第13話 勉強会に向けて
「遊太、沙月さん甘いのいける?」
「ああ、好きだよ」
「しょっぱいのは?」
「それも好きだな」
放課後の帰り道、何となしにこたえてしまったため追試前の最後の勉強会はわが家に。
といっても、体力的にも今日は自信がなかった俺からすればある種の救いだった。
終わればすぐベットに横になれるし。
佐奈がうちに来るなんて、もうえらく昔のように思えたが実際そうらしくお菓子でもと帰り道のコンビニで調達する。
まぁ、昨日の夜のお世話になった店なんだが。
「あ、すっぱいのはあんま得意じゃないかな」
「へぇ、意外」
某すっぱいポテチを手に取る佐奈にそういえばすっと戸棚に戻してそういう。
――まぁ基本好き嫌いはないんだけど。
たまに意外なものが苦手なんだよな。梅干しとか。
「じゃあ私買ってくるから」
「いや、俺出すよ」
流石に家に出される菓子を全部出されるのは気が引けるし。
「いいからいいから。 遊太も家来るとき買ってくじゃん」
「まぁ」
「だから」
自分的には女子に出させるのがなんとも抵抗感があるのだがそうではないらしい。
まぁ言われればそうなんだが。
佐奈がレジに向かっている間、なんとなしに物色すれば新商品の文字が目に入る。
「お願いします」
「はい!」
気づけば新作のシュークリームを三つかごに入れてレジに。
隣のレジで、どれだけ買ったのか佐奈がこちらを見てくるがとりあえずは放置。
「ありがとうございましたー」
「ちょっと遊太。 いいのに」
「まぁ、昼のお礼だ」
見た目の派手な感じに比べれば大分まじめに言われるがそんな気にしなくてもいいのに。
「とりあえず行こうぜ。 暑いし」
「そーだね、いこっか」
7月もまだ始まったばかりだっていうのに、この暑さ。
9月まで生き残れるかな。
「そー言えば既読付いた?」
その言葉にポケットのスマホを取り出してみるが
「あー...まだだな」
「そっか」
「まぁ、大丈夫だろ」
学校を出るときに送った『佐奈と今日うちで勉強します』の文には既読のマークはついていない。
おそらく昨日のダメージがまだ残って寝てるのだろうが、佐奈とは仲いいみたいだし、家も汚くはないから大丈夫だろう。
既読が付かないことに不安はあるが、大丈夫だろう。
「ただいまぁ」
「おじゃましまーす」
「母さん?」
鍵のかかった玄関を押し開けて声を出しても帰ってくる言葉はない。
こりゃ完全に寝てんかな。
「とりあえず一旦俺の部屋行くか」
「うん」
流石に寝てるのを一々起こすのも、声をかけるのも面倒だし可哀そうだ。
玄関から入って左側二番目の引き戸の自室へと足を延ばす。
佐奈も靴をそろえてからちょこちょこついてくるが、本当にまじめだよな。
「まぁそんな汚くねぇよ思うから」
「気にしないよ」
そんな会話をしながら引き戸を開ければ心臓が止まるかと思った。
「えっと、沙月さん?」
「.........」
「寝てるし」
——いやどういう?
開けた瞬間目に入ったのは俺のベットの上で眠っている沙月姉ちゃんの姿。
キャミソールにショートパンツなんていうラフなかっこを見るに一度目が覚めたのか、なんて冷静に考察してみるが内心穏やかではいられない。
部屋の真ん中のローテーブルに置かれた洗濯物。
おそらく洗濯物を持ってきてちょっと疲れて横になったら一発でといったところか。
——いやどうすんだよ。
「えっと遊太。 沙月さんだよね?」
「ああ、そうだよ」
「おい、起きろ~」
露出が激しい分肩を揺するのもはばかられるが流石にこのままというわけにもいかない。
いっそリビングでやればいいのだが、何というか沙月姉ちゃんが自分のベットで寝ているというのは精神衛生上的にも早めに退場ねがいたい。
「んん.......ゆう?」
しばらくすれば重くなっていた瞼を押し上げて焦点の定まっていないような目で俺を見てくる。
——なにドキッとしてんだ俺。
内心穏やかでない中、いよいよ起きてくれるだろうと思ったのだが
「えへへ、おかえり遊太ぁ」
「ちょ、沙月ねぇ」
「んー、ゆうたぁ」
完全寝ぼけている沙月姉ちゃんが抱き着いてきた。
いや、そのいろいろ不味いから。
とりあえず今わかってるのは、これはマジの二日酔いだ。
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