完食
いつもより時間をかけ、それでも完食した。顔色は冴えないままでほとんど喋らなかったが、食べてくれたという結果が嬉しかった。これなら大丈夫だと、自分が支え続け手を取り合う限り、彼女は立ち直れるはずだと根拠もなく思える。フリーデンスリートベルクが初めて妻の料理を食べた時もそうだった。一寸先は闇でも、その先光はあるのだと信じられた。
「……おいしい」
妻が口を開く。
「おいしい、この味好き」
ほろりとその目から涙が伝ったが、口元は弧を描いていた。フリーデンスリートベルクの目頭がじわりと熱くなる。きっと大丈夫だ。この世に悪意と理不尽がどんなにも満ち溢れても、救いはある。彼女といれば、根拠なくそう思う事が出来た。
おかしな夫婦2(7/6更新) 狂言巡 @k-meguri
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