炎の帰還者

「炎の帰還者」

(ティガー・K・テーリッツ編)


これまでのあらすじ

不良に因縁をつけられアームヘッドバトルを強要されたティガー。警察も巻き込むバトルになり不良の礼三郎先輩をなんとか倒すも母の友人、宝生旬香に補導されかけてしまった!

  


テキーラカーの中。「ぼっちゃん、なにやってんすかあ」暗黒テキーラ昼寝男が呆れた声を出す。暗黒は姉さんと昼寝道場に行ったあと呼び出され不機嫌だ。「僕は巻き込まれただけだ」「ま、そうなんでしょうね」暗黒は興味が無さそうだ。宝生ビンタの頬が痛む。母さんの代わりにした、だそうだ。

  


宝生さんは腰を痛めてレスリングを引退したあと警察の広報担当という名目でより手のつかない礼三郎めいた不良対策の最終兵器として警察入りしたのだ。「宝生さん、強いな...」「へっそりゃ奥様に匹敵しやすからね!」「暗黒も強いの?」「へっ試してみやすか?」「うーん」  


そういえばエイワズちゃんはどうしたのだろう。僕が強ければ守りきれたのでは?逃がす必要もなく。「ねえ、やっぱ相手してくれる?」


目の前にセイントメシアサード。遥か昔の旧世代機だ。愛機を失った暗黒は現在この機体を愛用する。帰ったあと、姉さんとひと悶着あったあと、次の日。暗黒の実力を見るとなった流れだ。だが旧世代機のサードととマーニの性能差は明白。勝負になるだろうか...。ここは山の麓にある村井演習場。

  


マーニは広い場所で本領を発揮出来るアームヘッドだ。高速巡航形態と手足を駆使した対多数戦、さらに前回は使えなかったクアンタブルライトブレードダガーが使えるのだ。だが、実力派集団フォールンエンゼルの中でも屈指の実力者だった暗黒を甘く見てはいけないのだ。試合開始だ。マーニがビークル変形!

  


このまま、フットクロウで捕らえて一本勝ちだ!サードは右ダテモノを構える。マーニが衝突!岩!ダテモノの強力ウィンチがサードもろとも反対側の地面へ移動させた!ダテモノパージ!さらに左ダテモノ!ダテモノの強力ウィンチがマーニを捕らえる!ダテモノの捕獲速度はマーニより速い!

  


「慢心しているから...ロートルにも勝てないんですよ。ぼっちゃん?」サードがダテモノの刃をマーニに向ける。...負けた。暗黒の実力は礼三郎先輩を遥かに上回る。「こんなに父さんは強いの?」「こんなものじゃないですよ。あっしの遥か上です。ご両親、そして幸太郎おじいちゃんはね」

  


「...どうすれば、強くなれる?」「もう少しで社長が帰ってきます。教えを乞うといいいでしょう」帰還するあの男...。




空港。一つの飛行機が降りてきた。もうすぐおじさんたちが戻ってくるのだ。おじいちゃんの弟だからおじさんではないのだけどなんていうんだっけ?ともかく久しぶりの再会だし、僕も姉さんもそわそわしている。しばらくすると三人の人影が見えてきた。一人は村井研究所の現所長である村井行幸博士だ。

  


父は村井幸太郎の遺言で村井アームヘッドの社長を押し付けられ、そのあおりで父を助ける為に行幸さんが所長となったのだ。現行のアームヘッドの多くが村井行幸の設計であるという。一部の都市伝説は村井行幸が身を呈して研究所を敵のアームヘッドから守ったと語っている。そして隣にいるのが村井アームヘッド現社長だ。

  


「秋那ちゃん!ティガーちゃん!久しぶりじゃない!」社長の声だ。村井アームヘッド現社長、父からその職を継いだ鬼灯弓、村井行幸の妻だ。鬼灯社長は村井幸太郎の死後、行幸と出会った。その後結婚、そしてメキメキと頭角をあらわし父にとって面倒だった村井アームヘッド社長を押し付けられた。

  


「ティガー君、話は聞いたよ。君を鍛えてあげよう」行幸おじさんが言った。


「筋肉だ」行幸おじさんは言った。背中に娘の春夏ちゃんを乗せ片手で腕立て伏せをしながら。「ぼ、僕もやったほうが良いでしょうか...?」無理...。「いや、その必要はない。昔、言っただろう。アームヘッドは筋肉だ、と」アームヘッドの設計談義を思い出す、幻のアブソリュートオメガ...。「はい」

  


「設計士はアームヘッドの構造を理解すべきだ、お前にはそれが出来ている。俺のように体を鍛えるのではない、兄貴のようにアームヘッドを理解すべきだ」「つまり...」「自分の持ち味を活かすのだ、筋肉の動きを見れば敵の行動が分かる。そしてお前はアームヘッドの構造が分かる。弱点が突ける」

  


「...はい」「というわけで修行だ、もうすぐ春休みだろう。まずは腕立て伏せだ」「え?」修行の日々が始まった。勿論体力をつけるだのアームヘッドの勉強などで行幸おじさんのようなことは流石にしなかった。そして春休み中のある日、あの男が僕の家を訪ねてきた。「オッピョッポッポ!」

  

「何しに来たんです?捕まったんじゃ...?」礼三郎先輩と五人の舎弟を見る。「金の力でなんとかした。ところでティガー君!君はもうすぐ中学生だろう!」なんで知ってるんだ?「ええ...」「そこでだ!君を我が派閥の参謀にスカウトしたい、俺は君と同じ白雪中学校にいるのだ!」最悪過ぎる。

  


「断っ...」「ところで!今日は悪いニュースもある...」これが悪いニュースじゃないのか...。「説明するのだ!」「オッピョ!」舎弟が言う。「烏谷先輩がティガーさんに目をつけました。喧嘩を吹っ掛けると思われます」烏谷先輩...?「魔法少女の異名を持つ男だ。さらに不思議な...」

  


ピンポーン、チャイムが鳴った。「烏谷だぜ…」「もうきやがった」「情報下さいよ!」第二の先輩...。


「烏谷だぜ...」「もうきやがった!」「情報下さいよ!」礼三郎先輩の後ろ!「烏谷だぜ...」細長い長身の男!「烏谷だぜ...」「ちょうどいい!ティガー君!我々に君の実力を見せてくれ!」「それはいい考えだ!場所を貸そう!」行幸おじさん。「烏谷だぜ...」ついに戦いが始まった。

  


場所は暗黒と戦った場所と同じだ。敵のアームヘッドは水陸両用アームヘッド水無月型だ。杖のような武器を装備している。「このアームヘッドは魔法少女フェニキアよ!」烏谷の裏声!同じ事しか繰り返さなかった烏谷がついに感情を覗かせた!だがまだ不気味!いつもなら突撃する。だが様子を見よう。


魔法少女フェニキアが杖を掲げた。一体何をする気だ...?「ライトニング♪」雷鳴!曇り雲が現れた!電撃がマーニを襲う!正直予想外だ!かわす!普通の雷なら避けれぬ!スピードは鈍いがこれは...魔法?「フロスト♪」周囲の気温が低下...?マーニの手が凍りつく!「ウフフ」不気味!烏谷先輩は笑う!

  


筋肉なんて関係ないのでは...?よぎる疑念...。水無月というアームヘッドについて思い出せ...。あれは水中で扱うようにしてある。そうあれは普通のアームヘッドよりも足腰が弱い。水の上のクジラが自重で潰れるように...。覚醒壁の斥力場にも限界がある。

  


ならば!やることは一つ!敵の氷魔法で動きを封じられる前に相手の股間を狙う。本当に少女にしてやるぜ!「ライトニング♪」敵のアームヘッドは単調に魔法を撃ってくるだけだ。逆だ。それしか出来ないのだ。雷が落ちる!ダガーを避雷針に!水無月では陸上での動きは普通のアームヘッドより鈍い!

  


魔法少女フェニキアの前に到達!股関節に去勢の一撃を喰らわす!「ウフフ、分身魔法♪」分身?「あれは九先輩!烏谷先輩は二人組だと聞いたことがある!」礼三郎先輩の舎弟が言う!早く言ってください...。「九だぜ...。魔法少女フリギアよ」後ろに水無月型二機目だ!「ウフフ、トドメ♪」その時!

  


聞いたことがない声が聞こえた。「む、あれは俺の発明品ではないか」内から響くような声が...。マーニが自然に飛翔した。「おぬしら、勝手に俺の発明品を使いおって、どうなっても知らんぞ!」「ウフフ、なんの事かしら」先輩どもがいう。これはどこからの声だ?マーニ?

  


「おぬしら、名乗れ!」マーニが言う。「烏谷だぜ...」「九だぜ...」「あんただれだ?」先輩がハモる。「俺はスウマだ!」マーニが答えた。  


目の前に仮面を被った赤い男がいた。初めて見る。僕はマーニの覚醒時、この男になった。感じるのはそれ以来。実際姿を見るのは初めてだ。「本当はでしゃばるつもりはなかったんじゃ」スウマが言った。「では、なぜ今出てきたんですか?」「俺の発明品を悪用するものたちがいる」「誰です?」

  


「わからぬ...。だが俺にとってはどうでもいい、もはやあの程度危険でもないからな」「じゃあなぜ?」「俺は不肖の弟子、ゴレンをとっちめるためにこのエクザイル領域に都市政府によって派遣された。まあ返り討ちにあって骨を埋めることになったがの。だが俺が蘇ったということは奴も...」

  


意識が現実に戻る...。マーニが炎を纏う。マーニの調和能力!「炎魔法!」「邪悪!」両先輩ともに怯む!魔法少女アームヘッドが炎上!アームヘッドは炎に弱い!「降参するか...?」「くっ」「仕方ない...」炎が消えた。...あまり途中から修行の意味がなくなったような気がするが...。

  


僕はマーニのコクピットにしばらくいた。「…俺は奴を倒せねばならぬ!我が娘ドーボーキをだ!」スウマは言った。ドーボーキのアームコア...。僕はマーニのアームコア、スウマを見つけた時、それに隣合うアームコアを一つ見つけた。それは姉さんのアームヘッドに使っているのだ...。


部屋に戻ると万雷の拍手。「おめでとう!合格だ!」礼三郎先輩。「烏谷だぜ...」烏谷先輩が握手を求める。「美しい友情!」烏谷先輩もグル?「我ら9人で無敵チームよ!」「チーム名はどうします?」「あっしにいい考えが...」暗黒...。「あなたは!?」「フォールンエンゼルの名を継げ」

  


「で、伝説の!?良いのですか?」礼三郎先輩が感極まる。「良い…。我らの名を絶やすな...」「はい!」なぜかウマのあう暗黒と礼三郎先輩...。「ティガー君、凄かったわよ!」秋那姉さんだ。「...!?…お美しい!あなたは!」礼三郎先輩は赤くなっている。秋那姉さんがウインクした。

  


「私が秋那よ!」姉さんはなぜか得意気だ。「で、伝説の!?あの宝生旬香の再来!生ける伝説の!」旧伝説も生きてるんだが...。「そうよ!全中アームヘッドチャンピオンよ!あなた、アームヘッド部の部長になりなさい!世界を狙うの!」「俺が...部長...?」「部長!」「部長!」「部長!」「部長!」

  


「…なるぜ...。部長!」「オッピョポッポポー!」「不良は卒業だ!」「おおー!」「烏谷達もいいな?」「烏谷だぜ」「ティガー君も不良は卒業だ!」「ええ...」そもそも不良になる気は無いんだが...。「決まりだ!二代目フォールンエンゼル!世界を取るぜ!」「頑張って!」「はい!秋那さん!」

  


こうして僕が不良になる危機は脱した。だがマーニの謎...。そしてそもそも礼三郎先輩は部長になれるのか?問題はまだ多い...。


炎の帰還者終わり

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