第30話 南の巨人王国へ
俺が帝国城に戻ってから12日後、アクシャがアナトス達巨人族を連れて来た。
アナトス達巨人族と帝国城内の最大の部屋、謁見室で歓迎会を行なった。それでも狭く感じる。
翌日、世界樹の社に赴く、大きく作った社だが巨人族全員が入ることが出来なかった。
クーナ叔母様が大麻(おおぬさ:榊の枝に紙垂⦅しで⦆をつけたもの)を持った巫女姿になり、エルフ族の巫女や俺の娘達も巫女見習の姿でその後に控えていた。
クーナ叔母様が大麻をふりながら、
「新たな世界樹様の眷属をここに迎え入れ、この世界の統一と永久の繁栄を、子宝に恵まれ、我ら子孫の繁栄を。」
と声を出して祈る。
世界樹の中から神々しい光が輝き、世界樹の女神様を先頭に、西王母様、アトランティ様と続く。
その後ろに桜の木の精霊のサクラコ様は桜の枝を持って、梅の木の精霊のウメコ様は梅の木の枝を持って、ヤシの木の精霊のパルマエ様はヤシの木の枝を持って続く。
更にその後ろから嫦娥は琴を、姮娥は笛を持って続いて現れる。
嫦娥は琴を、姮娥は笛を鳴らし始める。その横に娘達巫女見習も並び琴や笛、太鼓を嫦娥と姮娥の琴や笛に合わせてかき鳴らし始めた。
サクラコ様とウメコ様、パルマエ様の持つ枝が光り輝きはじめると、桜と梅の枝は、社の反対側の美術館前に、ヤシの枝は、温泉旅館内の露天風呂のそばに、それぞれ光り輝きながら飛んで行きその場に降りるとみるみる生えていく。
三本の木はそれぞれサクランボと梅の実、ヤシの実を実らせるほど大きく育つ。
三本の木が大きく育つと、世界樹の女神様から世界樹へ戻っていく。
社をもっと大きなものにするか⁉ダイスケを呼んで大学の建築学科等で設計のコンテストをするように命じる。
俺は22歳になる。まだ、魔力量もそうだが身長が195センチと伸びた。
南の巨人王国に赴くことにする。アクシャと話をすると、アクシャも南の巨人王国の王の娘で、故郷に里帰りということもあり、旦那のアックスと3歳児なった双子の兄弟の顔を一緒に見せに行きたいし、行かないと何かと問題が起こるという。
北の巨人王国王アナトスと相談すると、次男のアキレスと交代させる、以前見せた転移魔法が使えないかと言われる。
アキレスの身長4,8メートル普通人の約3倍強、いくら俺が魔力量が増えたとはいえ、俺とエクスだけではとても無理だ。世界樹様に手伝ってもらおうと祠の前で祈ると子供達を使えと言われる。
一度俺とエクス、子供達とで手を繋ぎ世界樹教の社から帝国城に転移してみる。転移が成功する。アンナの娘のアフロディーテが俺の転移場所のイメージを皆に送り、シオリの息子のタロウが転移魔法のイメージを送り共有することで、転移魔法を成功させたようだ。
翌日、俺の贈った鎧兜に身を包み、大きな斧を持ってアキレスが現れた。
北の巨人王国王城内の中庭、祠をイメージするそのイメージがアフロディーテを通じて共用される。俺の転移魔法を発動するとタロウが転移魔法のイメージを共用し、北の巨人王国王城内の中庭に転移した。
中庭で斧を振って鍛えていたアックスが俺達に気付く、アキレスがアックスと交代だと話す。交代は明日と言うことで子供達がアックスとアキレスを引き連れて城下街を探検しに行った。元気だ!俺もエクスと手を繋ぎ後ろから歩く。
翌日アキレスと別れの挨拶をして帝国城に転移で戻る。
翌日、南の巨人王国に向かうことにする。エクスは妊娠からか体調が悪くなってきたと言い、他の嫁達も妊娠したらしい。
南の巨人王国では多数の種族がいるので、魔族のエンマ様が同行する事に問題が無いと同行する事になった。
他の同行者として、地竜と俺の子供達が是非冒険がしたいとすがられたので許可した。エルフ族の巫女、北の巨人王国王アナトス一家と巨人兵20名も同行したいと申し出てきた。
天馬と天馬姉、天馬の子供4頭は南の巨人王国に着いた時に合流すると言って飛んで行ってしまった。馬車だけ蒸気機関車に積んだ。
帝国城からグランドール辺境伯爵領までは蒸気機関車で1日程だが。アナトス他巨人族が乗り物酔いになると嫌がった。
列車の乗り心地等については、カイやソウジの天才グループと息子達の同世代に入学した子供達の中にも優秀な子が多く、武骨な蒸気機関車からかなりスマートな蒸気機関車を共同で設計製造し、客車や有蓋や無蓋の貨車に板バネを取り付けて乗り心地を格段に上昇させた。
無蓋の貨車10両を巨人族が快適に乗れるように客車のように座席も改良して、雨風が防げるように天井の高い有蓋貨車にした。
その改良した巨人族専用貨車で帝国城から住居地区までの間を乗ってもらった。
この巨人族専用貨車は好評であった。
南の巨人王国から戻ってくるまでの間に、貨車の天井を高くしたことによるバランスの悪さや、乗車時の快適さを更に高めた巨人族専用客車を作ることにした。
次の問題は、帝国城から直接グランドール辺境伯爵領行の列車が走っていないことである。前世で世界最大の湖、カスピ海(日本の本土並み)ほどの湖が目の前に広がっているからだ。
魔王城を攻略し傘下にしてしまえば、近距離で迂回することができる。今のところは、湖竜を呼んで筏で渡り、元世界樹のリンゴの木の前に作った駅舎からグランドール辺境伯爵領に向かって列車を走らせている。一日一往復している。
湖で俺は湖竜を呼ぶ、湖竜は人型になれる半神の地竜を見て驚いている。
「湖竜の子湖竜を海まで、また10頭連れて行って欲しい。」
と頼まれる。子湖竜10頭は貨物車の1車両をプールにして運ぶ事にした。
湖竜から
「乱暴者の地竜をよく手懐けましたね!」
と思念が送られた、それに気づいた地竜に睨まれていた。
列車の旅は1日でグランドール辺境伯爵領につきそこで1泊する。
子湖竜を海竜に渡すとき、地竜が海竜に話して、海竜が筏を引っ張って南の巨人王国まで連れて行ってくれることになった。
グランドール辺境伯爵領で古い丸木船のような漁船を4艘をもらって、船と船に板を渡して繋げて筏にする。
息子達の同世代に入学した子供達の中にでも特に優秀な天才児グループの4人が船の大型化の研究をしに港町のグランドール辺境伯爵領まで来ていた。その天才児4人は俺の筏の改造を食い入るように見ていた。
彼らもこの航海に参加したいと言って筏に乗り込んできた。
筏の基礎となった丸木船の中に、食糧や土産の斧や戦斧を入れる。船と船を板を渡して繋いだことから前世の航空母艦の飛行甲板のようになった。その飛行甲板に住居を作る事にした。この住居はいざというときは、そのまま救命艇になるように気密性を持たせた。
もしもの事を考えて巨人族用の大きな浮き輪も人数分作った。
海竜を呼んで、大型にした改造筏を引っ張ってもらう。海竜には南の巨人王国まで3日程で着くと言われた。
予定道理の船旅いや筏旅で、海竜に引っ張ってもらって3日で南の巨人王国の漁村に着いた。漁村の状態から文化程度は縄文か弥生時代かかなり低いようだ。
住民の持っている槍か?銛か?エルフ族の出会いの時と同じだが石器時代だ!
アナトス一家が、俺の贈った金属プレートの鎧に身を包んで船の舳先に立つ。村の長老らしい腰の曲がった老人が
「何用で参った?」
「我は北の巨人王国の王アナトスである。我が主国の世界樹帝国の皇帝カール様が南の巨人王国の王アログロス殿と友諠を結びに来た。」
「よかろう、そのまま進んでくるがよい。」
引っ張ってくれていた海竜が離れていく。俺は巨人族に筏の中央にマストを立てさせ、そこに帆を張り船を進ませる。天才児グループの4人がそれを見て何やら話し合っている。
筏をそのまま砂浜に乗り上げる、筏を海岸線に生えているヤシの木に縄をかけて固定する。
巨人族の男女の兵士達20名が筏から降りて2列縦隊をつくる。
彼らも金属プレートの鎧を着て、ヘルメット型の金属製の兜を被り、右手に戦斧、左手に盾を持つ。金属プレートの鎧や兜が太陽の光が反射する。
その後ろに北の巨人王国王アナトス一家が並ぶ金属プレートの鎧にはドラゴンの紋章を付け肩から青色マントを下げる。
アナトスが世界樹教の紋やエンマ様やシオリの簪の紋を見て、紋を作りたいと言うので俺とアンナが意向を聞いてドラゴンの紋章を作った。
その後ろにアックスとアクシャ夫婦と双子の兄弟だ。アックスが双子の兄弟の乗る乳母車を押す。乳母車には双子の兄弟が持てる戦斧が立てられている。兄弟は革の鎧と兜を被る。鎧と兜にドラゴンの紋章が押されている。
俺はここまで飛んできた天馬姉に跨り、エンマ様は天馬に横座りに乗る。俺の子供達と同級生の天才児4人グループが天馬の子供の引く馬車2台に分乗する。
俺達が出発しようとすると、南の巨人王国の王アログロスが、ドスドスと足音高く現れた。
彼のいでたちは、北の巨人王国に着いた時の巨人族のいでたちとほどんと変わらず革の鎧と革の額の汗止め、革のサンダルを履く。右手には大きな戦斧を持つていた。戦斧は北の巨人王国のものより劣悪だ!
王が名乗ろうとした時、同行している娘のアクシャを見つけると泣きながらいきなり抱き付こうとした、アクシャが抱き付こうとする王の勢いを利用して投げ飛ばす。(あちゃ~、外交が!)
王の後からアクシャとよく似た、母親と思しき女性と姉と思しき女性が3人の子供を連れて来た。
アクシャの母親はエオリヤと言い、姉はアクシスと言う、姉の旦那は狩の事故で亡くなったそうだ。子供3人は姉の子で一番上が女の子で、下が男の子が二人だ。
いかにも武骨な南の巨人王国城につき土産の斧や戦斧を渡す。その日は歓迎の宴会が行われた、今までの武骨で重いだけの石や鉄の斧や戦斧より、北の巨人王国同様に俺の持ってきた繊細だが力強く切れ味抜群な斧や戦斧は好評であった。
また、今回は清酒を10樽持って来て、巨人族の体に合わせてガラスの徳利や御猪口を作って飲ます。この清酒も気に入られたようだ。
女性達には色鮮やかな絹や麻が気に入り、来た時に着ていたアクシャのマントの赤色やアックスの母親のトリアナの青色マント。宴会に着ている二人のドレスを見て、同じようなものを欲しがった。
中々和気あいあいと宴会が進んでいった。北の巨人王国の国王アナトースと南の巨人王国の国王アログロスが俺の前で膝をつき臣下の礼を取り二国が世界樹帝国の傘下に入ることを宣言した。
翌日、俺は世界樹教南の巨人王国分社を王国城からほど近い岬の先端に設けることにした。
当日の参加者は南の巨人王国の国王アログロス一家、その主だった家臣、今回の同行者である北の巨人王国の一族、エンマ様や俺の子供達が集まった。
一緒に来たエルフ族の巫女が世界樹の枝を捧げ持つ、その後ろに俺の娘達が巫女見習の姿で楽器を持って続く、娘達がエルフ族の巫女を中心に半円を描くように座る。娘達が演奏を始める、エルフ族の巫女が世界樹の枝に拝礼後、その場に額ずき世界樹の枝を地に置くと、置かれた世界樹の枝が神々しく光り輝きながら祠を形成していく。
祠が完全に建築されると、その扉が開き中から世界樹の女神様達が現れる。最後に嫦娥と姮娥が笛を吹きながら現れる。世界樹の女神様が
『この世界を統べるをのこが現れた。皆このをのこに従えば栄耀栄華を約束しようぞ!』
嫦娥が世界樹の枝を2本を俺に渡すと、光り輝きながら世界樹の女神様達が祠の中に静々と戻っていった。
参列していた人々が首を垂れたまま微動だにしない。そこだけ時が止まったようだ!
俺は世界樹の枝2本を持って風魔法を使って飛び上がる。2ヶ所輝く木が見えてきた。
遠い方の輝く木に向かう。そこには、ヤシの木の精霊のパルマエ様と同じようなアラビヤンナイトに出てくる黒色の踊り子のような服装をした女性が香を焚きながら座っていた。その女性は
『妾は、乳香の木の精霊のボスウェリアである。世界樹様のもとに連れててくれないか?』
と言うので、世界樹の枝を渡す。ボスウェリア様は乳香の木を枝にして、その場に世界樹の枝を置くと乳香の木が生えた、ボスウェリア様は小さくなり俺の右肩に座る。
もう一方の輝く木に向かう、そこには、サクラコ様とウメコ様同様に巫女の衣装を着た女性が佇んでいた。その女性は
『妾が、榊の木の精霊のサカキです。』
と名乗る、俺は世界樹の枝を渡すと、榊の木を枝にして、その跡に世界樹の枝を置くと榊の木が生えた、サカキ様も小さくなり俺の左肩に座る。
俺は南の巨人王国の祠の前に戻る。
すると、止まっていた時が終わり参列者が動き出す。
しかし乳香の木の精霊様のボスウェリア様と榊の木の精霊様のサカキ様が神々しく輝く姿を見て参列者は動きを止める。
二人の精霊様達が祠の横に乳香の木と榊の木を植える、その木があっという間に育ち神々しく輝く。
それを見てさらに深く参列者は首を垂れた。
儀式も終わり、俺達は帝国城に戻ることにする。
南の巨人王国の王アログロスも北の巨人王国と同様に
「土産になるものなど何も無いので、巨人族の兵士男性10名、女性10名を与えるので連れていってくれ。」
と言う、男性兵士の平均身長5メートル10、女性兵士の平均身長4メートル80
で、その兵士達が膝をついて臣下の礼をとる。
その兵士も連れていくので、また漁村で船をもらって、船をつなげて筏にする。前の改造した筏の後ろにロープでつなげて行く事にした。
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