第25話 グランドール辺境伯爵領へ

 俺達はセバスチャン領主の館の地下牢から助け出せたのはセバスチャン領主の家族5人と元書記官の息子コウデイの姉ユリアナだけだった。

 ユリアナは幸運なことに5体満足だった。コウデイとユリアナは俺に臣下の礼をとった。

 セバスチャン領主も俺に膝をついて臣下の礼をとるが⁉妻を始めとして他の家族が反対する。

 セバスチャン領主が押し切って家族一同も臣下の礼をとった。

 俺は、呪われた地である領主の館の封鎖と立ち入り禁止を行った。領主の館内のゾンビ化した人々は治しようもないので、屋敷事火葬した。

 俺はクリフォード領と同様に、俺とエルフ族の巫女とで鎮魂もかねて、焦げたセバスチャン領主の館で世界樹教の分社を作ろうとする。焦げた領主の館に入ってから世界樹の枝が呪われた地の影響か薄く黒ずみ苦しんでいるように感じる。領主の館から出ても今回はもどらなかった。

 俺は世界樹の枝の交換と、呪われた地の浄化の方法を調べる事、また食糧を提供し、セバスチャン領の飢餓状態を解消する為に一旦帝国城に戻ることにした。

 元書記官のユリアナ、コウデイの姉弟にセバスチャン領主の補助として残ってもらった。

 セバスチャン領からクリフォード領に向かう間に雪が降り始めた。クリフォード領主の街に着いた時、老人が厚着をして家族と別れの挨拶をしている。

 その50歳以上の老人が150人ほど集まって火山に向かって歩いていく行事に出会った。

 これは前世、昔あった姥捨ての風習か?クリフォード領主の街で話を聞くと姥捨ての風習に間違いなかった。

 俺は、慌てて老人を呼び止め、姥捨ての場所を帝国城にするように説得する。

 老人達を連れてくる。建設中の帝国城の議員宿舎の横に老人ホームを作ることにする。老人達でもできる紙漉や織物、縫製工場を併設した。特に老人の作る組み紐が後日、世界樹教の土産店での人気商品になった。

 当然今後、姥捨ての風習を止めさせることは直には出来ないだろうから、姥捨ての場所を帝国城の隣の老人ホームとするように風習を改めさせた。

 世界樹教の教祖セリナと巫女長のクーナ叔母様、エルフ族の巫女を交えて、呪われた地、セバスチャン領主の館に最初は世界樹の枝を持って入ると黒く変色し、呪われた地の影響からか、ゾンビ達を退治した後は館に入ると薄く黒ずみ苦しんで、同じ状態が続いている。これの対応策を尋ねるが、これまでにない事なので分からないと言われる。

 クーナ叔母様達と世界樹の前で座り額づき祈ると世界樹の女神様が現れて

『私の枝が苦しんでいるのを感じました。呪われた地の浄化には、世界樹の桃の木をそこに植える事です。世界樹の桃の木はクリスティの父親のクランドール辺境伯爵領内にある。探してみるがよい。』

 無駄話、確かに桃の木、桃は前世の中国では、仙果で邪気を払い不老長寿の実と言われ、また桃源郷と言う言葉もある。日本の古事記には桃を投げて鬼女を退散させたり、桃太郎の鬼退治の物語がある。閑話休題

 俺は、クリスティとその弟のクロスとクラウンの4人と行くつもりだったが、エンマ様とクーナ叔母様、エルフ族の巫女、エンマ様や俺にくっついているエクスとキリガクレ兄妹がついて行く事になった。

 クランドール辺境伯爵領に行く前にセバスチャン領に食糧を載せたそりを馬に引かせクリフォードさんの息子のクリフとクルスの兄弟が搬送する。護衛は双斧将軍のアックスだ。

 俺は食糧を搬送した後、グランドール辺境伯爵領に向かう、グランドール辺境伯爵領は元の拠点の二股に分かれる大河の左側を下って海岸近くだったはずだ。

 雪が降っているので、スキー板を車輪に取り外しできるように改造した4人乗り馬車2台と馬で引けるそり4台に食糧を満載して出発する。グランドール辺境伯爵領も食糧難だと聞いている。

 雪が降り始めると、天馬は雪が嫌いなので暖かい地域にある天馬の里に飛んで行ってしまった。残ったのは羽の無い天馬の嫁と子供達だ、天馬の子供達は力が普通の馬より数倍強いようだ。

 湖で湖竜を呼んで、筏で対岸にある世界樹のリンゴの木の生えている側から下流に下るつもりだ。

 湖竜を呼ぶと、湖竜が

『世界樹様から貴方達がグランドール辺境伯爵領に行くと聞いている。それならば、子供を連れて行ってくれまいか?』

と子湖竜5匹を任される。湖竜も天馬同様、近親相姦が続き子供ができにくく絶滅危惧種になっている。海に近いグランドール辺境伯爵領まで子湖竜を連れていき、湖竜の同種族の海竜と交配させたいそうだ。湖竜の子供用のそり5頭を更に加えた。クレナイも行きたいとついて来た。

 帝国城からグランドール辺境伯爵領まで直線距離で約1千キロメートル、歩いておよそ1ヶ月、馬だと2週間以内に着く予定だ。

 世界樹のリンゴの木の生えた側からグランドール辺境伯爵領に向かう。一部凍った滝を横に見ながら川沿いをくだって行く。この滝をくだったところから筏を作り川から支流が流れ込んだ大河をくだっていくつもりだ。

 馬車の中はキャンピングカーのように座席をベットにして1台で4、5人が寝られるようになっている、馬車1台には女性陣5人が寝てもらい。もう1台には男性陣4人が寝る。馬車と馬車の間には食料用のそりなどを固定した。馬13頭は筏に乗ったり大河沿いを歩いたりしている。

 子湖竜は大河を泳いで行く。流れの緩い場所では、子湖竜が5頭で引っ張ってくれる。夜はそりの中に入って寝ていることがある。その姿が可愛いですね!女性陣には受けている。

 滝から元拠点までくだってくる間、何か所か滝がある。その場所は筏だけ流し、馬車や馬で大河沿いをくだる。

 元拠点の対岸まで来た。ここからグランドール辺境伯爵領までは、滝が無かったので筏でくだった。帝国城からグランドール辺境伯爵領まで筏でくだったこともあり10日間でついた。

 グランドール辺境伯爵領城では、10日程前から海竜が騒いでいると警戒態勢を取っていた。それで筏で下ってきた我々を見とがめたが、グランドール辺境伯爵の娘のクリスティ、息子のクロスとクラウン兄弟を見て領主を呼びに行く、その間にグランドール辺境伯爵の領主城前の広場に連れてこられた。

 グランドール辺境伯爵は広場に出ると俺と同行しているエンマ様に気づき、膝をついて臣下の礼を取りながら

「エンマ様、ご無事で何よりです。娘がエンマ様付きになったと聞いた時から、臣下に加えてもらいたく、一日千秋の思いでお待ちもうしておりました。

 エンマ様の養い子のカール様が世界樹帝国を建国され帝王になられ、娘がカール様に嫁ぎ子をなしたこと、息子達もカール様の臣下になったとのこと。

 私も熟考のすえ、カール様の臣下の端に並ばせてもらいたいと思っております。

 しかしながら、わが家臣の者で反対する者がおります。その者はカール様と手合わせしてもらい、打ち負かされたら臣下になると申しております。

 よろしいでしょうかカール様?」

否やは無理か、俺は「諾。」と短く答えて愛刀を腰に差し直して、中央に進み出る。グランドール辺境伯爵は後ろに声を掛ける。

 後ろから出てきたのは、双斧のアックスにも勝るに劣らない身長を誇る大女だ。彼女も巨人族だ!彼女の鍛えられている腕には、戦斧、バトルアックスが握られ、兜の後ろから長い銀髪が白いリボンで縛られ、兜の顔面は耳と頬が隠れ、その間から鋭い目と整った鼻、引き締まった唇が見える。それだけでかなりの美人だとわかる。鎧は革製で女性らしい体形に合わせて作られており、所々鋲が取り付けられている。鎧には肩章の鋲で革製の大きなマントが止められ、鎧から伸びた引き締まった脚はサンダルとその紐が巻き付けられていた。

 彼女は戦斧女将軍アクシャと名乗ると革製の大きなマントを外してバトルアックスを構える。バトルアックスの斧の先端部は槍のように尖っている。彼女はまず様子見でバトルアックスで突いてみる。

 剣道で試合に勝つコツとして「打ってみようが負けのもと」「残して打つな、捨てて打て」「小出しで打つな、ためて打て」「危ないときは前に出よ」等と言われている。閑話休題。

 俺は、バトルアックスの突いて来たのに合わせて前に出る。斧と柄が続く部分、槍でいうと螻蛄首(けらくび)を右手で掴む。彼女はバトルアックスを横に振って、俺を転がそうとする。彼女の身長に半分も満たない俺がびくともしないので驚いている。俺は左手に棒手裏剣を取り出して、バトルアックスの柄に向かって振り下ろす。「ガキッ」という音と共に柄が折れて俺の右手に斧の部分が残る。

 彼女は、柄を回転させて石突で俺の頭部を狙ってくる。右手の斧で石突を防ぐ。

 そこで、彼女はバトルアックスの柄を放して片膝をついて臣下の礼を取る。

 グランドール辺境伯爵もその横で臣下の礼を取った。

 俺の配下領にグランドール辺境伯爵領が加わった。戦斧女将軍アクシャが臣下に加わった。

 俺は、湖竜に頼まれた子湖竜を海に放す事を説明して、河口から子湖竜を海に放す。海竜達が迎える。海竜の中でも一層大きな海竜が

『我が子を湖竜のもとにやる。そなたが戻る時は連れて行って欲しい。』

と思念が送られる。俺は、『諾。』と思念を送ると、海竜達は子湖竜を連れて海の中に消える。

 グランドール辺境伯爵に桃の木につて尋ねるが誰も知らないと言う。桃源郷か?

俺は、クーナ叔母様とエルフ族の巫女と世界樹の枝を持って探しに行く。エクスが俺に引っ付いてくる。

 クーナ叔母様が世界樹の枝を頭上にかざす。世界樹の枝が光り輝く、グランドール辺境伯爵領の領民達が驚き膝をつく、クーナ叔母様が世界樹の枝に引き摺られるように山に向かう、俺達はクーナ叔母様の後をついて行く。グランドール辺境伯爵領の領民達は膝をつき身動きが出来ないよだ。

 いきなり霧が湧きだす。クーナ叔母様が持つ世界樹の枝の明かりだけが淡く輝き道を照らす。唐突に周りの霧が消えるが遠くまでは見通せない、桃の木の隣に淡く輝きながら中国の天女、天衣をひるがえしながら女性が立っていた。

 その天女様に対しクーナ叔母様とエルフ族の巫女、エクスも膝をついて首を垂れる。天女様が

『この地は桃源郷、妾はこの地の桃の木の精、西王母なるぞ、世界を統べるをのこよ、妾を呪われた地に連れて行くつもりかや。ふむ、その程度なら妾の子、桃の木の枝でもよかろう、そうじゃのエルフ族の巫女よ我が主の世界樹の枝を渡せ。』

世界樹の桃の木が小さな枝になり、地面から抜け出し西王母様の腕に入る、西王母様は世界樹の枝を桃の木の生えていた後に立てるとたちまちもとの桃の木となった。

『妾の子、嫦娥と姮娥の二人を連れて行くことにするか。そなたクーナと申すのかそなたと巫女よ、この地にしばらく留まるがよい。』

周りが一気に晴れて山すそに俺達が立っていた。桃の木の前に神社風の建物と、横に社務所が建っている。西王母様が、

『そこでクーナと巫女が暮らすように。』

と西王母様が言って、さあ、まいるかと言いながら西王母様が

『木の精霊よ、土の精霊よ、グランドール辺境伯爵領城まで道を拓け。』

と唱えると、真直ぐな道が出来ていく。エクスが

「これ精霊魔法なの!失われた魔法ね、私もやってみる!」

といって、

「木の精霊よ、土の精霊よ、グランドール辺境伯爵領の港まで道を拓け。」

と唱える、細い道が出来る。エクスは悔しそうな顔をする。俺も

「木の精霊よ、土の精霊よ、グランドール辺境伯爵領の港まで道を拓け。」

と唱えると西王母様程ではないが、真直ぐな道が出来た。西王母様が

『そなた達は規格外だな!面白い獣人の子と、をのこだ。』

エクスは、尻尾や耳を変えているのに見破られて驚いている。後ろで嫦娥と姮娥が笑っていた。

 グランドール辺境伯爵領城に歩いて戻る。しばらくすると道がもとに戻る。俺は

『ウム~!何とかこの道が長時間保てないものか!』 

エクスも

「この精霊魔法の後に、普通の魔法を重ね掛けしたらどうなるんだろう?御主人様一緒にやってみる!御主人様が精霊魔法をかけて、私が土魔法を重ね掛けしてみる。」 

「木の精霊よ、土の精霊よ、桃の木のもとまで道を拓け。」

と俺が唱え、エクスが土魔法を重ね掛けをする。しばらく見ていると、樹木が生えてきて道が壊れる。俺もエクスも魔素切れだ。西王母様も嫦娥、姮娥も笑っていた。

 俺もエクスもグランドール辺境伯爵領の当日の歓迎を受けた。いつの間にか西王母様も嫦娥、姮娥も俺達の仲間だと思われたのか普通に歓迎会に参加していた。俺もエクスも魔素切れでフラフラしていた。エンマ様とのクリスティ姉弟が何とか取り持ってくれた。

 翌日出発しようとしたが、西王母様が馬車を見て

『妾にも、同じ馬車を作ってくれぬか?』

と言い出した。どうせ作るならとシンデレラの絵本に出てくるような可愛い馬車を作ろうと思い、和紙で図面を書いてから馬車を作る事にする。

 和紙や馬車を見て、技術を知りたいとグランドール辺境伯爵と長男のエスタークと次男のエクストスが帝国城について行くと言い出す。戦斧女将軍アクシャが護衛でついてくることになる。

 海竜の子海竜を湖竜のもとに連れて行く、途中の滝のことも考えて双斧将軍アックスに手伝ってもらうことにする。俺は転移で帝国城に戻る。セバスチャン領に食糧を運び終わって戻って来ていた、アックスにグランドール辺境伯爵領まで来るように伝える。

 雪の中を1ヶ月でアックスが着く、ちょうど西王母様用の馬車も出来たところだ。

 西王母様が精霊魔法で直線の道を作り、俺とアクスが土魔法や木魔法で固定する、今回は壊れない。海で海竜を呼び出す。2頭の子海竜の兄妹が湖竜のもとに行く事になった。

 俺達は馬車や馬に乗って帝国城に向かう。

 グランドール辺境伯爵と長男のエスタークと次男のエクストスは馬具にも驚いていたが1ヶ月の間ですぐ馬に乗れるようになった。

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