乱闘ゲーム、再び!

第24話 気が利く男

 1日にして二度目の早尾の自宅へと乗り込んだ。

 さっきと違うことと言えば俺と南の他に三浦さんも加わったことだろう。

 その三浦さんはと言えば、他人ひとの家に上がり特に興奮するようすもなくただただ、「暑い」とボヤいては手で風を送っているだけだった。


 実際三浦さんが言うように、外も暑いが家は家でこれまた熱が籠っており大変蒸し暑い。言うならばサウナ状態だ。

 この状態に知らず知らずのうちに慣れてしまうことで熱中症になり、命を落とすことへと繋がるのだろうことは最近の課題とも言える。


 どうやら家には両親共々土曜日も仕事のようで帰ってくるのは夜遅いのだと言った。

 妹がいるのがどうかは知らないが、だいぶ前に両親は昔から共働きで世話を見ることが出来ないからと、寂しくないように1人で遊べるものをいつも買ってくれていたみたいだった。すると、外で遊ぶわけでもなく家でゲームや漫画を読み続けるうちに、やがてそれが今の早尾を形作ったらしかった。


 やはりその話を思い返すに、妹がいるならば多少は外で遊んだり寂しい思いをする必要は無いかもしれないなと思い直し、ならあの少女は一体誰だったのだろうかと、俺には到底関係の無い話に無意識のうちに執着しゅうちゃくしていた。


「あ、三浦さん、安心して?僕の部屋はクーラー付けっぱなしだから」


 どうやらこの男、気が利く男である。

 俺たちが解散しようがしなかろうがどの道このファミレスから帰ってくれば自分の部屋に戻ってくることを考慮してクーラーを付けっぱなしで家を出ていたみたいだ。


 それに最近の話では、1時間ちょっとで帰る程度なら、クーラーの温度設定を27℃程度にしておいたままで放置する方がエコだと聞いたことがある。

 早尾がデキる男だと誰もが思った。



 早尾はお茶を用意するからと、先に行っておくように促してきたので素直にそれに従った。

 早尾の部屋は2階に位置するので、階段を先に上がった。

 部屋を開けると冷たい冷気が逃げ出していった。俺たちはいそいそと部屋の中に入った。


 少し高めに設定されているため快適とまではいかなくとも、外やサウナ状態の家に比べれば断然涼しいと思えた。


「はぁー、涼しい」


「ちょ、温度下げね?涼しいけどまだ足りないでしょ」


 そういうやいなや、早速テーブルの上に置かれてあるリモコンを手に取りピッピッピッと音を立てて操作した。

 部屋の隅っこに設置されているエアコンは先程よりゴゴゴと音を激しく立て始めた。それがエアコンが正常に機能しているのだと言外に理解出来た。


 それにしても、中々早尾が登ってこないのでおかしいなと不審に思い、様子を確認しにおりることにした。


「ちょっと早尾が遅いから様子見てくるわ」


「ん?リョーかいっ」


「4人分のお茶持ってくるのに手こずってるんじゃね?」


「はははたしかに」と言う笑い声を背中に聞き流しながら扉をパタリと閉めた。

 特におかしな様子もなかったので、多分大丈夫だろうと思ったが、それこそ熱中症になっているのかもしれないと思い杞憂であってくれと願いながら、早尾が入っていった部屋を勢いよく開けた。

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