第29話 次期北の巨人王国国王

 歓迎の宴会で北の巨人王国国王アナトスからアックスの息子、双子の片割れを国王の跡継ぎにするから寄こせと言われて宴会が紛糾した。

 翌日、ふくれっ面のアックスと国王アナトス等を交えて正式な外交を始めた。技術の貸与に関しては見ないと判らないこともあり、視察団を作る事になった。

 これに関しては、国王アナトス家族が帝国城に向かうことになり。アックスが国王代理で北の巨人王国に残ることになったのでアックスがさらにふくれた。

 世界樹教の祠を北の巨人王国に設けることを了解してくれたので、早速祠を設けることにした。

 場所は北の巨人王国城内の中庭で、北の巨人王国の王一族と主だった家臣の見守る中、世界樹教の祠を設ける儀式を実施した。城内の中庭といっても、普段は将兵の訓練に使用するしかない茶色いグランドである。

 エクスは深紅の貫頭衣を着て尻尾を出した亜人の姿から、世界樹教の祠を設ける儀式の為、白い巫女の服装で北欧系の金髪碧眼の美少女の姿になった。エクスは世界樹の枝を捧げ持って城内の中庭の中央に進む。世界樹の枝に拝礼後、その場に額ずき世界樹の枝を地面にゆっくりと置く、世界樹の枝が神々しく輝き光の輪が広がる。その光が終わると、世界樹の枝を置いたところに祠が出来あがる。

 エクスが祠に拝礼すると静かに祠の扉が開き始める、それに伴って扉の中から光りがあふれだしながら広がっていく。祠の扉が開き切ると祠の中から世界樹の女神様達が神々しく光り輝き、嫦娥と姮娥を引き連れて現れる。

 嫦娥と姮娥は、琵琶を鳴らし、笛を吹き鳴らしている。

 宗教自体がまだないこの世界で、音楽等も丸太を叩くぐらいしかない無い現世で琵琶や笛の音を聞き、世界樹の枝が世界樹の枝を祀る祠になったり。そこから神々しい姿で世界樹の女神様達が出てくれば、世界樹教の信者に皆なるわな~!

 皆が首を垂れている。世界樹の女神様が

「この世界を統べるをのこが現れた。皆このをのこに従えば栄耀栄華を約束しようぞ!」

と言って世界樹の女神様達が神々しく光りながら祠の中に戻っていく。

 嫦娥と姮娥は今度は、世界樹の枝を持って祠の周りを踊るように回ると木々や草花が生えてくる。嫦娥と姮娥は

「この世界を統べるをのこよ、この地は水脈が少ない!水脈を捜してこの地に潤いをもたらせ!」

と二本の世界樹の枝を俺とエクスに渡す。嫦娥と姮娥も神々しく光りながら祠に戻っていく。

 俺とエクスは世界樹の枝を捧げ持つと、世界樹の枝が光り輝きはじめ道を示す。巨人族は首を垂れて身動きできない。周りに雲が湧き出す。世界樹の枝の光りの道を示す方向に向かって進む。世界樹の枝の光で指し示す、その先に二本の輝く木が見えてくる。

 二本の輝く木の側から、世界樹の桜の木の精霊様と世界樹の梅の木の精霊様が巫女の格好で現れる。世界樹の桜の木の精霊様は『サクラコ』様、梅の木の精霊様が『ウメコ』様と名乗った。

 サクラコ様は俺から世界樹の枝を受け取ると、世界樹の桜の木を枝にして、代わりに受け取った世界樹の枝を植えると桜の木になった。ウメコ様もエクスから世界樹の枝を受け取り、世界樹の梅の木を枝に、代わりに世界樹の枝を梅の木にした。

 その後サクラコ様とウメコ様は、この地と北の巨人王国城の中間地点を指差し

『あそこに地竜が住処を作って地下水脈の水の流れを変えてしまった。あの地竜を退治してもらえれば、北の巨人王国城内にも水脈が通り、庭が潤うであろう。さすれば北の巨人王国城内の庭、世界樹様の祠の隣にわが分身を植えようぞ。』

と言う。

 俺は魔法の袋からエクスの紅色の鎧や装備をだすと、エクスは鎧等を装備する。サクラコ様とウメコ様が示した中間地点に、俺はエクスを抱いて風魔法を使い飛翔して向かう。中間地点には深い竪穴が黒々と開いている。

 俺はエクスを抱えて、その竪穴へ飛び降りる。エクスは火魔法を時々放つて明かりをつける、俺は竪穴の壁を時々蹴り、様子をうかがいながら降りる。竪穴を50メートルほど降りると広い空間に出た。その中央付近で体長10メートルを超える灰色熊の大ボスより一回り大きなモグラがいる。モグラは土竜と漢字で書く、地竜ではなく土竜と書けばいいのに、等と思いながら対峙する。

 モグラは、体を変化させ黒い竜に変わっていく。体表に所々血のように赤い川が流れるような模様を身にまとう。その赤い川が煌めくと口から真っ赤なマグマを俺達に向かって吐きつけてきた。

 俺はエクスを抱えて後ろに飛んでそれを避ける。エクスは氷の槍を魔法で作りだし地竜に向かって放つ。地竜は氷の槍に向かってマグマを吐く、地竜のマグマの方が押されて、地竜の右肩口をエクスが放った氷の槍がかすめる。

 地竜は赤い川を煌めさせ、また強力な真っ赤なマグマを俺とエクスに向かって吐く、今度は俺はエクスを抱えたまま右横に飛んで逃げる。地竜の吐くマグマのせいで、足元がマグマで赤くコポコポと音を立ててながら流れている。このままだと逃げる足場が無くなっていく。

 俺とエクスは同時に氷の槍を作り地竜に向かって放つ、地竜は氷の槍に向かってマグマを吐くが、地竜のマグマの方が押されて右肩に一本が突き刺さる。地竜は苦し気に赤い川を煌めかせようとするが、肩に刺さった氷の槍が模様を遮り、強力なマグマを吐けないようだ。

 俺はエクスを安全なところに置くと愛刀を抜いて、苦しむ地竜を真っ二つにしようと愛刀を振り上げる。すると、地竜が泣きながら

『おやめください。御主人様、私が何をしたのですか?何でも言う事をききますから、命だけは取らないで下さい。』

と言って、小さな少年の姿になってうずくまる。俺は愛刀を血ぶるいして納刀後、肩の氷の槍を溶かして、肩に治癒魔法をかける。地竜に水脈からどいてもらうようにお願いする。俺は土魔法を使い水脈をもとに戻す。

 少年の姿になった地竜は

『僕も連れていけ!お前といると面白そうだ。』

等と偉そうに言ってついて来た。桜の木の精霊サクラコ様と梅の木の精霊ウメコ様が現れて、地竜に対して

『私達がお願いしても、動かなかったのに失礼な奴ね!』

と言って怒っている。精霊様達は神に近く、地竜のように人に変身できる竜は半神と呼ばれる存在らしい。

 北の巨人王国城の中庭、祠の前に転移魔法で転移する。アックスもアクシャも転移魔法は知っているが、目の前にいきなり現れて驚いている。もっと驚いているのが巨人王国城の家臣や父王のアナトスで、アナトスなどはアックスの双子を抱えて腰を抜かしている。

 水脈が戻ったので水魔法と土魔法を使って本殿の横に池と噴水を作る。

 父王のアナトスや母親のトリアナが俺を拝み始めた。拝むのは世界樹様達だけにして欲しいものだ。

 桜の木の精霊様のサクラコ様と梅の木の精霊様のウメコ様が本殿の横に桜の木と梅の木を植える、その木があっという間に育ち桜の木にはサクランボが梅の木には梅が実をつける。祠と桜と梅の木が神々しく輝く。

 巨人王国城の家臣や父王のアナトスも何か驚きすぎて表情が変わらない。

 帝国城にアックスを残して戻る日に、アックスの母親のトリアナが姪のユキナという身長170センチ位の子を連れて来た。トリアナは

「ユキナは今はもう10歳になる成人です。ただ、このままこの地にいては、巨人族とは認められず、この地の風習から王族に連なるものといえども、誰かの奴隷になってしまうのです。どうか哀れと思召すなら同行の許可をいただけないでしょうか。この子の幸せの為に、そなたの妾でもよいから側に置いてやってはいただけないでしょうか。」

と言われてすがられた、(巨人族はでかい、すがられると言うより潰されたので)同行の許可を与えた。

 父王のアナトスは

「土産になるものなど何も無いので、巨人族の男性兵士10名、女性兵士10名を与えるので連れていってくれ。」

と言う、男性兵士の平均身長4メートル80、女性兵士の平均身長4メートル60

その兵士達が膝をついて臣下の礼をとる。

 壮観だ!俺は、「諾。」としか、答えられなかった。

 帰りの食料を馬車に詰める。サクラコ様とウメコ様は、どこからか3頭の馬を連れて来て、俺に馬具を作らせる。サクラコ様とウメコ様それにユキナが馬具を使って3頭の馬に乗って出発する。

 途中のヤシの実の生えたオアシスに到着する。サクラコ様とウメコ様は世界樹のヤシの木の精霊『パルマエ』様を呼び出す。パルマエ様は、アラビヤンナイトに出てくるような赤色の踊り子の服装をした女性だ。サクラコ様達はパルマエ様に

『ヤシの木の実の媚薬効果を無くしてくれないか。』

とお願いする。パルマエ様は

『妾も連れて行ってくれるなら考える。』

と言う、サクラコ様達は俺を見るので、「諾。」と答える。エクスは面白くなさそうな顔で俺を見る。パルマエ様はニコニコしながらヤシの木を枝にして、世界樹の枝を差しヤシの木にする。

 その日は、オアシスで体を洗い、安心してヤシの実のジュースを飲む。俺の舌には媚薬を感じなかった。

 夜半過ぎに、エクスとユキナが俺にしがみついてくる。ヤシの実の匂いが甘く漂う、エクスが俺の口に舌を入れてくる。ピリとする媚薬を感じる。パルマエ様がニコニコしながら上空から俺達を見ている。2人を抱えて誰も気づかれない場所まで転移する。

 仕方が無いので・・・!いや、据え膳食わぬは何とやらで・・・!2人と肌を合わせた。

 何食わぬ顔で早朝転移して戻る。2人とも嬉しそうにしている。

 オアシスを出て砂漠地帯を歩く、赤い大地が続くなか、行くときにも見つけた、前世のオマーン国にあるサラーラの乳香の木のような木が生えている。

 サクラコ様とウメコ様、パルマエ様が

「香木になる木だ。ここには世界樹の乳香の木は無いようだが、何本か持って行ってもよいぞ、妾達が育ててやるぞ。」

と言うので乳香の木を4本ほど持って行く事にする。

 砂漠地帯を抜けて、草原から森林地帯へと変わる。先頭を歩く巨人族の男女の兵士20名が歩くだけで道が出来ていく。 

 北の巨人王国城から約1ヶ月セバスチャン領に入り道が良くなる。

 セバスチャン領の温泉旅館で休んでもらおうと思うが・・・!皆大きすぎて宿の部屋が壊れそうだ‼野宿をしてもらう。巨人族が広いプールのような温泉に入ると普通の人が入る風呂のようだ。まあ~温泉だけでも喜んでもらえてありがたい。

 ただ、タオルが小さな手拭い、大きな布団の毛布がタオルになった。規格外の大きさだ!巨人族はあまり羞恥心が無いのか、布団の毛布をタオル代わりに渡すまで、男も女も裸で歩き回られるのには閉口した。

 セバスチャン領からクリフォード領まで蒸気機関車でいく。巨人族は客室には入れないので、無蓋の貨物車に6人一組で乗ってもらった。荷物等も含めて有蓋、無蓋を含めて貨物車が10両、客車2両で出発した。1日、約15時間かけてクリフォード領に着いたが、巨人族は乗り物酔いでぐったりしている。この日は食欲もなく直に寝た。

 翌日も、クリフォード領から帝国城まで蒸気機関車だと言ったら巨人族は歩いて行くという。乗り物酔いに強いのか母親のトリアナとユキナは双子の赤ちゃんの面倒を見ながら蒸気機関車行くことになり、クリフォード領から帝国城までの道案内をアクシャがすることになった。

 俺達は先行して帝国城に入る。帝国城内には巨人族のアックスとアクシャ夫婦が泊まれるような部屋を4部屋確保しているので。1部屋に母親のトリアナと双子の赤ちゃんに入ってもらった。

 サクラコ様とウメコ様、パルマエ様から桜の木や梅の木、ヤシの木を世界樹教の社殿近くに植えるのは、アナトス達巨人族が帝国城に来てから行う事にしてくれと頼まれた。

 俺は北の巨人王国領から戻った事の挨拶の為に世界樹の前で額ずく。何やら世界樹の中から俺の子供達の声が聞こえてくる。しばらくすると世界樹の中から子供達が出てきた。

 俺を見た子供達は俺に抱き付きながら、子供達は世界樹様に

「三人の天使達は母親達が持ってきた食事を食べないので、代わりに持って来て相手をしてやってくれ。」

と頼まれたのが初めだそうだ、子供達は口々に

 アンナの義理姉アマハさん達の羽が折れていたので、お父さんが天馬さんの羽を治したのを思い出して天馬さんに聞いて羽を治してあげた事。

 その時から子供達皆が治癒魔法を使えるようになった事。

 今は、アンナ母さんが昔使っていた、ひらがなの積み木で遊んだり、絵本を読んだりして遊んでいる事。

 アンナお母さんやお母さん達に会いたくないのは、以前アンナに酷いことをして反省しているが、なかなか声に出して謝れない事。

等と話してくれた。子供達にお礼を言って引き続き三人の天使の世話を頼んだ。

 その日は俺の妻達とユキナを含む8人で夕食を食べながら各々の近況の報告と、巨人族のユキナを嫁に迎える事などを話した。土産に持ってきたヤシの実のジュースを飲んだ。皆の飲むジュースを一口づつコップに入れて味見したが媚薬は入っていなかった。

 それだけ注意したのに、夜半過ぎにヤシの実の匂いをさせて、妻達が俺の布団に入ってきて俺に絡みつく後は・・・ご想像のとおり。

 俺は今度行く南の巨人王国領の土産の斧と戦斧10本ずつ20本を作っていた。

 俺達が帝国城に着いてから12日後、アクシャがアナトス達巨人族を連れて来た。


 

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