Ally-19:壮絶なる★ARAI(あるいは、限りなく/漆黒に近いグレー)
あまりに物事がうまく行きすぎている件に、これ今日の朝くらいのくだりから全部が全部、夢だったりしないよな……的な、何か揺らいでしまいそうなことを考えてしまうけれど。
ことはそう単純すんなりには運びそうにないことに気付いて僕は口を開き、
で、でもそのくらい買い物するとなると……やっぱり先立つモノは必要だよね……と提言してみる。と、
「
との有難い(ありえないという意味での)御言葉をいただき、あ、いやこれ現実だ、僕の大脳じゃあ夢でもこんな五次元曼荼羅絵図を描けるはずがない……と、改めての自分の立ち位置を内腿の辺りを思い切りつねることで得られた痛みによって確認する僕だけれど。
何じゃご、カネんごっちょ、そうならそう言うがばじ、と、おもむろに自分のフライトパンツから細い
残高ゼロのクオカードが数枚と、くしゃくしゃになった何年か前の商店街の福引券補助券が2枚、そして小銭ばかり計1,282円也の現金、後は大量のレシートがあるばかりだった……
げ、現金ば持たん主義がいや、このご時世フツーやろちょ? とか、じゃあ見せなくてよかったんじゃとか思いつつも、
とは言え僕もカツカツの日々を送っているので人のことは言えない。母親がひとりで兄と僕とを養ってくれているんだ。月の昼食代込みのお小遣いが一万円でも贅沢はもちろん言えないし、感謝しているくらい。まあそれでも貯金くらいはあるけど。うーんでもあのお金は僕の崇高な趣味に費やそうと思って血のにじむような努力で貯めてきた魂の積立金なんだよね……
「
とか思ってたら、勝手に話を進められてしまう。昼飯代を資金に充てようということ? でもこの育ちざかりにそれは殺生では?
「崇高なる目的がにょ為には、
僕の承諾とかは完全に端折って、遠い目で格好つけてくるけれど、その下からねめつける視線は、その真ん前に座る三ツ輪さんにロックオンされている……そう言えば聞いたことがある。三ツ輪さん家がかなりの裕福な家庭であるということを。いやかなりを通り越して両親が共に外資のコンサルで働いているそうで、何故子供たちを私立とかに通わせないのかが謎なほどだそう。うぅん、それを知ってて完全にたかろうとしている体だね、何と言うか、怖れと畏れが多いいのですけれど。と、
「……私も親に抑えられてるから、何に使ったかとかバレるとちょっとなんだよね……弟らはもう放任って感じで自由に使ってるみたいだけれど……」
いやいや、そんな申し訳なさそうに言われても!! そもそもがおかしな話だからね? 三ツ輪さんが少し俯き加減で放つ、天上のソナチネのような(これは有りそう)言葉に、僕の方こそ申し訳なさで一杯になってしまうのだけれど。
「あ、でも!! ふたりの分の、その、お弁当なら作ってこれるよ? 私も今日は調子悪かったから食堂で軽く済ませたけど普段はそうだし……リコ姉と分担してやってるから、二人分が四人分になっても全然、問題は無いし……」
何ですと?
「……
うん、どういうキャラで行こうとしてるんだろう……でもアライくんの為す諸々のことが、強力な磁場で何かを引き寄せようとしていることはもう明白だ。今まで搾取に搾取を重ねられていた「幸運」という名の死蔵金を、ここに来て僕らは一挙に引き出そうとでもしているのだろうか……ッ!!
「……そんでごぼ、『道』ば繋がったとよ。副団長よ、申し訳ついでに『あの者』どもを呼んではくれんかのう……」
迷惑ついでに、という文言も追加しておいた方がいいと思うけれど、またも不穏なことを言い出す御大。「道」とか抽象的なことを言い出した時のアライくんは、本当にやばいのであって、まあこの後、度し難いことになることはこの時点において負の期待度5くらいで確定していたのだけれど。
アライくんは、機を見るに敏である(良くも悪くも)。
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