第16話 乱闘オールスターで白熱
「よしゃー!とうとうオタク君にも勝った!」
「南さん凄いね、ははは」
俺が早尾のベットの上で寝転がりながら漫画を読んでいたら、不意に南の勝利宣告が聞こえてきたので漫画からテレビ画面へと視点を帰ると、その先には早尾の操作していたキャラクターが例の如く横たわっていた。逆に、南が操作しているくノ一をベースとしたキャラクターは言うとクナイを片手に持った方とは逆の腕を印を結ぶ形をしている。多分それが勝ちをおさめたときの立ち姿だ。
「え?てか早尾負けたのか?嘘だろ……」
「うん。負けちゃったお。完敗ではないけど」
「まぁ?激闘って感じ?高梨と比べてちょい強かったかな?」
「ぐっ、やめろやめろ。それは言うな」
早尾の得意とするゲームの種類はシューティングやRPGと格闘ゲームを含めて多様だ。本人曰くパズルやクイズ等は苦手らしい。どうしても楽しめないと言う。脳裏に勉強がチラつくようだ。それは凄くわかるし、俺も同意見でクイズやパズルは苦手としている。
ちなみに格闘ゲームは俺も得意にしていたのだが、正直今はそれが危ういところだ。もしかしなくとも俺は下手くそなのだろう……。
「よし、次は得意キャラで攻めるお!負けられない戦いがここにある!キリッ」
「はぁ?ちょーよゆーだわ。どっからでもかかってこいって感じ?」
南は負けず嫌いな
もう耳に馴染んだバトルの掛け声が部屋に
バトル開始の合図と同時にお互いが様子を見ることもなく南の使うキャラクター──くノ一をモチーフにしたデザイン──を一気に早尾の操作するキャラクター──足が長く、黒光りと鋭さに恍惚とさせる刀を持つ男──の元へと詰め寄る。
くノ一は忍者をモチーフにしているだけあって行動コマンド一つ一つが繊細で細やかに動く。その器用な身の子なしをするくノ一に刀を持った男キャラは翻弄されることがなく、受け身とカウンターで確実にダメージを相手に与えていた。
くノ一は行動のモーションは一つ一つが小さく速いがその代わり射程距離が短く相手の懐に飛び込まなくてはいけないのがデメリットである。
なんと早尾の操作する男キャラクターは刀の分射程距離が長いのだ。更に近距離では足蹴りを繰り出す始末で隙がない。くノ一との相性は最悪と言える。
早尾の刀の受け流しとカウンター、そしてやっと踏み込めた領域までも足蹴りで
だがそれは、単にその刀の男キャラが強いだけでなく、くノ一に隙を一秒たりとも見せない程の徹底さがあるからに過ぎない。つたり、早尾の本気がくノ一を完封していたのだ。
「くそっ、これ積みゲーじゃんかよォー」
「実は弱点がこの男にもあるんだけど、それは言わないでおくよ。さぁ!さっさと朽ちろ!」
南がぶーぶーと文句を言いながらコントローラーを操作する横で、つい気分が良くなったのか普段の早尾とは性格が掛け離れた乱暴な言葉遣いに変わっていた。あー、わかるわかる。自分の得意キャラで無双してると気分が上がるあれな。すごい分かるわ。
早尾の台詞に共感しながらも、分からないことがあった。
この早尾が操作している男キャラに弱点があるのかと言うことだ。これには南も同じことを思っていたようで「弱点ー?ねぇだろこれチートだチート!」と文句が加速をする一方。
くノ一の状況は劣勢であり、一方刀の男はと言えばまだピンピンしていた。
刀の音は体力ゲージが
この格闘ゲーム『乱闘オールスター』の知名度が高い理由の一つとして、体力ゲージの減少により変化が加わることにある。
その変化とは、何となく察しが着くだろうが、そう、なんとこのゲーム、プレイキャラクターの服が体力ゲージの現象と共に乱れていくのだった。
男は、逞しいムキムキの筋肉や、激戦を彷彿とさせるおびただしい傷の数々。
女は、
当然男プレイヤーは女キャラクターを頻繁に使うことになる。逆もまた然り。
しかし、今回は早尾は男キャラを使い、南は女キャラを使う。その状況がこの画面で繰り広げられる攻防戦に、より性欲をくすぐられる。
刀を片手で構える男は衣服の所々に鋭利な物で切り刻まれたような跡が残っており、表情からはまだまだ戦えそうなのが伝わる。
くノ一はといえば、スラリとしたモデルのような身体にピッチリと張り付くタイツのような物に身を包んでいたのだろうが、局部以外の殆どの部分から肌色が露出されている。
当然攻撃を受ければ受けるほどに服装ははだけていく仕組みなのでそれに乗っ取った結果と言える。
南もそれを理解しているので、これ以上負けてはなるものかと必死に食いつくものの、その努力は虚しくも空回りし、逆に地道にダメージをちょこちょこと貰っている。
そうすれば当然少しずつ服装にダメージが伝わるので少しずつ、確実に立ち絵に影響を及ぼし、画面に写るくノ一も艶っぽい表情をしている。
そこから(南の)乱れ方は酷く、ダメージを受ける度に(コントーローラーが)激しくガクガクと震えており、もう(バトルも)潮時かと思われた時、最後のピリオドは八尾の手によって下され、女は火山だまりに溜まったマグマが吹き出すように、勢い良く逝った(ライフがゼロになった)。
格闘ゲームで盛り上がっていた際に生じた熱気なのか、それとも『乱闘オールスター』の性的コンテンツによって当てられてしまった熱気なのか判別が出来なくなったあたりで、早尾はリモコンに手を伸ばし、設定温度をさらに下げたのだった。
暫くの間、沈黙が部屋を支配していた。
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