第34話 新たな始動

 俺は地竜と鉱物の竜を従えて、世界樹様のもとに戻る。世界樹教の社殿の隣の社務所を取り壊し、火の女神イザナミ様を祀る本殿を檜で社殿建築で造る。

 俺は家の守り神を火の女神イザナミ様にすると、家族に伝える。

 世界樹教の問題(宗教問題か?)もあったが、八百万の神々を信じる元日本人的感覚で説明して家族を煙に巻いた。

 各地にある世界樹教の分社の横にも火の女神イザナミ様を祀る分社を建築することにした。

 次に火の女神イザナミ様の約束のとおり、武器開発を凍結し、予算も削減、廃止した。武器開発の代りに、蒸気機関による大気破壊を防止するため、水力発電を主体とした電気技術開発に力を注ぐことにする。

 俺は月の半分ぐらいは、火の女神イザナミ様のもとに行く。時々子供達も伴って行く。火の女神イザナミ様から火の精霊魔法を教わるのだ。子供達も行くたびに色々な精霊魔法を覚え魔力量があがった。

 パルマエ様のお陰で?嫁8人が全員妊娠し、シオリの後残りの嫁が、いわゆる十月十日、出産予定日を次々と迎え元気な赤子を出産した。今回は前回のような爆発騒ぎで全員が一斉に出産する事は無かった。

 シオリとエクスの子が女の子で、シオリの子がシアン、エクスの子がエマリと名付けられた。他の嫁六人は男の子だった。男の子の名前は今後の世継ぎ問題でもめるのも嫌だと、生まれた順番でジロウから始まってナナロウまで名付けると嫁達の間で決めた。

 火の女神イザナミ様が産まれたばかりの俺の子供達の顔を見るのと祝福を与えたいと、火の女神イザナミ様を祀る本殿に現れた。

 俺や嫁八人、生まれたばかりの赤ん坊八人、子供達六人が拝殿に並び、火の女神イザナミ様に頭を垂れる。

 火の女神イザナミ様が赤子に手をかざして祝福を与えていく。赤子の頭にほのかに赤い光の輪が浮く。特に二人の女の子の頭には強い輝きを持った赤い光の輪が浮く。火の女神イザナミ様は女の子の赤子二人を抱き上げ、

『この子達は火の魔法を特に強く使える天与の才が備わっておる。この子達を妾の社殿の巫女とするがよい。悪い話ではなかろう。』

と言って艶然と笑った。流石エンマ様の本家、エンマ様によく似た笑顔だ。

 俺は、懸念のある骸骨殺人集団を忍軍を使い探索するが、なかなか有力な情報が無い。

 その中で引っ掛かってきたのが、魔王城だ。ゴーレムが出てきた跡地だ。

 魔王城の住人はゴーレムが出る前、流民が多数出る中でも人口50万人を誇ったのが、現在はその50分の1、人口1万人を切る状況になっている。

 その魔王城に俺は蒸気機関車を走らせ再復興を行っている。魔王城はゴーレムが出てこようとして、半壊どころかほぼ全壊の状況の状況だ。

 そこから、邪気が滲み出ているのだ。その邪気が復興の為建てた、世界樹教の祠を破壊し、跡に真っ黒に変色した世界樹の枝が残った。

 その連絡を受け、俺と地竜と鉱物の竜(鉱ちゃん)とで向かった。流石にこれだけ破壊されていると転移先のイメージを結べないので、天馬に乗って行く。

 地竜と鉱ちゃんは、竜の姿になり自分の羽で向かった。

 魔王城の上空に到達する。魔王城を中心に大きく穴が開いている。その穴に向かって魔王城の残骸が崩れ込んでいる。それでも、その穴が塞がることは無かった。魔王城の建物の形を成している残骸の上に天馬から降りて立つ。その横に地竜と鉱ちゃんが人形になって立つ。地竜も鉱ちゃんも人形になるときは服も形成できるようになったようだ。

 ゴーレムの身長160メートルの巨体が眠っていた場所だ大穴が開いていても不思議はない。

 穴の中に明かり魔法を放り込み中を見ようとするが、深い上に魔王城の残骸で中が良く見えない!

 魔王城の跡は、侵入者を防ぐため世界樹帝国から派遣された兵士で囲まれている。

 その魔王城の残骸を降りていく。まだ真新しい死体が残骸の所々に埋葬もされず放置されている。

 これは不味いのでは?ゾンビ化するぞ!そう思ったとたん死体がむっくりと立ち上がる。俺が火魔法を放つ、地竜と鉱ちゃんも人形から竜の姿になると火を吐き始めた。地竜はマグマを吐くことができるので火を吐くのは簡単にできた。鉱ちゃんも火の女神イザナミ様のそばにいて、指導を毎日受けている事により、火を吐けるようになったらしいのだ。

 流石に竜、あっという間にゾンビどもを消し炭にかえていく、ゾンビの燃える明りで、魔王城の状況が見えてくる。

 魔王城には住んでいないであろう人種、如何にも山賊のような格好をした男女もゾンビに食われて倒れている。魔王城あとに宝でもないかと探しに来た奴らだ。山賊どもの死体もゾンビ化する。こいつらも火魔法で燃やす。

 深くなるにしたがって、死体が少なくなる。城の最下部には地下牢があり、その中には骨になった遺体が何体も横たわっている。

 背中にゾクリとする寒気が襲う。死んだと思われたヘンリケ魔王が玉座に座って俺を見ている。いや、ヘンリケ魔王の顔の右半分が崩れて骸骨となり、右の眼窩には赤い憎しみの炎が燃えている。ヘンリケ魔王がゾンビ化したのか?

 ヘンリケ魔王は腰の剣を抜き出す。俺も愛刀抜き出してヘンリケ魔王に対峙するよく見るとヘンリケ魔王では無い?ヘンフリだ!ヘンフリは

『ヘンリケはゴーレムに食われたのさ。あいつが俺をこんな姿にしたんだ!』

と言って立ち上がる。地下牢に倒れていた骸骨どもが起きあがる。骸骨の手には禍々しく光る短剣が握られている。ヘンフリが

『やれ!』

と短く命令すると、立ち上がった骸骨どもが幽鬼のようにユラユラと揺れながら俺に向かってくる。

 俺は精霊魔法で骸骨どもを昇華しようとするが、出来ない!

 ヘンフリが哄笑しながら、

『この骸骨どもは、昇華する怨念も情念もない。ただ俺の命令に動くだけだ!』

 俺は火魔法を放つ、地獄の業火の中、ユラユラと踊るようにしながら骸骨たちが灰になっていく。何十、何百、何千と!

 その灰がサラサラと音を立てながら集まっていく。最後の骸骨を灰にすると、大きな灰の骸骨が出来あがる。

 もう一度燃やすが灰が少し減るだけ、どうする。

 ヘンフリがニヤニヤといやらしく笑う、骸骨たちが持っていた短刀が集まり大きな刀になる。

 骸骨が刀を一振りすると、短刀になって多数飛んでくる、鉱物の竜(鉱ちゃん)が逃げ遅れる。水魔法で滝のような雨を降らせる。短刀を地面に叩き落す。

 幾つかの短刀が

「バ~ン」「バ~ン」

と小爆発する

 ある一定の力が加わると短刀が爆発する。後は骸骨の刀に戻る。

 横にある魔王城の残骸を刀に向かって風魔法や土魔法を使って飛ばす。

 俺は鉱ちゃんの襟首を持って建物の外、穴の外へ転移する。

「ド~ン」

という腹に響く爆発音と共に瓦礫が俺達を追いかけてくる。

 建物の外に立ったところで、足元が崩れていく、今度はそのまま跳躍する。

 魔王城のわずかに残った建物も穴の中に落ちてしまう。魔王城の跡地が大きな黒々とした穴となった。

 穴の中から

「オ~ン」「オ~ン」

と怨念を含んだ鳴き声のようなものが聞こえる。 

 


 

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