第22話 メロンソーダ
モグモグと小ぶりな口にハンバーグを放り込む三浦さん。それを見ながらメロンソーダをチビチビと口に含む。
コーラは3杯目辺りから飽きが来たのでメロンソーダに変更した。ちなみに今メロンソーダは3杯目だ。この味も飽きてきた頃のなので次は何にしようかとドリンクバーの種類を思い返す。
「で、なんで私呼ばれたん?いきなりだったからビックリしたんだけど」
「あー、ごめん、なんか女1人ってちょっとキツくってさー」
うぐっ、と喉が詰まりかけたところでメロンソーダで飲み下す。
「あーね。もしかして、手出されたとか?なんか顔色も悪いし」
「え?あー!いや違う違う。それはない」
南が否定したのを見てホッと安堵の息を漏らした。横からも同じく息を漏らしていたので早尾もヒヤヒヤしていたようだ。
「ふーん?まっ、いいけど。暇だったし」
そういえば、昨日南が突然遊びに誘って来たもんだから驚いて思考が上手く回らなかったわけだが、なんで南は1人で俺達と遊ぼうと考えたのだろうか。そこまで考えが及ばなかったので、本人に聞いてみることにした。
「そういえばさ、南。なんでいきなり俺達と遊ぼうって思ったわけ?」
「確かに。どーしてなん?それに結局は私呼んでるし」
「んー、」
三浦さんまでもが疑問に思ったところから考えるに、どうやらギャルグループの中で俺達とこの土日遊びに行ってみれば?的な話になった訳ではないことが窺える。
「なんとなく?」
「はぁー?なんとなく?」
「そ。なんとなく」
俺も早尾と口をポカーンとアホ面のように開けてしまった。
え?なんとなく?本気か?貴重な土曜日をたったそれだけの理由で?理由かどうかすら怪しいけど、それでいいのか?……わからん。ギャルの考えていることがさっぱりわからん。
「あ、でもさ、ゲーム楽しかったし、結果オーライ的な?」
「はぁ…。あんたって、ほんと短絡的っていうか、能無しって言うか」
やれやれと言った感じで両腕をアメリカ人のように持ち上げて首を横にふる。
呆れた三浦さんの様子を見て納得のいかない様子の南が憤慨する。
「は、はぁー?別にそこまで言わなくても良いでしょ!別に短絡的の何が悪いって言うのよ!」
「えー?あー、うん、ごめんごめん。機嫌なおして?そこまで怒らなくても」
「ふんがー!許せん許せんー!」
怒っているぞアピールを激しく示すと同時に三浦さんの前にある食器に残る野菜と切り分けられたハンバーグをパクッと食べてしまった。
「あっ、あー!ちょ、アカリあんた何勝手に!」
初めて三浦さんが取り乱すのを見た。いつも取り澄ましたような表情の三浦さんが、焦り慌てる様子を見るのは少し、ほんのちょっぴりだが嬉しく、女の子っぽい表情もするもんなんだなと見惚れていた。
「ふふふっ、ふぁきにひぃふぁへたのはふぉっひだふぁら(訳:先に仕掛けたのはそっちだから)」
「何言ってるか分かんないから!…ホントにもうっ」
許さないからと三浦さんの眼光が物語っていた。人三人は殺ってる目をしている。こ、こえぇ。
いつも涼し気な様子の彼女の取り乱した姿は今でも瞼に鮮烈に残っている。
さっきより格別にメロンソーダが美味しいと感じた。あともう一杯はメロンソーダいけるな、うん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます