41話 ピザモッツァレラ。
♡
浮気の謝罪と龍斗神のお供え物兼ねて、ピザを注文した。マルゲリータピッツァらしいがこれはピザだ。ピッツァと言う人間は生理的に受け付けない。
「でさ、一緒に話してたのってもしかしてマキさん?」
「うん。真木だよ」
ピザを切り分けて一枚皿に乗せ都楽くんに渡す。
彼は意外と有名人なのだろうか。たしかにイケメンだから小顔なのに顔が広く、容姿がいいから別クラスに知れ渡っていても、おかしいことは何もないか。
しかし、それでも気になる点はある。
「でも、よく知ってたね。都ら…………龍斗、様は他人に興味ないタイプだと思ったけど」
「うん、とりあえず様はやめて。平等のために呼び方合わせたのに変わってないよ」
「そうだね。じゃあ神で」
「もっと偉くなっちゃったし、もうそれ人じゃない!」
「二礼、二拍手、一礼」
「崇めたてないで!ファミレスのど真ん中で参拝しないで!ご利益ないよ!」
何をおっしゃいますか龍斗神。お側に居るだけで恩恵を受けられて、もうそろっとファミリアを作ってもよろしいかと存じますよ?リトルルーキーって意味深。
自分の皿にもピザ乗せる。
「と、とにかく僕の名前は前と同じくん付けにして。もし敬語とか様扱い神扱いしたら僕も『砂流くん』って呼ぶから」
「ウグッ…………」
呼ばれたい。けどそれは、龍斗様の中ではたぶん距離を置く表現なのだろう。それは避けたい。私はべったりピッタリねっとりくっ付きたいのだ。
「…………龍斗くん」
「よろしい」
閑話休題。ピザを一口。
「で、なんの話してたっけ?」
にょろーんと伸びるマルゲリータは見た目の割に普通のお味。美味そうと感じるか、美味いと感じるかは別。
「…………マキさんと知り合いなの?って話しだよ」
「あー、それそれ」
浮気の話だった。
「知り合いってわけじゃないよ。あそこで初めて知り合ったんだ」
「へー。…………やっぱりコミュ力あると、初対面でも普通に話せるの?」
「コミュ力は俺より真木の方が強かったかな?ほとんど強引に話してたし」
強引なのはベットの上だけにしろ、なんてセクハラは食事中に言えない。
「ふーん。……じゃ、あれはマキさんの方からなのか。結構フレンドリーなんだね」
それは彼が攻めである事を察知したのか?
「それにしてもよく知ってるね。龍斗くんはどっちかっていうと人のあれこれに興味ないと思ってた」
「それに関しては否定しないし、その通りなんだけどさ、…………なんていうか、彼は特殊じゃん」
「特殊?」
あのブラウンがかった黒髪は実は地毛で、日本人と外国人のハーフってこと?
「そう、特殊。それに有名人だから基本、誰も近づかないし、彼も自分からアクションしてないっぽいし。夜麻くん除いて」
「有名人?」
不良ってこと?たしかに明るい髪にピアス、ネクタイゆるゆるだからそれっぽいし、あのチュッパチャップスがタバコでも違和感ない。
悪名高いって意味かな。結構なワルで近寄りがたいガチヤンキー。何それ萌える。
「この学校でも密かに付き合いたいって思ってる人もいるらしいよ。たしかに顔いいし性格は難ありだけど、中高生の恋愛なんて遊びだろうさ。むしろ『あのマキさんと1秒でも付き合えたらラッキー』ぐらいなのかなぁ。女じゃないからわかんないけど」
「…………そんなに?」
最近の女子高生はああいうのがタイプなんだ。
まぁ、高身長プラス顔面偏差値A評価の真木は、たとえちょっと不良みたいな感じでも、それがスパイスとなって女子ウケするのかな?私も女子高生のはずだけど。
でもなぁ。龍斗様を差し置いてまで関わるほどじゃないんだよねー。第一、あいつは女状態の私に一目惚れらしいけど、そこに関しては嬉しくなくもないけど、反りが合わない気がするのだ。
岸辺先生の言葉を借りると『波長が合わない』のだろう。
あの時出会った、壁ドゥンの、たった一瞬で『違う』と思うのは、少し残酷なようだが、仕方のないことなのだ。
「夜麻くん。タバスコもらっていい?」
「え?あ、うん」
考えに耽っていると、ピザを食べている龍斗くんにタバスコを要求された。
テーブルの隅にある調味料から赤い瓶を取って渡す。
「なんか意外だね。辛いもの苦手そうなのに」
「そう?別に嫌いじゃないよ。でもこれはかけた方が美味しい気がしたから、夜麻くんもどう?」
「俺は苦手だからいいよ」
すげぇ。タバスコなんて今までの人生でかけたことないよ。よく料理番組で激辛とか出てるけど、あれ料理というより兵器だ。
「でも、マキさんとはこれからどう付き合うのか考えた方がいいね。Twitterの裏アカによると、学校にファンクラブっぽい人もいるから、それこそ変な噂が流れたら、夜道歩けないかもよ」
「………お、おう……」
ファンクラブなんて漫画の世界だけの都市伝説だと思ってたのに。しかも龍斗くんから、恨みを買ったらヤバいって釘を刺されるとは………。
あれ?今日昼休みに絡まれたけど、誰も見てませんよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます