38話 梅雨入り前に修羅場前
♡
「最近ジメジメしてきたから、都楽くんとベタベタしたい」
「は?」
「もうすぐ梅雨なんだからさ、少しぐらいねっとりベタベタしても罰は当たらない。なら既成事実としてもう結婚してもいいと思わないかね、武田くん」
「のぼせて頭おかしくなって………、元からか」
「その言葉お前にシェアするわ」
「いらね」
午後になると気力も体力も切れていて、やる気がゼロどころかマイナスなのに、その上もう少しで下校時間である6限の体育は、地獄以外のなんでもない。
それは運動ができる人間も同じく、元バスケ選手である私も、この時間帯はお昼寝したいところだ。こんなコンディションで最高の記録など出るはずがない。
「なんで授業なんてものがあるんですかね武田さん」
「知らねぇ」
「保健はなんで実習しないのかな?体育は体動かしまくるのに」
「18禁展開はやめろ」
今は周りに人がいないから互いに素の自分で会話しているが、年頃の男女でする会話ではないと自負している。
周りに誰もいないというのも、それぞれ異性として学校に溶け込んでいるが、体育の時間ばかりは溶け込んではいけない。いてはならない。
本校の体育は着替えの際、教室を移動して男女別れて着替えする。当然と言われればそうだが、これが結構考えものなのだ。
私と武田、本来の性別と違う人が異性の前で着替えるのは完全アウトだし、異性の着替えを「ほほう」と凝視もとい見物してはならない。
結果として体育がある日は、私も武田も中に体操着を着てきて、時間になったら制服を脱ぎ、クラスメイトより一足先にグラウンドや体育館に行っている。
「暇」
「知ってる」
「何か面白い話して」
「俺昨日、とあるカップルを発見しました」
「やめて、聞きたくない」
それは面白い話ではなく怖い話だ。
たしかに、どう見てもあれはデートだった。今こうしてグラウンドの、後者の日陰で横並びになって座ってるのとは訳が違う。
「じゃあ放っておくか?」
「………………それは絶対ない」
「だろうな。で、どうする?」
「どうするもこうするも、どうも出来ないでしょ。2人が付き合っている事実がもう出来上がって、美味しくいただける状態なのだから、いまさら料理前には戻せん」
「3分クッキングは出来合いの物を出すから3分ではない」
「知ってる」
いつもなら脱線ルートだが、今回ばかりはそうならない。
「………………直接聞くのが一番かな」
「…………え?」
「俺らが悩んでても仕方ないだろ。勝手な想像してウダウダ言ってるよりマシだ」
「……………それもそうか……」
少し残酷だが、今の状況を抜け出さないと永遠に引きずる自信がある。
実らなかったならスッパリ切り捨てないと、ヤンデレ展開になって都楽くんも不幸にしてしまう。それは嫌………でもないと思ってしまう自分が怖い。
「そうと決まれば放課後にでも、海鷺さんを遊びに誘うかな」
「うん。私も都楽くん誘ってみる」
「性的な意味で?」
「18禁展開やめろっつったのどこのどいつだ」
やっぱり私はこいつが嫌いだ。
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