夏休み目前
第34話 俺氏、不良になる
「行ってきまーす」
誰もいない家に、暫くの間帰れないことを無意識の中で理解しながら別れの挨拶を
授業がないとはいえ、この暑さの下で学校に向かうのはそれだけで月曜日の憂鬱さに拍車をかけると言うもの。
真夏の湿気を多く含み、更に太陽が眩しく輝き続けることによって与えられる暑さとはかけ離れた別世界のように、空気は冷え快適な空間を生み出しているだろうことを頭におき、重たい足に鞭を打ち歩を進める。
俺はまだホームルームの時間まで余裕があるなと思いながらその先の楽園(教室)を夢にガラリとスライド式の扉を自分一人分がすんなり入れるくらいの隙間を開け、後ろ手で扉を閉めた。
「あぁー、ここがパラダイス…」
思わずクラスメイトの奇異の目線を気にすることなく独り言が勝手に出てきてしまうほどの心地良さだった。
だと言うのに俺の気持ちは黒板に書かれている一文で秒速で萎えた。何て残酷で惨いのか。現実は非常であった。
一学期最終日までまだ4日もあるだろうと言うのに、何故か今日終業式が開くことを学校に着く直前まですっかり忘れていた。
この暑さで一時間ちょっと体育館で700は居るだろう生徒を密集させようと言うのか。密集、密接、密閉の三密は避けられないだろう。
部活動の一環として朝から体育館で活動をしていた者たちは口を揃えて「サウナだ」「蒸し風呂だ」「俺たちは慣れてるがお前らは無理だ」と、いけしゃあしゃあと息巻く陽キャグループ。
俺はその中に交じることもなく。いつも通り一人の友達を待つとした。
ギャルグループはどうやら南以外は登校を完了させているみたいで、この暑さでは当然イケてる女子も人間は卒業することは出来ないので汗はかいているようだ。ポロシャツが肌にベッタリと張り付くのはやはり生唾ものである。風を衣服と肌の間に送りたい気持ちが
俺は、終業式くらい大丈夫だよなと普段の俺なら殴って正常に戻すだろう考えに不信感を抱くこともなく、教室同様のオアシス──保健室──を目指してまた地獄への通路を我慢し重たい足に何度も鞭を打ち続け歩く。
鞭の打ち過ぎて恐らく俺の太腿は赤く腫れているだろう。それを理由に保健室でサボることにした。
俺はこの日初めて、不良になりました。
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