第27話 レベッカの義理母様、それに 嫁が増えた!

 戦力が充実してきた。機関車に大型の石弓、バリスタを載せた列車が走る。戦時にはバリスタを大砲に取り換えるというのだ。

 銃器の発達は前世でも戦争の形態を大きく変化させたからな!

 まだ、人口比的に圧倒的に魔王軍の方が優位だ、その解消にと思うのだが⁉

 住民用の拠点にも、住民を守るため城が作られた。城は、平時は行政と司法関係の役所で、有事に際しては住民の待避所となる。

 住居を取り囲むように城壁が作られ、そこに塔が何か所か作られている。塔は円柱型で塔の上部には大砲が取り付けれるようにしてある。通常は塔の内部に砲を立てた状態で収容されており、非常時には塔の上部にせり出して、塔の中央に固定し、塔の外円に沿って砲身が回転する。

 住民用の拠点に視察のため訪れた俺と同行していた嫁のレベッカは城に泊まることにした。

 夜、城の展望台に登る、持ってきた天体望遠鏡で星を見る。今日は星がきれいだ。横に護衛の為にいたサルが望遠境も使わないのに

「女性ばかり30名程か、子供が多く、最後尾に5歳位の子供を連れた女性が後方から追いかける魔王軍に対して時々牽制に火魔法を放っております。」

「本日同行して来た、近衛20名がキリガクレの指揮のもと、女性達を保護するために出発しました。私も忍者衆を連れて向かいます。」

俺はサルに出撃の許可を与える。

 今日俺と、同行していたレベッカも女官部隊20名を指揮のためサルに続いて展望台から降りていく、レベッカも槍を持ち完全武装で騎乗の人となり出発する。

 俺の横にいた守備隊の当直隊長が非常時の鐘を鳴らす。第2種の非常時の鐘で大砲でなく、バリスタを設置する。

 彼は伝声管に向かって

「敵襲、敵襲、総員配備、魔王城方向、要救助者30名救助に向かえ!」

と更に鐘をならす。当直隊長はクリフォード領で風呂場で俺がのした丁稚君だ。

 守備隊長が駆け上がってくる。丁稚君が逃げてくるという方向を指差した。全く裸眼では見えない距離だと思った時「チカッ」と魔法の火が光る。今でもやっと見える距離だ、丁稚君、俺の方を見てニャと笑って敬礼する。守備隊長も俺に気づき敬礼する。俺は答礼しながら、

「俺達の結婚式などでの恩赦か、しかし昇任が早いな。ところで見えたか?」

丁稚君

「カール様の部下が見えたと言っていたので、見えたのでしょう。遅れるより早い方が良いでしょう。失敗しても怒られるのは私だけですから、それでは、私も救出に向かいます。隊長、後はよろしくお願いします。」

と言って駆け出していく。しばらくすると、また「チカッ」と魔法の火の光がかなり近づいて見える。丁稚君が凄い勢いで何人かの部下に大型のバリスタを馬に引かせて城門近くに移動する支流の川幅は30メートル、城門から可動橋が川にかかっている。その可動橋の城門側にあるトーチカに向かって走っていく。

 今度は城のかなり近くで火の光が見える。魔王軍側に風魔法を使う奴がいるみたいだ。魔法の火が横に流れる。

 魔王軍がかなり近づいて来た、最近は俺達、世界樹帝国をまねて鎧に紋章をつけるのが流行っている。鎧の紋章から第一大臣の部隊だ。

 どうやら、女性達をこの城の見える所まで追い込み、見せしめのために殺戮するつもりだ。

 魔王軍の誤算は近衛や女官部隊が騎馬で移動していることだ。

 魔王軍が女性達を追い込み囲むはるか前に、近衛とレベッカの率いる女官部隊が、ほとんど子供ばかりの女性達と合流する。

 近衛や女官の中で土魔法を使える者が土塁を作り、残りの近衛や女官が馬から降り出来た土塁に身を伏せ石弓を構える。

 俺も身体に魔素を纏わりつかせ城門から可動橋を渡る。その際丁稚君にバリスタを前進するように命令する。

 俺は女官や近衛の部隊に合流し土塁を強化して仮設砦にしていく。

 俺とレベッカは仮設砦から出てさらに前に出る。レベッカが女性達を守るため最後尾で火魔法を放っていた女性を迎え入れる。その女性の横には剣を構え不敵な面構えをした5歳位の男の子がついて来た。レベッカがその女性を見て

「お義理母様よくぞご無事で...!」

「レベッカなの、ありがとう助かったわ、夫が城を脱出した時、私は臨月で魔王城の城下街にある実家にいて、一緒に脱出できなかったの。この子は貴方の義弟で名前をレオナルドというの。」

 俺とレベッカは義母達を仮設砦に入れる。その間に丁稚君が大型バリスタ5門を仮設砦に持って来て設置していく。

 俺は、木魔法で机や椅子を作り魔法の袋からクッキーを取り出して子供ばかりの女性達に食べさせる。魔法の袋から簡易のコンロと薬缶を取り出す。薬缶に茶葉を入れ水魔法で水をだして沸かす。

 丁稚君はしばらくその様子を見ていて、副官にしばらく現場を任せ、城に向かって馬に乗って駆け出す。しばらくすると、簡易のコンロや水の入った薬缶、コップ、皿を持って戻ってくる。

 丁稚君は副官に命じて、コンロに火を付けさせる。丁稚君は俺に皿を渡して、俺から薬缶に茶葉を入れてもらう。丁稚君は助け出した子にお茶を配りだした。

 ふむ、このあたりが丁稚君の昇任の早さか。

 俺とレベッカ、レベッカの義母、レオナルド、魔王のヘンリケとヘンフリ兄弟とよく似た女性と戦場の最中にお茶を楽しむ。レベッカの義母クララが

「レベッカ本当に助かったわ、それと一緒に脱出してきた女の子達は、魔王城であのクソ魔王、ヘンリケに親を殺された子供達よ。この子は...」

と言って同席しているヘンリケとヘンフリ兄弟によく似た女性を見て

「この子は、あのクソ魔王、ヘンリケの実の妹でヘラーよ、この子、結婚式を挙げる当日にこの子の目の前で、ヘンリケ魔王が相手の男を殺して、実の妹をオモチャにしようとしたので、助け出して連れて来たのよ。その時、ヘンリケ魔王に手を貸して指揮していたのが、今追ってきている第一大臣よ。第一大臣は、私が子達連れだったこともあり、この15日程の間、猫がネズミをいたぶるようにして追ってきていたの、ヘラーは魔王城を出てから一言も話さないのよ。」

「ところでレベッカ失礼だけど、この方は?」

「御義理母様、カール様よ、私はエンマ様の養い子で、世界樹帝国の皇帝になったカール様と結婚したのよ。」

「ア~ラ!カール君だったの!レベッカがエンマ様付きの女官見習いになった時にレベッカの顔を見に行ったの、その時何度かカール君を見たことがあるは。

 その時からレベッカはカール君に首ったけだったのよ。

 そう、角が生えて、魔法も使えるようになったの、凄いわねカール君。

 おめでとうね、思いが通じて良かったねレベッカ。」

等と言われてレベッカが真っ赤になっている。

 お茶を飲み、道具をかたずけ終わると。住居側の城で、支流の川を挟んだ対岸の小高い丘に魔王軍が走竜と呼ばれる大きなトカゲ20匹と、その後ろに槍を持った兵士200名が整然と並ぶ。

 魔王軍は大声を上げて、士気をあげて突撃の準備に入る。俺は

「対応準備、第1射はバリスタを発射、第2射は女官部隊が石弓を一斉発射、第3射は近衛隊が石弓を一斉発射。その後、あと1回同じことを繰り返す。2回目のバリスタ隊発射後撤退準備、2回目の近衛隊が石弓発射に合わせて撤退を開始。以下の指揮はレベッカがとる。殿は俺一人でやる。」

と命令を下した途端、魔王軍に突撃命令が下る。

 走竜がドスドスとトカゲ独特の走り方で、魔王軍兵士の槍に追い立てられるようにして仮設砦に向かって来る。

 バリスタが発射される。大木の矢が走竜を貫く、女官部隊の石弓が発射され、すかさず続いて交替した近衛隊の石弓が走竜を追い立てる魔王軍兵士に降り注ぐ。

 魔王軍の中から魔法使いが風魔法を使う、多少矢が風で流れるが弓勢が強く、次々と魔王軍兵士矢が突き刺さる。

 バリスタで倒された以外の走竜は、仮設砦の前に築いた土塁を蹴散らす勢いで近づいてくる。土塁の手前で土が弾ける。ピーンとワイヤーが張られる!

 残った走竜達はいきなりな事で、ワイヤーを飛び越えることもできず。次々と前足や四肢をワイヤーで切断され地に沈む。走竜20頭すべてが倒れる。

 次のバリスタの再射は走竜ではなく、後ろから追い立てる魔王軍兵士に大木の矢を発射する。俺は撤退をこの時点で中止し、暫時攻撃続行を命じる。

 俺は風魔法を使おうと魔素を集めて輝いている、黒いフードを被った魔法使いを3人見つける。俺は短距離転移を使って魔法使いの後方に周り、1人、2人と小型の石弓で倒していく。それをクレナイやキリ達が身柄を確保していく。

 戦いの趨勢が決まった。魔王軍は半数以上が倒されて撤退を開始した。大臣が真先に逃げ出した、大臣までは遠いか!

 俺は追撃戦を許さず、レベッカの義理母様や子供ばかりの女性達の保護を優先し彼女等を連れて城に戻る。

 サル達には魔王軍が完全に撤退するか確認させる。

 魔王軍との交戦と聞いて、エンマ様とシオリ、アンナが特別に蒸気機関車を仕立てて走らせてくる。将兵だけでなく、大学校から医学系の医師や生徒、治癒魔法を使える者を連れて来た。今回エクスを連れてこようとしたが体調が悪いと世界樹教の付属病院で寝ていて来なかったという・・・心配だ!

 レベッカの義理母様のクララとシオリの義理の妹ヘラー以外は子供ばかりなので学校に入学できるから、エンマ様とシオリ、アンナが名前と健康診断を行い学校の寮に入ってもらう特に衰弱しているだけで病気の者はいなかった。

 レベッカの義理母様のクララとシオリの義理の妹ヘラーは寮長の部屋が空いているのでそこに入ってもらい。今後の事を考えてクララに寮長を、ヘラーを副寮長に任命した。

 城前の広場には、魔王軍の負傷した将兵62名と走竜20頭が集められる。

 魔王軍将兵のトリアージをしていく、黒色(不処置群)12名、赤色(最優先治療群)30名、黄色(緊急治療群)20名、緑色の者が10名程いた。

 赤色の判定者から治療をエンマ様等が連れて来た医師や生徒、治癒魔法を使える者が治療を始める。この世界で敵兵を治療することは無い。

 ところが、何を勘違いしたのか緑色のグループで貴族らしい阿保が

「わしを治療せんか!そんな兵士など治療の必要は無い!」

と喚いている。俺はシオリを連れてくると、第一大臣の次男だと分かったので、拘束して地下牢に放り込んだ。赤色が終わり医師等が黄色の群に移る。

 残った医師等に走竜の怪我を診てもらう、魔獣の治療など嫌だという者が多いが、エンマ様とシオリ、アンナが

「これだけ大きい動物の切断面なら接合の練習となり、今後の為にも行った方が良い。」

と説得する。走竜のトリアージをする。20頭中8頭が黒色、残り12頭すべて赤色だ。シオリが執刀し俺とアンナが補助をする。

 この世界では治癒魔法のみで怪我の治療していたのが、縫合手術をこの世界に持ち込んだ第一人者が手術をするのだ、他の皆が手を止めて見学に来る。

 大腿骨等の骨折粉砕箇所を死んだ走竜の骨を使って治療魔法使って接合し、筋肉や血管、神経を縫合し、皮膚の欠損ヶ所も死んだ走竜のものを使い縫合し、治癒魔法をかけ、傷薬を塗り添え木をして晒しで固定する。

 魔王軍将兵の黄色の群の治療が終わった医師等も加わり、残りの走竜の治療を始める。

 治療の終わった魔王軍将兵を地下牢に入れ、俺はエンマ様とシオリ、アンナと一緒に、走竜12頭を蒸気機関車の貨物車に載せて馬や牛の拠点に運ぶ。

 運び終わってから、世界樹教の病院に入院しているエクスを見舞う。

 病室内にいた息子達が俺を睨んでいる?息子達が約束を破っては駄目だと怒っている⁇息子達は

「お父さんは、エクスちゃんに助けられた時、エクスちゃんが10歳になったら結婚を約束したはずだ。たとえ、エクスちゃんだけが言ったとしても、ちゃんと返事をしていなければ、それは約束したも同じだ。」

と言って俺をなじる。

 息子達に返事も出来ない俺を哀れと思ったのか、世界樹様と桃の木の精霊の西王母様、リンゴの木の精霊アトランティ様が現れて、俺とエクスを世界樹のむろに連れていく。俺とエクスは裸になっている。世界樹様達3人は

『世界を統べるをのこよ約束を果たせ。亜人の王女エクスを嫁とせよ!

お前たちの愛が妾達の力となる!この地からの繁栄を約束する!そのめのことまぐわえ!その感激が妾達の力となる。』

俺は、エクスと愛情と感激の中で肌を合わせていく、そのたびに世界樹や桃の木。リンゴの木が脈動する。エクスと肌を合わせ、めくるめく快楽の時を過ごす。世界樹様達3人が

『妾達の力となるそなたらよ。そなたや妾達の力となる子種がはぐくまれた。』

俺とエクスが病室に戻ると、息子達が

「エクスちゃん、お父さんのお嫁さんになれたんだ!おめでとう!ヘェ~!エクスちゃんのお腹に僕たちの弟か妹がいるよ!」

と言って喜んでいる。エンマ様やクーナ叔母様が結婚式の準備をしなければと頑張り始めた。

 俺はクレナイ達に確保しておくように命じた風魔法使い達を忘れていた。

 

 

 

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