第33話 自分を変えた一週間
もうすぐ日曜日も終わりを迎え、寝床に着けば、そこからは地獄の月曜日が再び始まろうとしていた。
学校が五日間始まるのは変わらないことだが、もう授業はなく後は夏休みの準備の為に学校に行くようなものなので、正直そこまで辛くはない。
二週間前にテスト期間が終わり、そして後の一週間──つまり先週の五日間──に、テストで出題した範囲と同じ範囲をおさらいすることで、力を確実につけるというのが、学校の方針であり、またそれが見事なものだと思った。
殆どの生徒がテスト期間で一時的とはいえ、頭に叩き込んでまで詰め込んだ範囲は、数週間も経てば忘れるのが落ちだろう。
しかし、テストの後に同じ範囲をまた少し見直すことで確実に力が着くのだ。
力が着いたかどうかは、学年末テストの点数が証拠だった。
中学の頃から比べ物にならないくらいに、自分の点数が数段とアップしているとわかった時と言えば、言葉にし難い感動が自分を襲ったものだ。
そして俺は今、自宅の家のソファーでゾンビのように沈みかけていた。
早尾の家で昼飯を食べてからは、お互いに疲れていたからか、ゲームは止めてテレビ画面に有名な動画投稿サイトを接続させて利用し、色々な動画を漁って時間を潰していた。
その途中で、昨日コンビニまでスポーツドリンクを買ってきてもらうために、暑い中わざわざ外に出てもらった南と三浦さんに感謝の礼をLINEで送るやなんやで盛り上がったのは、また別の話だ。
それにしても……、
「あぁー、疲れたなぁ……」
休日を大変充実したと思わせるほどに中身の濃い土日を過ごした疲労が一気に押し寄せて来ていたのだった。
とても楽しく、また楽しくもない事もあったわけだが、それでも一週間前までこの達成感や進捗の喜びなどは感じられなかった。
それを必要としていなかった一週間前まで過ごし方をどれだけ思い出そうとしても、知ってしまった今となっては、もう味気ないと感じる。
俺はソファーに沈みこんでしまうと、起き上がるには、起き上がろうと決意を抱いてから動き出すまでいつもかなりの時間を要する。
俺はソファーに体全身を預けていた体制から少し体を持ち上げ、ゆっくりと立ち上がる。
俺の体はもっと前へ進みたいと、そう言っているようだった。
「あら。あんたがこの時間帯に腐らずに、動き出すなんて珍しいわね」
「別に……。てか俺だって動くわ、どこに感動してんだよ」
何処の家庭にもいそうな平凡的なお母さんが、いつもはもっとダラダラと全力で怠けている俺と違った行動パターンをしているの見て、目をまん丸にして驚いている。
「へぇー、あんたもとうとう心変わりしたようだねぇ。関心関心」
「褒められてる気がしないんだが……」
「安心なさい。褒めてるわよー?」
ニヨニヨと嫌なニヤケ顔をする母さんから顔を逸らす。
「前まで、あー動かなくていいなら一生動かないわー、とか言ってたじゃない。それに比べたら成長してるのよ」
「言ったような、言ってなかったような……」
嘘だ。しっかりと今でも覚えている。
でも、母さんに直接、「成長した」と言って褒められるのは少し、恥ずかしく感じた。
俺はそれを隠すために急いで自分の部屋に逃げた。
母さんはそれを見てクスクスと楽しそうに笑うのが背中から聞こえたが聞こえないふりをして扉を閉める音がリビングまで届くようにわざと乱暴に閉めたのだった。
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