30話 ガチコーディネート
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服を物色してるいると、ふと思ってしまう。
女の私が男物の服を選んでいても、店員さんはたぶん、彼氏(都楽くんの予定)とか弟とかのプレゼントと勘違いしてもらえるが、武田の場合は、妹や彼女の言い訳すら聞いてもらえず即通報からの逮捕なのではなかろうか。ありがたやありがたや。
そうなると武田は、女装して女物の服を買うのだろうか。もしくは私同様に、中性的なファッションをして忍び込むのか。
「うーん…………」
私はあれでもないこれでもないと、Tシャツをかき分けながらピンと来るものを探す。
しかし私たちには共通点がある。武田も私も、試着をできない点は大きい。それにネット注文はリスクが高い。サイズが小さいと体のラインがくっきり見えるから着るに着れない。
そしてTシャツならまだしも下半身、ズボンは難しいのだ。
プレゼントには向かないし、店員さんに不信感を抱かれる上、丈合わせもしてもらえないからぴったり賞が難しい。
そんな時の必殺技。
「あの、すいません。弟の誕生日プレゼントを選んでいて………。三つ下で私と同じぐらいの身長の男子が似合う服、選んでくれませんか?」
丸投げコーディネート!
これはリスクが大きい。センスが悪い店員さんもたまにいるし、売り上げ重視で高い服を勧める店員もいる。金の余裕と他人に任せる余裕がないとできない荒技だ。
しかし私みたいな訳ありにとってはいいように運びやすい。
自分の視点からだとどうしても女性の目利きになってしまって、結局どっちつかずになって、今着てるのと同じような中性的なファッションになりやすい。その上、創作活動をしてると、キャラに似合わない服を着せてしまう恐ろしさで自分の小指をボールペンで刺したくなる。それぐらい私は服に気を使い、ミスマッチを恐れている。
だから店員さんの男性像をいただき、それをベースにして微調整を施し、怪しまれないようプレゼントラッピングを施してもらい、家に帰って梱包をビリビリと開ける。一度体験したらやめらんないのだ。
「かしこまりました。では
「すいません。ありがとうございます」
この店員さんなら大丈夫そうだ。ちょっと日本語変だけど。若いから仕方ないか。
私の無茶振りを受け入れてくれた店員さんは、他の店の店員さんと同じ反応をすした。
「お任せください。………ですが、もし失礼でなければ、弟様のお写真を確認できるものはございますか?」
真面目に考えてくれたー。当たりくじ。
他人の雰囲気をかけて、顔やスタイルに合わせたファッションはジグソーパズルのピースがハマったような心地よさがある。それがわからない人だと任せられない。
「はい、ありますよ。ちょっと待っててください…………。これが弟です」
そう言って渡すのはもちろん男装時の私だ。漫画を書く時のために、鏡写しの自撮りじゃない、全身が分かりつつも、隠し撮りしたような躍動感のある写真は、イラストのイメージのためによく撮るのだ。
「…………お姉さんにそっくりですね」
「まぁ、兄弟ですからね………」
まぁ、同一人物ですからね。
「それにしても弟さんも美形ですね。やはり親譲りなのでしょうか」
「あはは………」
興奮しきってる店員さん。顔が好みだと物語ってる。
ちょっと若い店員さんに任せたのが今回の反省点か。若い人なら感性が近いし、販売利益で給料が上がりにくいから高い物は売りづらい。そして暇つぶしに余計な模索をして、プライバシーを踏み荒らすようなおばさんではないはずだから、そっちの方にしたのだが。
チョロっと聞こえた。
「………………タイプだわ…………」
まずいな。私の空想弟、年上キラーかしら。鯖読みした3歳を足して10歳ぐらい年上の人を落とすなんて、恐ろしい子。
「ちょっと本気出していいですか?」
目がやばかった。逆鱗とはまた違うところに火をつけてしまったらしく、目の奥で何かが燃えている。
この状態で「やっぱいいです」なんて言葉が出せるほど野暮じゃない。逆にこちらとしては急いでる。
だから私の答えは一つのみ。
「…………お願いします」
出来ればお願いしたくない感じだが背に腹は変えられない。
その後、ちょっとした地獄を見た。詳細は語れない。
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