第33話 魔王の反撃 と最後
魔王城から住民が逃げ出している。
ヘンリケ魔王が敗戦の心の痛手と魔臓を破壊された事から、精神の安定を失い暴走を始めた。
最初の犠牲者は腰巾着達だ、皇帝城の戦場から腰巾着に助けられ引き摺られるようにして馬車に乗って魔王城に戻ろうとした時、ヘンリケ魔王が腰巾着に食らいつき腰巾着を貪り食った。腰巾着の頭から魔臓を引きちぎり自分の頭に取り付けるが、そんなもの数歩も歩けば取れてしまう。
途中で逃げる魔王軍の将兵、哀れな犠牲者達を貪り食い、幽鬼のようになりながらもヘンリケ魔王は魔王城にたどり着いた。
ヘンリケ魔王は魔王城で待っていた妃を犯して喰らう、魔核を喰らう!止めに入る女官達を喰らう、犯しながら喰らう!喰らう‼
止めようとする、近衛兵や城兵を殴り倒し、魔臓を引きちぎり肉を喰らう。
魔王の娘達が息子達が止めようとするが、女は犯して貪り食い。男は魔臓を引きちぎられて貪り食った。
城内は阿鼻叫喚、地獄絵図と化していく。
ヘンリケ魔王は幽鬼のように、飢餓に苛まれながらさまよい歩く。いや、何かに呼ばれるようにして地下へ向かう。
ヘンリケ魔王の心のような闇の中をひたすら地下深くへと歩いていく。
地下の一番深いところに、奴は眠っていた。ヘンリケ魔王を待つように。
ヘンリケ魔王が見上げる、古代のゴーレムが座ってヘンリケ魔王を待つように胸が開いている。胸の中にヘンリケ魔王を呼ぶように玉座が見える。
迷うこともなくヘンリケ魔王がゴーレムの胸の中の玉座に座る。
ゴーレムの胸が閉じられていく。ゴーレムが立ち上がる。魔王城が崩れていく。生き延びた魔王城の魔族の人々が必死で逃げ出す。
被害は城下街にまで及び大きな地割れが起こり、城下街の人々が飲み込まれる。
その地割れからゴーレムが姿を現す。その身長約160メートル!
無機質な土の塊のゴーレムだ、古代の失われた技術に寄る産物だ、それが腐臭と呪いをまき散らしながら世界樹帝国帝国城に向かって歩き始める。
災いが禍々しい姿となって歩き始める。一歩一歩、歩いた足跡が腐敗と呪いの池となっていく。
足の大きさが25メートル、一歩が約30メートル、25メートルの腐敗と呪いの足跡が30メートルごとに、帝国城に向かって続き始めた。
無駄話、魔王城から帝国城まで歩いて12日だから約360キロ、360,000メートル、魔王が操るゴーレムの1歩が30メートル、1歩1秒とすると1万2千秒、約3時間20分で着く事になる。閑話休題。
帝国城にいても禍々しいものを魔王城から感じる。地竜と鉱物の竜が苦しみだした、ゴーレム、土の魔物の毒素が、これだけ離れていても地竜や鉱物の竜を侵食するのだ。
地竜と鉱物の竜は、人の体や竜の体に交互に変わりながら世界樹のもとに逃げ込む。俺は苦しむ二頭の竜の後を追いかける。
世界樹の女神様達が、世界を滅ぼす悪意が土の悪魔がやって来る。妾らも土の悪魔には敵わない。
あの火の山の女神イザナミ様を頼るしかない。
俺は世界樹のもとで地竜と鉱物の竜は人型になっている。二人を連れて、この世界の中心に位置する火山の山頂に転移する。火山の山頂にも何か結界でもあるのか、地竜と鉱物の竜は人の形のまま固定することができた。
俺は二人をつれて火口を降りていく、ガスが噴き出し視界が遮られる、ガスが晴れると、赤黒い火山の城が見えてきた。
地竜が俺に鉱物の竜を預けて火山の城の中に入って行く、しばらくすると、地竜が真っ赤な炎のドレスに身を包み真っ赤な髪に炎のティアラを被り、炎の小手と炎のサンダルの亡くなったエンマ様とよく似た絶世の美女を連れてきた。彼女は
『お主は、エンマと縁のあるものか。あの者は妾の眷属の縁につながるものであった。言わずともよい。そうか、あの者は亡くなったか。
あの者の縁にお主もつながっているのか。
今、妾に反逆した者がこの地を荒そうとしておるのか?
お主の刀を出せ。』
俺が愛刀を抜いて火山の女神イザナミ様に渡す。受け取った愛刀にイザナミ様は『フーッ』と息を吹きかける。愛刀に炎の力が宿される。イザナミ様は
『この刀で、あの慮外者を成敗してまいれ。』
と愛刀を返す。俺が愛刀を受け取ると、いきなり身長160メートルのゴーレムの目の前に転移される。
俺が目の前に現れると、ゴーレムが20メートルもある掌で俺を挟み打つ。
バ~ン
という大きな音がする。
俺は寸前のところでゴーレムの右目の前に転移する。
剣道で試合に勝つコツとして以前にも書いたが「危ないときは前に出よ」だ。
ゴーレムの目は大きい、アーモンド形の横3,5メートル、縦1メートルだ。いつも、棒手裏剣を飾りのように刺した肩から掛けたベルトから、棒手裏剣を抜き出しその目に向けて投げる。
的が大きいので見事に命中する。ゴーレムが右目を押さえ両膝をついて身もだえして苦しむ。
それも束の間で、すぐ右目が再生される。
ゴーレムは両手をついて立ち上がろうとする。俺は愛刀を抜きだし、イザナミ様が与えてくれた炎の力を使って右目、左目と突きさし、ゴーレムの背後に回る。
ゴーレムが両手で顔面を押さえる。苦しんでいる、両目はどうだ?
潰れた目のままゴーレムが立ち上がる。再生されていない。
ゴーレムは無闇やたらに両手を振り回し、走り回る。
走り回る足跡が腐敗と呪いの池となっていく。それがだんだん大きく深くなっていく、そのうちに、ゴーレム自身が作り上げた腐敗と呪いの池に身が沈んでいく。
そこから出ようと、もがく、もがけばもがくほど沈む、動きが止まったところでゴーレムの左膝を炎の力で切る。直径15メートルの大木のような膝が切られると、体長160メートルの巨体が大きくバランスを崩して倒れる。
大きな地震が起こる。近くの山が崩れる。木々が倒れる。
うつ伏せに倒れたゴーレムが、腐敗と呪いの池から出ようと両手をつく。
ついた右腕の肘を今度も切る。膝よりは細いとはいえ直径10メートルはある。
これを切ったところで、火山の女神イザナミ様が人型になっている地竜と鉱物の竜を従えて現れる。
イザナミ様が俺に
『首を落として、静ませたまえ!』
と命じるので、ゴーレムの首を落とす。
イザナミ様がゴーレムの頭に手をかざすと、ゴーレムの頭が粉々に壊れ炎をあげる。ゴーレムの体も徐々に崩れて粉々に壊れ炎を上げる。
ゴーレムの胸が開く、そこには玉座があるが誰も座っていない。玉座も崩れて炎を上げていくのだった。
ゴーレムが作った腐敗と呪いの池は、地竜が溶岩を吐き出して浄化していく。
ヘンリケ魔王はどこに行った。気配を感じなかった。
イザナミ様が俺の肩に手を置くと、火山の城の中にいる。
イザナミ様は俺に
『お主が探したヘンリケなる者は、あのゴーレムに食われたのだ。ところで妾が手伝って、この世界に平和が訪れたか?お主には懸念があるはずだ、骸骨の殺人者集団だ。』
俺は驚いて、イザナミ様を見る
『かの者たちは、お主の家族を害をなしていくだろう...。妾は、お主を手伝ってもよいが、約束してほしいことがある。これ以上の武器を研究するな。
妾は、この世の調停者でもあるのだ、この世界の調和を乱し、釣り合いをとれない状態をするならば、お主の国などいつでも燃やし尽くせるのだ。』
俺は黙ってイザナミ様の前でひざまずくのだった。
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