第18話 呼び出しー大神 龍生ー

目の前には、何も知らずにいる春日井組の若頭、春日井響。


こいつはガーディアンという組織の頭をはっていただけあって、

喧嘩も強いし、カリスマ性もあるのは確かだ、この世界でも将来

実力で十分、俺とこの竜神会を引っ張っていくだろう。


だが・・・まだこいつは甘い。


その甘さが今回、玲を巻き込んだ。


今回、この場に呼んだのはそれを分からせるため、そして、こいつに

その始末をさせるため。


後、玲がもう二度と春日井の手に入らない存在であると知らしめるため


こいつらが玲を探しているのは知っていた、だからこそ今まで情報を

隠してきたが、もうそろそろ終わりにしてもいいだろう。



そんな事を考えていると、親父が口を開いた。


「今回来てもらったのは、一つは今後の竜神会を支えていく二人の

 若頭の顔合わせ。

 もう一つは、先日家の若頭である龍生の嫁が攫われた一件について

 春日井組の若頭にも関係があって来てもらった。」


親父の言葉に、春日井響は「ハッ!?」と短い声を上げた。


顔を見れば、困惑の表情だ。


後ろに控えている若頭の側近も然り。


そりゃそうだ、こいつらは何も知らない。


一瞬の沈黙の後、俺の後ろに控えていた京が経緯を話はじめた。


「家の若頭と若姐さんが結婚したのは約3年前になります。

 それ以前二人は同じ高校の先輩後輩として過ごしておりました。

 今回、若姐さんを攫う計画を企て実行したのは、その時同じ学校

 で、後輩としていた女と若姐さんの義妹と母親です。

 理由は逆恨みと妬み、嫉妬といったところでしょうか。

 今、組の地下にその実行犯の女を捉えています。

 春日井組の若頭と側近の方にも関係のある方なので、一緒に地下に

 来て確認していただきたいと思います。

 宜しいでしょうか?」


春日井組の3人は、黙って頷く。


そして、俺達は組の地下室へと歩みを進めた。




薄暗い階段をおりていくと、少し淀んだ空気に交じって錆びた鉄のような

匂いが鼻につく。


鉄格子の小窓がついた思い扉を開くと、コンクリートの打ちっぱなしの

空間が広がる。


その空間に椅子に座らせられ手足を固定された女がいた。


女は俺達の姿を見て甲高い声で怒鳴り散らす。


「早くここから出しなさいよ!私が何をしたっていうのよ!

 あの女さえいなかったら、私はこんな事にならなかったのに!

 畜生!!」


その女の声と姿に春日井組の3人が目を見開くのが分かった。


「・・・まさか、美乃里なのか・・・。」


「美乃里は組の店で監視されていたんじゃないのか?」


「どういう事だ・・・。」



3人共、ここにこの馬鹿女がいることに驚きを隠せずにいた。



そんな3人に俺は冷ややかな目を向けつつ話す。


「お前達は、この馬鹿女が店から逃げたのを知らなかったのか?

 こいつは、半年前に店から逃げて、あろうことか荒巻組の若頭の

 女になってたんだ。

 そして、組員を使って俺の嫁を海外に売り飛ばす計画を立てた。

 まあ、そんな計画は直ぐに潰したがな。

 頼みの荒巻組ももう無くなったし、後はこいつを処分するだけだ。」


ここまで話したところで奴らの顔を見れば、自分たちの落ち度に

気がついたのか悔しさを顔に滲ませていた。


「この女の処分は俺達がしてもいいが、お前達に名誉挽回の機会を

 与えようかと思ってな。

 さあ、どうする?」


春日井響は俺の問いかけにハッとしたように顔を上げると、先程とは

違いしっかりと俺に目線を合わせると


「この女の処分は、家の春日井組できっちりとさせて頂きます。

 ご配慮ありがとうございます。」


「あぁ、ではこの女の処分は任せる。

 そして、二度と陽の目を見せることのないようにしてくれ。」


「はい」


「じゃあ、上に戻って茶でも飲もう。

 お前達に合わせたい人がいる。」


「はい」


そして、俺達は薄暗い階段を上って行った。


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