神創世界ト破滅世界

RAID

1.知られぬ始まり

「ベイン……お前とは分かり合えると思っていたのだがな…」


「兄さん……」


その言葉の瞬間、部屋中は真っ白に照らされ、神々しい存在が現れた。


「……ゲームの始まりだ…。」





アレイスタシア。この世界の名前だ。この世界は

を受けており、最高神ホムラによる監視を受けている。神々は世界に直接手出しすることはだが、神託という形で世界に言葉を与えることができる。しかし、例外がある。神は一度人々に力を与えようとした。もちろん、という条件付きで。だが、それが神の理を乱した。人々に力は渡った。しかし、神がそれを監視及び管理する権限を持つことは出来なかった。それ故、アレイスタシアは発展した世界でありながら、不安定な可能性を持つ世界となってしまった…。

だがこれらを知る者は神以外おらず、誰も知らずに時は過ぎていくのだった。





「レオン…レオ、、レオン!起きて!」


妹に起こされ、朝を知る。これが俺の毎日だ。ここはヒスタリア王国の王都…俺が住んでいる場所だ。


「レオン、朝ごはんできてるわよ」


お義母さんおかあさんに言われテーブルを見ると、目玉焼きとパンが置いてあった。


「いただきます!はふっ……!」


いつも思うが、とても美味しい。目玉焼きのきみとパンが絡まり、至高の味を表現している。


「…幸せだ」


(だけど、俺はやらなければならないことがある…。この幸せは、続かない…)


俺が何故こんな物騒なことを考えているか…それを説明するには10年程遡らなければならないだろう…。






いつも幸せだった。たった5、6歳程度の歳だったが、はっきりと記憶に写っていた。こんな日々が続いて欲しかった。しかし、その願いに運命は答えてはくれなかった…。

とある日のことだ。

ある害獣がいじゅうが俺の…いや、俺たちの住んでいたファーム市を襲ってきた。しかしその害獣は弱く、数は少し多かったが門番や獣破団じゅうはだんによって殲滅された。しかし、負の連鎖は止まらなかった。害獣はそれだけでは無かった。一体いたのだ。だが、その害獣に誰も抵抗出来ずに、門番や獣破団だけでなく、多くの住民も死んだ。そして、俺の母親は…目の前で一瞬にしておよそ32の肉片に散らばり、安らかに成仏も出来ずにこの世を去った。死に際に聞こえたのは、「妹を守りなさいという一言」。父は見当たらなかった。きっとどこかで生き延びている、そう信じたかった。母がそう言って倒れると、今度は俺に目を向けた。そしてそいつは俺と妹を見て、しばらくして殺さずに去っていった。真っ白な思考の中、まだ赤ん坊の妹の泣き声を聞いて俺は現実に引き戻された。そして夢ではないと、残酷ながらに解ってしまった。そして妹と一緒に泣きながら決意したのだ。

(俺はあいつを、害獣を殺す!全て、全て倒す!…そして、そこに黒幕がいるのなら、その負の連鎖の元を断つ!ぶっ殺してやる…!!)






「あの事件を思い出していたのかい?」


回想に浸っていると、お義父さんおとうさんが問いかけてきた。妹とお義母さんの姿は見当たらない。どうやら買い出しに行ったようだ。


「はい…。お義父さんおとうさん達に保護されていなければ俺たちは今生きていません。本当に感謝しています」


「…本当に入るつもりなのかい……獣破団じゅうはだんに」


「それは変わっていません。あの日あのとき、俺は決意したんです」


獣破団じゅうはだん。対害獣ギルドで、害獣を専門に狩る組織だ。害獣とはおよそ200年前から発生しだした生物。動物と違い、危術きじゅつと呼ばれる謎の技を扱う。に恐れた人類は害獣を専門に討伐するギルド、獣破団を設立し、対害獣の人々である獣破士じゅうはしが誕生したのだった。俺はあの日から、獣破士になると決めていた。


「…僕は止めたい。…だが、僕に君を止める権利はない。ただ一つだけ。…無茶はしないでくれ」


「はい。分かってます」


無茶をするかどうかは正直分からない。だが、今はそう答えるしかなかった。


「うん。…あ、そうそう。今日でレオンは16歳。成人したからね。これを」


「…ポーション?」


ポーション。それは薬草を混ぜて加工を施して出来たもの。これを飲めばある程度の傷を即効で治すことができる。ポーションには初級から始まり、中級、上級があるのだが、これは上級だろう。なかなかに金がかかるはずだ。どこから手に入れたのか…。


「ありがとうございます」


「あぁ…いいんだ。あまりいい思いもさせてあげれなかったし。それに獣破士になるんだろ?回復アイテムは必須さ。」


「………本当に、ありがとうございました!」


「妹さんは……置いていくつもりかい?」


俺の体が少しの反応を見せる。


「ここにはもう戻ってこないつもりだろう?…分かるんだよ。妹さんに無理をさせたくないんだね」


「妹は…俺と違って両親の記憶がありません。だから…尚のことつらい思いをしたはずです。せめて妹には、良い思いをさせてあげたい」


「…分かったよ。職業ジョブの理解はしているのかい?レオンの職業ジョブが、スキルがレオンの役に立つものでありますように。」


「…妹をお願いします」


こうして俺は、入団試験を受けるため、獣破団のアジトに向かうのだった。






獣破団本部。ここでは年に一度獣破士になる為の特別試験が行われる(ちなみに日は年ごとにバラバラ)。参加条件は成人以上。俺は今日、5月5日に誕生日を迎え条件を満たした訳となる。

害獣は危術を使う。それに対して人間は生身で戦うわけではない。古代から人々には職業ジョブがあり、その職業が持つを使用することで害獣に対抗してきた。職業は世界に一つだけでかぶることはない。そしてその職業は成人になると共に理解することが出来る。だから俺はもう職業が分かっている。そして今保有しているスキルも分かっている。職業の中のスキルをどう伸ばすかは本人次第だ。俺は必ずスキルをレベルアップさせ、強くなってみせる。


(職業は、スキルは…無限の可能性を持っているのだ!職業で、スキルで、俺の力で、俺はあいつを…そして黒幕を倒すんだ!)


そのためにもまず獣破士になる必要がある。俺は試験会場に入り受付を済ませ、この胸の高鳴りを抑えるため、開始の時間まで、惰眠を謳歌するのだった。






しばらくして、予め録音されたかのような機械的な声が鳴り響く。


「お越し頂いた皆様、ようこそ、獣破団へ。これより一次試験会場に移動して頂きます。、指示に従って移動をお願いします」


始まりの合図がなり、空想から現実に引き戻される。そして始まったのだった、第一ステージが。

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