第15話 織田 宗志 


俺の後ろでは今にも爆発しそうな怒りを湛えている鬼がいる。


不機嫌MAXの原因は十分すぎるほど、よく分かる。


何てったって、溺愛している嫁を囮に使うのだから・・・。


俺だって、可愛い妹を囮には使いたくはなかったが、玲本人の頼み

に、流石の龍生も折れざる終えなかった。


それに、きっとこれで全てを終わりにしたいという玲の気持ちも

理解してのことだろう。


自分をあっさり捨てた両親、我儘な妹・・・。




駅前の玲についていた護衛から、玲がワンボックスカーに乗ったと

連絡が入った。


玲のピアスにつけているGPSと盗聴器を作動させる。


車は、町はずれの港に向かっているようだ。


港には倉庫がいくつかある、確か荒巻組の所有する倉庫もあったはずだ。


京の指示で既に、倉庫には家の組員が待機している。



盗聴器からは、玲が薬を嗅がされたのか眠ったようで、その横で母親と

思しき女と男達の会話が聞こえてくる。


「玲を倉庫に運んだら、私は帰っていいのよね。」


「ああ、俺達はその女さえ手に入ればそれでいいからな。

 後は好きにすればいい。

 仕事の事は、若姐さんから聞けばいい。

 若姐さんも、倉庫に来ているはずだからな。」


「ホント、こんな子の所為で私は散々だわ。

 これで、居なくなってくれて仕事も、愛美も幸せになれるなら十分よ」


「ったく、それでも母親かよ。こえーよな。」


「私には愛美がいればそれでいいの。余計なお世話よ。」


「そーかい、まあ、お幸せに。」




聞いているだけで、ムカついて来る会話が繰り替えされていた。


まあ、今のうちに余裕に浸っていろ、お前達が待つのは地獄だからな。


後ろの座席で無言のまま、恐ろしい程の殺気を垂れ流す鬼に嫌な汗が

流れるまま、車を港に走らせた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る