Ally-08:存外なる★ARAI(あるいは、バックミンス気分で/露見ローリー)
そんな、日常と非日常の狭間のような一夜が明けてみれば、やはりまた「日常」と呼ぶべきしか無さそうな日々がやって来るわけで。本日もまた気持ちの良い晴天であり。
春日井さん家の件があってから、土日を挟んでの月曜日。いつもの電車でいつも通り始業の五分前に教室に入ると、いつも通りのざわめきがあって。
静かに入室した僕に挨拶なんかしてくれる人はもちろん無く、視線すら向けられることもほぼ無かったのだけれど、それはそれでいつものことだ。いてもいなくてもいい人材としてパッシブに避けられている感じ。まあそれはいいんだけど。
それよりも窓側の一番前の席、出席番号1番の席の周りに珍しく人だかりが出来ていることを見て、あれ、となるけれど。と、
「……が、がばばばばばッ!! ほうじゃろうけ、こ、こんのザリついた音ごば、シブかちゅうこつなんじよ。く、クリアぃな
その輪の中心にいるのがアライくんであることは、完全に調子に乗った声色と声量と
見なくても分かったけど、先週手に入れた「ウォークマン」を見せびらかして悦に入っているということはもう鮮明な映像として大脳に浮かんでいたわけで、果たしてその脳内ビジョンと実際の網膜を通して送られてくる
と、そこでまた非日常が起こったのであった。
「こ、こういうのってデザインもいいよね……それに四十年も前のものがちゃんと機能しているのっていうのも何か凄い……」
おずおずと、という表現がぴったり来るような、しかしてその天上の鈴が如くの(そんなものがあるかは知らないけど)声が、常々尋常ならざるしゃがれ声に、時に激しく、時にねちねちといたぶられている僕の鼓膜を優しく癒すかのように甘く震わせてくる。
人だかりの中でも褪せない輝きを放つ、その人影。ほんの少し焦げ茶色に染めました、くらいの髪色はひょっとしたら地色かも知れない。この場に蔓延する度し難くぬるりずんめりとした空気を孕んでなお、ふわりと重力を感じさせない軽やかさをもって薄茶色の
決して派手な見栄えでは無い。けど柔らかな視線を放つ艶めいた
「
だいたいが「
ままならない顔面のまま視線を、そこに天使の羽根が見当たらないことに逆に違和感を感じるほどになった三ツ輪さんの華奢な肩越しに、その後ろでふんぞり返りながら、真っ黄色のスポンジ状の
アライくんは、いろいろと存外だ。
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