第3話 召喚をしようか。
「真っ暗だ。」
目が覚めると、周囲は真っ暗。なのに自分の腕や倒れている3人の姿は確認できる。なんでこんなことに?確か……俺たちは洸太と燈と買い物して、途中で花井と会って、それから……
「車に……轢かれ……た?」
というかこの流れ、絶対アレだよな。ちくしょう、燈とふざけて言ったことが現実になるとは。まあ、とりあえず。
「おい、洸太、起きろ。」
「ゲフ!?」
洸太の腹を踏みつけて起こす。こんな時に眠っているのは許さん。
「ちょ、いたぁ!?影児!もっとちゃんと起こして……って、ここ何処?」
「よお洸太。確認だ。俺たちはなんでこんな状況に陥っている?」
「それを僕に聞かれても……」
「眠る前の記憶のことを聞いているんだ俺は。俺の記憶が間違いなきゃ、俺たちは車に轢かれたよな?」
「あ、確かに。僕が転んで道路に出ちゃって……」
「いえ、あなたたちは轢かれていません。その前にこちらの『場』へ招きましたので。」
背後から声がした。横目に洸太を見てみると、こいつも驚いているみたいだ。なんせ、気配が全く感じられなかった。少なからず俺たちはトラブルに巻き込まれることが多く、人の気配とか、そう言うのを察知する力は常人よりあるつもりだった。けど、今はまったくしなかった。
振り向くと視界に入ったのは美女。真っ暗なこの空間に置いて、白、いや、純白の服と綺麗な金髪。整った目立ちに特徴的な……『翼』。
コスプレ美女さんかとも思ったが、違う。まず第一に『浮いている』。いや、空気とかではなく、物理的に。それに一目見た瞬間、頭が、心が、目の前にいるこの女性は何かが『違う』と感じさせられた。
「……どういうことっすか。と言うか、ここはどこで、あんたは何者?」
「影児、いきなり失礼だよ!」
「こんなところにいきなり呼ばれて、警戒心ゼロってわけにはいかないんでな。」
「あなたの言うことはもっともです。室山影児(むろやまえいじ)くん。そして信条洸太(しんじょうこうた)くん。しかし信じていただきたい。私は、貴方達の敵ではありません。」
洸太は目の前の美女に見惚れてて聞き逃してるが、なんで俺たちの名前を知っている!?
「話をする前に、そちらのお二人、稲村燈(いなむらあかり)さんと花井香澄(はないかすみ)さんにも話を聞いてもらわないといけません。それに、あなた方の傷も治しましょう。……―――――――――。」
目の前の美女は燈たちの名前も呼び、発音が難しい、というか、よくわからない言葉、呪文のようなものを呟く。
傷も治すと言われてハッとする。俺も洸太も、腕にそれぞれ傷があった様で血が流れていた。燈と花井が目を覚ますのと同時に、傷が塞がり血も止まる。
「う、うん……?」
「……影児?洸太?……え?何ここ。真っ暗?」
花井はまだ寝ぼけ気味だが、燈は現状おかしいことに気付いたみたいだ。真っ暗なのに俺たちの姿がはっきり見えることに。
「影児、どういう状況?私たち、確か車に……それに、すっごいコスプレの美人さんもいるんだけど……」
「俺たちもいまいちわかってない。あんた、今の呪文……かなんかか?それで二人を起こして俺たちの傷も治したのか?」
「はい。あなた方にわかりやすく言うのであれば、魔法、と言う言葉が伝わりやすいかと。」
「魔法?それって、漫画とか小説とかに出てくる?」
「ええ、そのような認識で構いません。」
洸太が目の前に美人さんに聞いているが、魔法……だと?おいおい、そんなものまで出てきたか。と言うかまあ、なんとなく察してはいたけど、これじゃあまるで。
「察しのいい影児くんと燈さんは気づいているかもしれないですが、端的に言えば貴方達4人は選ばれました。これからあなたたちのいた世界とは別の世界に行っていただきたいのです。」
はいきました。異世界召喚ものですね。ありがとうございます。
……ってなるか!
「「拒否します。」」
「うえぇ?影児、燈、なんでいきなり?ちょっとは話を……」
「そ、そうですよ燈先輩、室山先輩。事情だけでも聴かないと……」
ふざけるな。誰のせいでこうなったと思ってるんだ。どうせ原因は洸太だろ?なら洸太だけ行けばいいし、俺は面倒ごとはごめんだ。燈の方を見れば、多分あいつも考えてることは一緒なんだろう、目が怖い。
「……残念ながら、貴方達4人に拒否権はすでにありません。この『場』に来た時点で、このまま元の世界に帰ることはできなくなっています。」
目を伏せながら言う美女さん。まあうすうすは感じていたが。
「勝手で申し訳ありませんが、これが『天命』なのです。あなたたち4名が世界を救う欠片であることはすでに定められてしまいました。」
「『天命』……?あの、それが一体……って、えっと、何て呼べば……?」
「ああ、そうですね。洸太くん。私のことは『ミルチ』と呼んでください。先に答えておきますと、私はいわゆる『天使』という存在です。」
「「天使!?」」
洸太と花井は驚いてるが、うん、まあ予想はできた。人間離れした容姿に、あの翼。
偽物じゃなきゃ、別の世界なんて言われちゃ、ある程度予想はつく。宙に浮いてるし。
「それはなんとなくわかっていました。では、なんで私たちが?」
「それも順番に話していきます。燈さん。まず、一つの事実を申し上げます。このままだと近い将来、貴方達の住む世界を含むすべての世界が、滅びます。」
「な、なんでですか……!?」
洸太がミルチに聞く。少なからず衝撃があったが、今は情報だ。
「とある一つの世界で、神に反抗する勢力があります。その勢力は、いわゆる悪魔崇拝者たち。DCCと呼ばれています。」
「DCC?何かの略称でしょうか?」
「はい、香澄さん。『demon,cult,creed』の頭文字からとったものだと言われています。」
「名前だけ聞くととっても中二病っぽい名前だな。」
「それがそれならどれだけよかったか。DCCの人間たちは、その名の通り悪魔を崇拝、信仰しており、統一すべきは悪魔だと考えているのです。」
中二臭いその名前に、俺は感想をこぼす。しかしミルチはそれが本当に厄介だと言うようにに話す。
「悪魔の信仰……それがどんな思想なのかは知らないですけど、その人たちが世界を滅ぼそうとしているんですか?」
「厳密には違います。燈さん。その人間の信仰心、悪意とでも言いましょうか。それを使って、悪魔が世界を滅ぼそうとしているのです。彼らの思考はすでに常人では測れない思想となっており、その力の源を、貴方達に絶ってきてほしいのです。」
要は、悪魔が人間の力を吸い取って世界を壊そうとしてるから、その元になる物を俺たちにどうにかしてほしい、と。だが……
「ミルチさん、それだけじゃ俺たちがその世界に行く説明になってない。確かに世界の、というか、俺たちの住む『場所』の危機なんだろう。でも、わざわざ無力な俺たちが行く意味が分からない。」
「ええ。それに、そこまでわかっているんだったらあなたたち天使や神が何とかできるんじゃないですか?」
「影児、燈、そんな言い方、ミルチさんに失礼だよ。」
「そ、そうですよ。天使様ですよ?」
二人がなんか言ってるが、これを聞きださないと納得できない。燈も同意見のようで、二人の意見は無視している。そしてミルチは気にしなくて結構ですよ、と笑顔で言った後に続ける。
「燈さん、影児くんの言う通りですね。それが可能であれば、私たちが何とかしています。しかし、できない理由が2つ。そして、私があなたたちに頼んでいる理由が1つ、です。」
右手で指を二つ、左手で指を一つ立てながらミルチは続ける。
「できない理由の一つはまず、こういった世界の危機に神や天使は直接手を下せないということです。先のDCCの悪魔たちもですが、我々のようなものが直接手を下すだけで、世界が滅びかねません。これは『虚空蔵書』に定められる世界の決まりです。」
「虚空蔵書?……ってなんですかミルチさん」
「簡単に言えば、世界の決まりです。アカシックレコードとも言いますね。」
「ああ、そういう『概念』があるってことか。」
「えっと、つまり、世界の法律、みたいな物があるってことかな?」
「違うわね。法律は、何をしたらどう罰せられるかが記されてる物。ミルチさんが言っているのは、『やったらどうなるか記されてる本』じゃなくて、『そもそもの決まり事、つまりやったらいけないこと、やるべきことが書かれてる本』があるってことね。」
「燈先輩の例えが分かりやすいです!」
さすが燈。こういう説明を砕いて伝えるのが分かりやすい。俺は勝手に一人で納得しちまって、相手に伝えるのは苦手だからな。
「分かりやすく言い換えていただきありがとうございます。燈さん。先の理由から、私たち天使や神は動けません。私たちが世界を壊すのは本意ではないので。そしてもう一つですが、万が一先の理由を顧みず、我々天使や神がその世界に乗り込むことを恐れてか、すでに結界を張られているのです。」
「悪魔が結界をその世界に張ってるから、天使や神も下手に突破できないってことか。無理くり突破はできそうだけど、それをしたら結果世界が崩壊する。悪魔たちの勝利ってわけか。」
「その通りです。影児くん。以上が理由で、私たちは直接動けません。そうしたところで頼りにするのが、あなたたちのような人間です。」
なるほど、天使や神が解決できない理由はわかった。燈も納得はしたみたいだな。洸太と花井も、首を縦に振っている。
「ではミルチさん。なぜ僕たちなのでしょうか。」
「そうですね。これは先の悪魔が結界を張っていることにも関連してきます。DCCのいる世界に人間を送るにも、条件がいくつかあります。まず第一条件として、この悪魔の結界を通り抜けられること。第二に、魂の器の大きさです。」
「結界を通り抜けられるって言うのはなんとなく分かりますけど、魂の器って言うのは?」
「DCCのいる世界は、先ほど私が行使したような『魔法』が存在する世界です。送った先で何もできないと、それこそ無駄死にをしてしまうこともあり得るので。この『魂の器』が大きいほど、『魔法』の才が大きいことを示します。これは生まれながらに決まっているので、もともと大きい方を選ぶ必要がありました。」
「それが、俺たちってわけか。」
ミルチは笑顔でそうです、と頷く。一応、理屈は通っている。通ってはいるが、なんだ?違和感が……
「実を言うと、ここに来るという『天命』は3名のはずでした。花井香澄さん……貴女は正直想定外だったんです。」
「ええ?じゃあなんで私も……?」
「……あなたたちはここに来る前、車に轢かれそうになりましたね?」
そうだ。こんな状況になって忘れていた。俺たちは車に轢かれそうになって、ここに来たんだ。
「実はこれ自体が想定外でした。本当ならあなたたちは今夜眠りについた時点で呼ぶ予定だったんです。その方が危険がないと思いましたので。しかし、何かが干渉し、貴方達を事故が起こるようにしたため、急きょまとめて召喚することになってしまいました。その何かは今捜査していますが……」
「香澄ちゃんは、どうなるんですか?」
「僕たちみたいに選ばれなかったってことは、このまま帰ったほうがいいんじゃ……」
「先ほども言いましたが、この『場』に呼ばれた時点で、帰ることは不可能です。それに選ばれてないとはいえ、ここに来た時点で結界を通る資格はあるでしょう。あとは魂の器の方ですが、こちらも十分な大きさです。」
ここに来た時点でってことは、花井はもしかしたらここに来れなかった可能性もあったってことか?
「香澄さんがこの『場』に来れたのは3人が一緒にいたからです。3人と離れたくないと香澄さんが願い、3人も離れたくないと願った結果でしょう。そうでなければ、おそらく香澄さんはあのまま車に轢かれて死んでいました。」
「な……!」
そう考えると、よかったってことになるのか?でも、もとはといえば花井が俺に突っかかってきたのが原因だし……何とも言えんな。まあ死人が出るよりはいいか。
「そう考えると、私がここにいるのは先輩たちのおかげなんですね……!」
「よかったよ香澄ちゃん。あ、でも僕らが巻き込んだことになるのかな。」
「巻き込んでくれてよかったですよ。そうじゃないと私、轢かれてそのまま死んでたみたいですし……!信条先輩と一緒でよかったです!」
「わ!?ちょ、香澄ちゃん!?」
衝撃の事実ってやつを打ち明けられて、ちょっとはへこむと思ったが洸太と引っ付くのに利用してるな。……こんな状況だってのに。燈も呆れてんな。さて、面倒だが話を続けるか。
「ミルチさん。ここまでの流れはわかった。けど、あといくつか聞きたいことがある。
「なんでしょうか、影児くん。」
「俺たちは、元の世界に帰れるのか?」
これだ。別の世界とやらに行って世界を救ったとして、元の世界に戻れなかったら元も子もない。この質問には洸太や花井も騒ぐのをやめて、真剣に聞いていた。
「もちろん。悪魔の元を絶ち、結界がなくなれば元の世界に戻すのは可能です。」
「そう、か。そりゃよかったよ。」
全員が息をつく。これで帰れませんなんて言われたらどうしようかと思ったよ。
「それじゃあ私からも。多分影児と同じ質問でしょうから。さっき魔法がある世界って言ってましたけど、私たちも使えるようになるんですか?」
それだ。なんだかんだ言って魔法とかは使って見たいし、ナイス燈。
「そのままだと使えません。なのでこれを渡します。」
そう言うとミルチは四つの水晶のようなものを宙に呼び出した。それが宙を動き俺たちの目の前に止まる。これも魔法なのか?
「それは天装器(てんしょうき)と言って、私たち天使が扱う武器。貴方たちの赴く世界の人間は、魔脈(まみゃく)という管が全身に生まれつき血管の様に巡っていて魔力を感じ魔法を扱えるのですが、あなたたちにはそれが無く、また後天的に植え付けたりはできません。なので、天装器にその変わりをしてもらいます。」
この天装器っていうのが俺たちの武器になるわけか。
「えっと、どうすればいいんですか?」
「それに触れてください。そうすれば各々に最適な形となります。出し入れも体内に微粒子となってできます。人体に影響はないのでご安心を。」
最適な形、ねぇ。どうなるか気になるし、ここは……と。
「洸太、じっけn……先遣隊としてよろしく。」
「今実験体って言おうとしたよね!?まあいいよ。どうせ反対してもやらされるんだろうし。」
「よくお分かりで。ほれ、燈と花井も気になってるから、早めに頼むぜ。」
はいはい、っと言いながら洸太は水晶体、『天装器』に手を触れる。光ったりはせず、そのままうにょうにょと形を変え洸太に引っ付いてていく。思ったより気持ちわるい。
「うわあ……」
燈、声に出てるぞ。気持ちはわかるが。
「これが、僕の……」
しばらくして動かなくなった洸太の『天装器』は、両腕に装着された『籠手』。肘ほどまでのもので、両腕に装着されており、色は白。洸太のことだから聖剣!とか出るかもと思ったが、そこは使用者に最適になる武器。洸太の得意な徒手打撃を生かしたものになったってことか。
「うん。すごくしっくりくる。みんなもやってみなよ!」
どうやら害とかはないようだ。それを見て俺と燈、花井もそれぞれの『天装器』に手を伸ばす。洸太の物と同じようにうにょうにょと動き、俺の物は腕ではなくそのまま足へと動き、形を成していく。
「こりゃあ、脛当て……どころじゃないな」
脛どころか太ももあたりまで武装してある。蹴り技主体の俺にとっちゃあ確かにしっくりくる。色は黒。洸太とは違うな。色も何かに関係あんのか?
「わあ、大きい杖です・・・!」
花井のは杖か。短い杖ではなく、言っていた通り花井の身長より少し短いくらい。ゲームとかで魔法使いが使ってそうな、テンプレ的なやつだな。先端は丸く、水色の水晶がはまっている。色は全体的に茶色。
「これ……手袋?」
燈のは見るからに手袋。特徴的なのは指の第二関節部分にあるリング。燈は俺たちと違って武術とかやってこなかったはずなのに、意外だな。色はなんだ?緑というか、翡翠って言うのか、綺麗な色だ。
「うん。これで準備はいいですね。それぞれ、使い方や魔法のことは向こうの世界……魔芯界(ましんかい)で学んでください。話は通してありますので。」
「通してあるって、誰に……?それに、時間の猶予は?」
「行けばわかります。近くに転移させますので。そして時間の猶予はおそらくあと一年から二年ほど。その間に大本を絶ってください。……すみませんが、よろしくお願いします。」
ミルチが地に立ち、頭を下げる。天使が人間に頭を下げるものなのか。それは、天使という種族を知らない俺たちにとって、どんな思いなのかはわからない。
「ミルチさん、頭を上げてください。困っている人がいるなら、助けるのは当たり前です!」
「そ、そうです!信条先輩の言う通りです!それに、私たちの世界も無関係じゃありませんから!」
洸太が言った後に花井が連ねて言う。まあ、あとだしじゃんけんみたいな状況だったとはいえ、こいつらの言う通りなんだろう。
「文句言っても仕方なさそうだしな。面倒だけど行くしかねえだろ。」
「期間は長いけど、みんなと一緒に、家族の元に帰るために。」
……そうだよな。親父やおふくろたち、家族のためにも、やるしかないんだ。
「皆さん、ありがとうございます。」
とミルチが再度頭を下げていると、俺たちの周囲から光があふれ始めた。
そして徐々に視界が白になっていき、意識はそこで途切れていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この『場』から4人の人間の気配が消え、私は頭を上げる。そして、思いを込めて口に出す。
「ようやくあの人間たちを送り出せました。余計な詮索はせず、従順にこちらのいうことを聞いておけばいいものを。しかも私の『治癒聖法』まで使い『魔法』などと同列に扱ってしまうとは……!!」
人間たちを納得させるためとはいえ屈辱だ。あの場では早く次の話に進みたかったからとはいえ……しかしこれは神の意向。完遂させなくては。
「「相変わらずキッツイねー!」」
やっと仕事が終わったと思ったら今度は彼らですか。
「なんですかジェミニ。貴方方が来るのは聞いていませんが?」
現れたのは二つの影。ジェミニというのは彼らの総称。瓜二つの子供っぽい容姿だが、違いはそれぞれの髪。黒髪なのは同じだが、前髪の一部に金のメッシュと銀のメッシュ。
「「だって言ってないからね。」」
悪びれもせずしれっと言うあたり、ほんと腹ただしいですね。
「何をしに来たのです。『現質界(げんしつかい)』の召喚者4人は私の担当です。それがあのお方が決められた『天命』。変更は無いはずですが?」
「おお、怖い怖い。」
「そんなに眉間にシワ寄せてたら、幸せ逃げるよ?」
「よっぽど燃やされたいみたいね。」
あまりにうるさいから『聖法(せいほう)』の炎を右手に宿す。本気で争う気はありませんが、少々痛い目に遭ってもらいましょうか。
「はは、からかうのはここまでにして帰ろうかな。」
「そうだね。目的も果たせたし。」
「……目的?」
「『現質界』からの招待客を見たかったのさ。」
「これからの『ゲーム』の主役でしょ?」
「彼らに話していない……というより、意図的に騙したことも含めて楽しませてもらうよ。」
「「僕らは『先導者』からはあぶれちゃったからさ。」」
最後のセリフを言った時にはジェミニは私に背を向けて走り去っていた。
そう、『ゲーム』。あの方が始められたこの遊戯は、もう止まることはない。
「ふふふ……。私は貴方のお役に立って見せます。それが私の生きがいであり、役割ですから。」
―――――――――――――――――――――――――――
「あははは!あの天使、相変わらずの忠誠心だったね!」
「そうだね。でも、その方が立ち回りやすい。僕らがいたのも気づかなかった訳だし。」
「そうだね。そして『あいつ』の言う通り、現質界からは4人。人物も聞いてた通り。しかも天装器まで身につけさせてさ。……どうする?」
「『あいつ』の言ってることは間違いじゃなかった。言いなりになる訳じゃないけど、このまま『ゲーム』を進めるのは確かに不愉快だね。」
「それじゃ、やっぱり?」
「うん。共闘だ。僕らも送り出そう、あの娘を。」
「ははは!結局『先導者』になるね!でも、どこまで伝えられるのかな?」
「そうだなぁ。天装器の秘密と、『あいつ』と僕らのことくらいかな。さすがに『ゲーム』のことを話すと、僕らもやばそうだ。」
「やっぱそうだよね。それじゃあ急ごうか。あの娘も起きてるだろうし。」
「「さあ、愉快でクソッタレなゲームのはじまりだ!!」」
「……ウチは一体?ここは……どこだ?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます