33話 ずっと真木のターン
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その後は暴走しないように最新の注意を払って会話をした。
なんと真木は私と同じ高校の、しかも同級生の、隣のクラスらしいのだ。
それを知った私は校内で遭遇するかもしれないから、今現在、つまり男装中の私を「砂流夜麻(弟)」とした。
そして女状態の私は、別の高校に通う1歳年上の姉貴にした。ちょっとだけ複雑化。
服屋では身長基準にし3歳差と名乗ったが、弟を基準としたため姉貴を1歳差にした。ボロを出さないように注意しないと、学校でバレるかもな。
「へー、
私は高校生探偵でもなければ毒薬を飲まされ体が縮んだわけでもないが、女バージョンであり姉貴である1歳年上の私を「砂流碧」と名乗った。
江戸川乱歩とコナンドイルから名前をとった少年と同じく、私の(BL)漫画に出てくるヒロイン(女であっても付き合う予定はない)の名前をとってきた。
「…………姉ちゃんに手を出したら体育館裏の花壇に埋めるから」
「1時間に一回水くれればスクスク育つぜ!」
「うちの高校、花壇の土は豚糞らしいぞ」
「……………キャラメルラテが美味しくなくなる話をするな」
「そっちが話振ったんだろ」
追加した抹茶なんとかフラペチーノをストローで吸う。美味しくなくなると言っときながら、普通にキャラメルラテを飲む真木は、Mの素質があるのでは?
「……………真木って甘党?」
「甘党ってよ、たしか酒と甘いもん比べて甘いもんの方が好きってやつだよな?なら未成年はみんな甘党だろ」
「ちっ。辛いもの好きだったら馬鹿にしたかったのに…………」
「十分に馬鹿にしてるよね?今に始まったことじゃないよね?」
真木が言ったように辛党とは甘いものより酒が好きって人を指す。それは私も知っているし、私が聞きたいのはそこじゃない。
「甘いもの好きなの?」
「嫌いじゃないな」
「角砂糖食える?」
「特殊な拷問だな」
男っていうのは甘いものが苦手って人が少なくない。コーヒーを水みたいに飲む奴いるからな。
都楽くんも武田もコーヒーはブラックだし、男のふりをする以上、私もコーヒーは飲めるようにしたいのだが、あの苦味がなかなか喉を通らない。
コーヒー系よりキャラメル系を注文する真木にちょっとした親近感が湧いた。まぁ私ぶっちゃけ抹茶派やけど。
「つか夜麻はこんなとこで何してたんだ?」
「真木の奢りで飲んでいる」
「さっきまで何してたんだって聞いてんだよ」
「チョコレートチャンクスコーンを食べていた」
「お前は俺と話す気ないんか……」
「ない!」
素っ気ない態度をとってツンデレを演出していくぅ。
「そっちこそ何やってたんだよ。まさかナンパとかしてたわけ?」
「なわけねぇだろ。…………暇つぶしにゲーセン行こうとしたら碧ちゃん………じゃねぇな、碧さんがいたから会えるかなーってそこら辺ウロウロしてた」
「完全に不審者だしそれをナンパと言うんだ」
鉢合わせなくてよかったー。服屋に来てたらおしまいだった。
「なぁ、やっぱりLINE交換しないか?碧さんマジで落とすならお前みたいな協力者欲しいんだけど………」
「だから嫌だって。月一のスタバでお前を姉ちゃんに紹介するって契約だろ。それ以上はやらん」
帰ったらちゃんとアカウント作るから。登録はまた今度なの。今はツン期なの。わかる?
「つかさ、真木は姉ちゃんのどこに引かれたんよ」
「え?」
「だからどこらへんに運命の赤い糸感じたんだよって聞いてんの」
「そうだな……」
ニヤニヤしそうになるのを抹茶なんとかフラペチーノを飲んで抑える。
こういう体験を漫画家が聞かないわけがない。感情の揺れ動き、具体的なエピソードは漫画にとってリアリティを生み出す。岸辺先生もおっしゃっているように。
真木が何か喋ろうと口を開けた時。
とうおるるるる るるるるるる るるるん。
「…………チッ」
「舌打ちて……」
着信があったみたいだ。
最愛の都楽くんにはお気に入り着信音を登録しているが、今鳴っているこれは武田だ。
「悪い」
私は体を横に向けて、世界一押したくない受話器のボタンをタップする。
とうおるるるる るるるるるる るるるん。
がちゃり。
「…………もしもし、はいドッピオです」
真木が訝しげな目をしているが私は気にしない。
『あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!俺は奴の前で…………』
「ボケをボケで返すなあーッ!疑問文には疑問文で答えろと学校で教えているのか?私が『はいドッピオです』と言っているんだッ!」
『やめろ。マジでお偉いさんから怒られかねん』
「いまさらだな」
『砂流さん。今のうちに荒木先生に土下座する準備しといた方がいいぞ』
お前もな。
「で、なんの用件?」
『……………先に謝っとく』
「…………は?」
『2人を見失った』
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