第22話 クリフォード領の街
街一番の宿屋で、エンマ様とノキザル、エルフ族の巫女が先に風呂にはいり。皆で食堂で夕食を取る。夕食を取るとき舌にのせると毒物、いや睡眠薬が入っているのが判る。サルもノキザルも気がつき、食事をとるふりをして胸に隠した袋に入れていく。
エンマ様もエルフ族の巫女も俺達が食事をとるふりをしていたことに気がつかなかったようだ、エンマ様もエルフ族の巫女も睡眠薬が効いてきたのか眠そうにしている。それで、エンマ様達を部屋に入れてサルと部屋に戻る、俺は
「眠くなったが、一つ風呂浴びてくる。」
とわざと声を大きくして風呂に向かう。
俺は以前、灰色熊を倒すときに使った棒手裏剣を持って風呂に入った。しばらくすると、扉のコトリという音がして脱衣所に誰かが入ってくる。
俺は棒手裏剣を握り直す。脱衣所から殺気が膨れ上がる。風呂場の扉が開けられ、覆面の男が手斧を振り上げて入ってくる。振り下ろされる手斧を体を開いてかわす、覆面男は手斧の重さでバランスを崩す、俺は覆面男の体勢が立ち直るまで待ってやるほどお人よしではない。
俺は棒手裏剣の尖った反対で覆面男の後頭部を手加減して叩く(やっぱり、お人よしかも・・・)
「グッ」
という声をあげて風呂の中に顔を突っ込んで倒れる。気を失っているので、水死するのも気の毒だと思い襟首を持って風呂から出す(やっぱり、お人よしだ)。その勢いで覆面が剥がれる。先程の商店の丁稚が顔を出す。丁稚の上着を脱がせて切り裂き、紐にして丁稚の両手、両足を縛る。
俺はエンマ様の部屋に向かうとノキザルがエンマ様とエルフ族の巫女をかばいながら、男なんと宿の従業員5人と対峙している。俺は男達がノキザルに気を取られているので、そいつらの頭も後ろから棒手裏剣で殴り倒していく。
俺は今度も上着を破って、男達の両手、両足を縛る。サルの部屋に行くと宿の親父と従業員の男6人が縛られて倒れている。隣の商品部屋で女将と女従業員5人が縛られて倒れている。サルは従業員の女の子の1人を尋問している。
ノキザルが後ろからついて来て、女の子の顔を見るなりその頬を平手で叩く。女の子は抜忍だそうだ。後はノキザルに任せる。俺は魔素を広げる、宿の従業員はもう居ないようだ。サルと風呂場に戻る。俺は頭を殴って意識のない丁稚を引き摺って街一番の商店に連れて行く。サルは陰に回って俺を援護する。商店の扉を開けると、その音に気付いたのか、店内の商品を磨いて後ろを向いたままオーナーが
「お~、待っていた。荷物を持ってきたか?チョイと年を取っているが美しい魔族の女性も連れて来たか?」
と言いながら、俺の方を向く。オーナーは俺と引き摺られてきた丁稚を見て
「ヒ~ッ、命、命だけはお助けを...!」
と言うので、俺は
「で、どうする?この丁稚とお前、宿の親父と女将と従業員どもを素っ裸にひん剥いて、街の真ん中にでも下げて飾りますか!」
『俺も悪よの~♪』
等と思っていると、オーナーが
「店にあるものは、全て持って行ってくれ、この事は内密に...!」
「分かった。オーナーそれでは、これも商談、こいつらと引き換えに何がいいですかね?そうだ、食糧で何か余っている物は無いですか?」
「分かった、分かった。食糧庫の鍵を渡します。食糧庫はこの街の南端にある屋根に大きな風見鶏のある建物だ。中の物は好きなだけ持って行って下さい。」
「よし分かった、オーナーそれでは一緒に行きますか。」
まだ伸びている丁稚を残して、渋るオーナーを案内させて風見鶏のある建物を目指す。風見鶏のある建物につき、オーナーに扉を開けさせようとするが、オーナーの状態が異常だ。額にひどい汗が吹き出す。鍵を持つ手が異常に震えて、鍵穴に鍵が入らない。俺は魔素を体に纏う、やっとオーナーが震える手で鍵を開け、目をつぶって扉を開く、俺はオーナーを抱えて大きく後方に飛ぶ。
思ったとおり、扉を開くと玄関付近が爆散して火が上がる。爆裂魔法だ!
オーナーを引き摺りながら建物から離れる、建物全体が油でも撒いてあったのかさらに激しく燃え上がる。オーナーは俺に引き摺られながら
「す、すまん、オーナーと言っても雇われオーナーなのだ。」
燃える建物の陰から、ハデナ服を着た若い20代前半の男が俺の愛刀を持ち、十数人の男を引き連れて出てきた。雇われオーナーがハデ男を見て
「オー、オーナー...助けて、助けてくれ。」
と言いながら俺の後ろに隠れる。(何故に?)
ハデ男の横の4人が魔力を上げて、火や水の魔法を次々とぶつけてくる。
俺は魔素を更に体に纏って、飛んでくる火や水の魔法を次々と殴り蹴とばしていく、魔法を使っていた男は、その非現実的な状況をみて顎が下がり口をあんぐりと開けて俺を見ている。そのうち1人魔法使いが火魔法の種類を変えてくる扉を開いたときに爆散した時に使った爆裂魔法だ、一度見てしまえば俺も使える。俺も爆裂魔法で対応する、俺は人差し指と中指で2連発する。まさか2発来ると思っていなかったので、魔法使い4人ともが爆裂魔法を食らって伸びてしまった。
魔法が止まるとハデ男が「ピーッ」と口笛を吹く屋根の上に5人が弓を持って現れる、ハデ男が手を振り下ろすと。そのうちの一人の男が、他の男4人を次々と射殺していく。その男は陰に回って俺を援護していたサルだ。
俺は、魔法攻撃が止まったので十数人の男に向かっていく。男達はそれぞれ得物を持って俺に切りかかる。俺は腰から両手に1本ずつ棒手裏剣を持ち、十数人の男の持つ得物を殴り折り、殴り倒す。
あっという間に十数人の男がうずくまる。
ハデ男は俺の愛刀を鞘から抜いて、鞘を俺に投げつける。俺はそれに合わせてハデ男の足元に棒手裏剣を投げる。ハデ男の足止めと、直接棒手裏剣を投げたのを愛刀で受けて刃こぼれさせたら大変だからだ。
俺は飛んできた鞘を取って腰に差して間合いをとる。ハデ男は愛刀を上段に振り上げて俺の頭目がけて振り下ろす。
俺は、親父や爺が
『小太刀は切腹の為の刀だ。もう最後だと思って相手の懐に思い切って入って、小太刀を使え。』
と言っていたのを思い出しながら、剣道形の小太刀の部一本目の要領で愛刀を受け流そうとするが、角度が浅かったのか棒手裏剣に愛刀の刃が食い込む、不味い今捻ると愛刀の刃が欠ける、下手をすると折れる。棒手裏剣の表面を愛刀が鉋で削るように切り裂いていく。
ハデ男が棒手裏剣の表面を削り終わると体勢が崩れる。小太刀の部一本目では小太刀を返して面を打つが、棒手裏剣を愛刀を持つハデ男の手首に向かって打つ。
ハデ男の手首から『ゴキ』という嫌な音がして、愛刀を放してうずくまる。
俺はハデ男が愛刀を手放したので、掬い取ると血ぶるいをして納刀する。
ハデ男は俺を見ながら
「貴様許さんぞ、俺はこの地の領主の息子だ。必ず、貴様を縛り首にしてやる!今に見ていろ!」
弱った坊ちゃんだ。(見た目は俺よりはるかに年上だが。前世を合わせると..)ハデ男の頭を一つ殴って気を失わせ、両手を縛って、雇われオーナーに背負わさせる。雇われオーナーが
「何処へ行くんです?」
「当然領主の所ですよ。」
「エ~!嫌ですよ!本当に嫌ですよ‼」
と言ってハデ男を背から降ろそうとする。俺は腰の愛刀を少し抜いて見せる。雇われオーナーは
「分かりましたよ。」
と言って半泣きになりながら、ハデ男を背負い直して、ヨタヨタと領主の館に向かって歩き始める。俺は
『俺も悪よの~♪』
などと思いながら雇われオーナーの後ろから歩く、サルには爆裂魔法使いを連れてこさせた、ただどこにいるのか分からない?確かについて来ているはずだ。
領主の館は町の中心部にあり、その館は城のように大きく、門も城門のように大きい。俺達が城門の前に立つと、すぐその城門が内側に開いていく。
城門の中にはエンマ様とエルフ族の巫女が首もとに剣を突き付けられ、その後ろにノキザルが抜忍の女の子に押さえつけられている。エンマ様とエルフ族の巫女は睡眠薬の効果が続いているのか少しボーッとしている。
エンマ様の首もとに剣を突き付けているのはハデ男そっくりな顔をした超ハデ男だ。その超ハデ男の周りには数十人のゴロツキや正規兵の格好をした男達が立っていた。
俺は雇われオーナーの背からハデ男を降ろさして、ハデ男の首に刀を突き付ける。
『俺も悪よの~♪』
等と思っていると、超ハデ男が
「そいつはいらない、一卵性の弟で殺してもらってもいいよ。その方が後継ぎ問題が解決するからな。チャッチャッと殺して下さい。」
『ワォ~‼こいつ俺より悪党だな!』
超ハデ男は
「この女は前魔王の正妻だな。チョイと年増だが、震い付きたくなるいい女だ。この女を旗印にして王国でも建国するか。」
俺は愛刀を血ぶるいして鞘に納め、ハデ男から手を離す。俺はさりげなくポケットからパチンコ玉より少し小粒な鉄球を手の中に入れて取り出す。俺は体に魔素を纏っていく。
ハデ男は気を失っているのでそのままゆっくりとひっくり返る。ハデ男の頭が『ゴン』と地面に打ち付けられる。
その音を合図に、サルはノキザルを押さえている抜忍に飛びつく。俺は超ハデ男の剣を持つ手に向かって鉄球を親指で弾く。鉄球が超ハデ男の剣を持つ手を穿つ、超ハデ男は剣を落としてうずくまる。
エンマ様は優雅に超ハデ男の落とした剣を拾い上げると
「チョイと年増は要らないよ。」
と言って剣の平で『ゴン』と殴る。超ハデ男が白目を剥いて倒れる。
俺は、エルフ族の巫女を押さえている男の腕と武器を持つ手を鉄球で穿つ。他のゴロツキや正規兵の武器を持つ手を鉄球で穿っていく。
抜忍の女の子もサルに押さえつけられ、ノキザルに頬を平手で叩かれている。
俺は、鉄球の回収は大変だなと思っていると、館の玄関の扉が開く。館の中からハデ男と超ハデ男とよく似た腰の曲がった親玉ハデ男が出てくる。
その親玉ハデ男が後ろに向かって
「バカ息子共が、先生、殺やって下さい。」
と、声をかける。後ろから、俺の腰回りほどの太い腕を持ったヘラクレスタイプの美丈夫で身長5メートルを超える大男、巨人族だ!身長に見合ったでかい斧を両手に持ってブンブン振り回しながら出てきた。
斧の欠点は、その重さによって体勢が崩れることなのだが、この大男はでかい斧を両手に持って軽々と振り回していても体勢が崩れない。
愛刀を差し直して、軽く右手を柄に掛ける。ブンブン斧を振り回す大男を見ながらジリジリと近づいてゆく、間合いが近くなる、普通なら斧を持つ手か斧の柄を切り飛ばすのだが、この大男身長が・・・全てでかすぎて届かない。
俺はタイミングを計り、新陰流の開抜(ひらきぬき)の要領で、愛刀を抜きだし、右足を前に踏み込み体勢を出来るだけ低くして、大男の右足首を捉える。足首が太くて切り飛ばせなかった。大男は足の踏ん張りが利かなくなったので、倒れる力を利用して俺に向かってでかい斧二本を叩きこんでくる。
「チッ」
でかい斧を避け、覆いかぶさるでかい体を避けて横に転がり出ると、大男の首を切り落とそうと刀を振り上げる・・・エンマ様が
「ダメ切らないで!殺さないで!」
声をかける、俺は刀を峰に返してでかい首に打ち付ける
「グッ」
という声をあげて、うつ伏せに倒れる。ついでに驚いて固まっている親玉ハデ男に一撃を与えようと愛刀を振り上げただけで、白目を剥き泡を吹いて倒れる。
俺やノキザルで倒れたゴロツキや正規兵を縛り上げる。
次は、後始末か...。
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