34話 カルピスの原液より濃い日から
♤
「おい」
「……………」
「武田さぁん。まさかとは思いますが、他の女の子見てて都楽くんの護衛をサボっていたわけじゃあるまいな」
「護衛じゃない。偵察だ」
「黙れ。今回は私が裁判官だ」
チッ。言いたい放題言いやがって。
あれから1日過ぎた月曜日、誰もが一週間の始まりに憂鬱になる中、俺らの間では憂鬱を遥かに超えたマックシェイク並にドロッドロの空気が漂っているな。
昼休みの昼食をいつも通り旧校舎の階段で食べているが、今回は食事会ではなく反省会を行なっている。
「…………さて、どう料理してやろうかなぁ。作戦立てたのに逃すってよ、あり得なくないかい?」
「それ以上近づくな。お前の
「アルパカやラマは胃液混じりの臭い唾飛ばして攻撃するらしいぞ」
「おっと。砂流さんはラクダの仲間でしたかー。てっきりお猿さんかと思いm」
「ペェッ!」
「うわ汚ったねぇ!!何しやがるんだテメェ!!」
「あらあらぁ、まあまあぁ。好物の鮭おにぎりにかかってしまったかもしれませんねぇ。そこにゴミ箱がありましてよ」
「お前ほんとに女隠す気ないよな」
オーホッホッホと一昔前の貴族のような、やたら腹立つ笑い声は、俺の神経を逆撫ですることに特化している。
食べ物を粗末にする奴は嫌いだ。だから砂流の唾がついた海苔部分を触らないようにぺりぺりと剥がす。これ以外は食えるからな。
「うえー」
剥がした海苔を親指と人差し指で挟み、臭いものを遠ざけるように顔を離す。
「ほう。このクソ野郎はよっぽどしばかれたいらしいな。正真正銘の豚野郎だな」
「…………色々と言いたいことがあるが、今はそんなことより海鷺さんたちの話だろうが」
「ふっ、命拾いしたな豚野郎」
相変わらず沸点は低いし口は悪いが、意中の相手には素直な姿勢なんすね。…………いや、素直じゃないかな。
唾のついた海苔をレジ袋に入れる。
「あれからちょっと探ってみたんだよ。海鷺さんにLINEして」
「なんて言ってた?」
「誤魔化された。……友達と買い物って言われて、色々と質問ぶっ込んでみたが、都楽くんの名前もデートも言わなかった」
「…………黒、でいいのか?」
「わからん。これ以上踏み込むのはリスキーだし、学校まで引っ張る話じゃねぇだろ」
「……………ズカズカ踏み込んで嫌われればいいのに」
「今なんつったオイ」
テメェの焼きそばパンにも唾かけてやろうか。焼きそばに命中したらただのパンになるぞ。
「都楽くんには聞いたのか?」
「聞いたように見えるか?」
「…………めんどくさお前」
「ふっふっふっ。今日は優勢だからな」
何言ってんだこいつ。
「とにかく学校で2人がイチャイチャしてたら断然黒だ。………隠す必要は無いはずだから、付き合ってる発表があるまで待ってもいいんだがな…………」
「いいって顔してないぞ」
「へ……………ははは……………」
「あー、だーめだこりゃ」
「そうだな。浮気された俺にも責任はあるし、さっさと告っておけばよかったんだから、これは逆恨みみたいなもんだしなぁ。でもなぁ、俺も候補にして欲しかったなぁ」
「女子が女子に告るってどこの百合マンガですか?」
「黙れBL」
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