部屋以外の部屋には入らないでください



明日か明後日には吹雪も少しはましになると思うので



その時に村の人間が麓までお送りします



それまではこの村から出ないようにしてください



遭難しても見つけられる保証はありませんので」



そう言い残して少年は部屋を出て行った









また遭難するのはごめんだけどこんなとこにも居たくない



少し休んだら誰か適当な反逆者をおどして麓まで案内させようと思った



ひとまず体力回復するために交代で寝るか









わたしが起きるとそこにはたくさんの料理が並んでいた



反逆者たちがやってきて置いて行ったらしい



反逆者の作ったものを食べるなんて屈辱だったが



今はそうも言っていられない事態だ



どうにか我慢をして料理を食べた



その料理は温かくて、体の芯から温まるような、そんな料理だった









大分体力も回復したので村に行ってみることにした



口々に大変だったねやらゆっくり休んでいきなさいと言われる



反逆者なのになんで



「これでわかったでしょ



別に僕たちは異常なんかじゃない



悪いことだってしてないしおかしなことをしたつもりもない



むしろ翼は金色なんだしその辺の人たちよりもいい人ばっかりだと思うよ?」



振り返ると案内役の少年がいた



背中からは黄金の翼が生えている



確かに翼が黄金なのは善人の証



あれ?反逆者の翼って金色だっけ



今までに見た反逆者には翼なんてなかったはず



そう思って周りを見渡すと



さっきまでなかったはずの翼が反逆者たちの背中から生えていた



何か仕掛けがあるのだろうと少年の方を見ると彼はくすくすと笑いながら



「種も仕掛けもありません



あなたたちが気付かなかっただけで反逆者にも翼は生えていたんですよ



混乱しているでしょうから少しお茶でも飲んで休みませんか」



少年の言う通り混乱していた私たちはその言葉にうなずいてしまった











おいしそうな紅茶とクッキーが準備され少年は椅子に腰かけた



「少し昔の話を聞いてもらえませんか



お茶を飲む間だけで結構です



いやだと思ったら聞くのをやめていただいてもいいです」



いやだという理由もないので私はうなづいた



「ありがとうございます



これは私が反逆者になる前の話です」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る