第4話 魔核・魔素・魔管・魔臓・魔力・魔法?

 この世界は魔法が使える。

 時間や空間の魔法はない。ただ、時空間魔法のアイテム”魔法の袋”が古代の遺跡から発見、発掘されることが有るらしい。

 エンマ様が時々小さな袋から、それには入らないような物を出し入れしている事があるからだ。

 俺はシオリとともにエンマ様の部屋で育った。

 この部屋は後宮と言われる。後宮には、魔王の正妻や側室の部屋があり、エンマ様は魔王の正妻だそうだ。

 男子は10歳の時、魔法鑑定を受けると後宮から出されるのだ。

 魔法を使える子は後宮から出ても、そのまま魔王城にとどまることができるが、魔法を使えない子は後宮から出て、一般庶民に落とされ、魔王城内はもちろんのこと、魔王城の城下街にもとどまることはできないのだ。

 俺は3歳になった。

 俺はシオリの隣のベットに寝ていた。深夜、部屋の扉の開く音が聞こえて目を覚ました。部屋に入ってくるエンマ様が見えた。

 この世界の文明文化は魔法で何でもできるためか程度は低い、夜は真っ暗だ。

エンマ様が見えたのは、エンマ様の頭から生えている大きな羊のような角が明るく輝いて見えたのだ、俺は

『エ~何で?美しく輝いて見える。』

と思って見ていると、エンマ様の心臓付近が衣服を通して淡く見え、手や足の指先、目も淡く輝いて見えた。

 俺はエンマ様が美しく淡く輝いて見えるのがとても綺麗で

『エンマ様が仏様のように光り輝いてとても綺麗だ。』

等と思っているとエンマ様が

「また、微妙に不埒な事を考えたでしょう。」

と言って俺の頬を指で突くとニッコリと笑う。

 俺は隣に寝ているシオリを見る。シオリの頭にも小さな羊のような角が生えていて、エンマ様より明るく輝いて見える。胸は毛布が掛けられているのに淡く蛍のように輝いて見える。凄いな。

 エンマ様は俺が何を見ていたのか気が付き、シオリの胸を指さしながら

「これは心臓の横にある器官で魔核というの、ここで魔素が作られるの、明かりが進んでいる管が魔管といって魔素が魔臓や指先、目に送られるの、指先に魔素を集めて魔法を放つことができるの。

魔臓というのは魔素を溜めておくところで、魔族独特の器官なの、魔臓が無くても魔核から魔素が送られ、指先に魔素を集めて魔法を放つことができるの。

魔素を作る魔核にも魔素が溜まるの。その量は個人個人なの。

魔法は大体、原則として一人一種類で、使う魔法が同じでも個人個人色や輝きが違うの、シオリの方が私より明かりが強いので魔力は強いと思うわ。

一人一種類と言ったけど私のように水魔法と治療魔法を使うことができる人がいるわ。滅多にないけど火魔法、水魔法、木魔法、土魔法、風魔法、治療魔法のすべてが使えることができる人がいるわ。」

エンマ様は俺の手足を見て頭を撫でながら、

「カール、今は魔臓や魔管が無いかもしれないけど、10歳なる頃までには大抵の子は発達するものなのよ。頑張るのよカール。」

と言って俺の額に軽くキスして

「今はもうお休みなさいカール。」

と言って離れた。

 俺は、その翌朝から座禅を組み、呼吸を整えて、魔核と魔素を感じるように努力することにした。まだ3歳児なので、手足が短い、上手く足が組めない...。

なので、足を前に投げ出して座る...。ひっくり返る。

 俺がじたばたしていると、エンマ様が枕を使えばいいでしょうと、枕に座らせる。腰が落ち着いて精神の集中が楽になった。

3日ぐらいしたら、エンマ様が座布団を革製で作ってくれた。

 俺はそれから1年間、朝と夕座禅を組む。俺が4歳になると魔核を意識して魔素を体の隅々まで行き渡らせるようにイメージする。俺の体全体が淡く輝いて見える。

 魔素を纏った時、体の筋力が異常に強まるのを感じた。試しに部屋にあるエンマ様がいつも座っている頑丈で重そうな椅子を持ち上げてみる。

軽々と持ち上げる事ができた。

 俺は翌日の早朝から裏庭の木陰で誰も見えない所で、座禅を組んで呼吸を整えて魔素を体に纏っていく。体が淡く輝いた状態を長く保てるようにする。

 ストレッチをしてから、腰に守り刀を差す。

 守り刀の小太刀を使って軽く素振りをする。4歳児には小太刀はかなり長いくらいだ。

 全日本剣道連盟の居合道、礼法から始まって一本目「前」二本目「後」と次々と十二本目「抜き打ち」まですべて抜き、礼法で終わる、それを三度繰り返す。

 その後、砂袋に砂を詰めたいわゆるサンドバッグを作って木から下げて殴ったり、蹴ったりする。

 シオリが俺と同じ4歳になった時、出ていく俺の後をつけて、木の陰から俺の様子を見ていた。

 数日後、悪戯なシオリは砂袋を殴っている俺に向かって、小石を拾って後ろから投げる。

 俺は後ろも見ないで、ヒョイと小石を避ける。それから何日もシオリが後ろから小石を投げる、俺が避けるのを繰り返した。

 俺が5歳になると、俺が座禅を組むとシオリも横で座るようになった。

悪戯なシオリは、最初は座禅を組んでいる俺の鼻の穴に草の先を入れてくすぐったりして邪魔していたが、そのうち黙って座るようになった。

 俺はシオリがいるので守り刀を抜くのをやめた。俺が唯一知っている空手の型「平安二段」をやる。シオリは、見ているだけで何もできないのが面白くないのか手刀をつくって俺に向かって振り下ろす。

 シオリの指先に魔素が集まり魔力が膨れ上がり、それが小さな火の塊となって俺に向かって飛んできた。

 俺はその小さな火の塊を掌で打ち払う。

 シオリは、生まれて初めて火の魔法を打ち出せたことに驚き。

 俺は、その火の魔法を手で打ち払えたことに驚いた。

 ただその後は、子供がやる最も危険な遊びが始まった。シオリは次々と火の魔法で火の塊を打ち出し、俺はそれを手刀や足を使って打ち払い、殴り飛ばし、蹴とばしていく。

 俺とシオリは、それを組手と言って毎日のように行った。

 俺もシオリも魔素切れを起こして、二人ともへとへとになり夕食を居眠りしながら食べ、すぐベットに入って寝る日々が続いた。

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