第14話 過去との決別

龍生から愛美の話を聞いてから暫く経った。


今日は朝から本家に蓮を連れ遊びに来ていた。


蓮は強面の組員さん達にも、全く怖がらず懐いているので皆に

可愛がられている。


そんな蓮の様子を見ながら、龍生の母でこの大神組の姐でもある

弥生さんとお茶をしていた。


「玲ちゃん、最近はどう?」


「そうですねー、蓮も大分大きくなってきたし、龍生の忙しさは

 相変わらずですけど、大分落ち着いて生活できるようになって

 きました。」


「それは良かったわ。

 でも、なんか面倒な虫が寄って来てるって聞くけど、大丈夫?」


「そうみたいですね。

 でも、龍生に任せてるので、大丈夫だと思います。」


「なら良いけど、何かあったら遠慮せず言ってよ。」


「はい、もちろん。」


そんな会話をしていると私のスマホが鳴った。


見ると知らない番号・・・


弥生さんに目くばせしながら、電話に出た。


「・・・はい。」


「玲、玲なの?久しぶりね、お母さんよ。」


ハッ!?私を捨てた母親?


今更何の話があって電話してきたのか?


ましてや、この番号は限られた人しか知らないはず・・・。


私は、電話をスピーカーにして会話を続けた。


「私を捨てた母親が今更何の用があって電話してきたの?」


「何言ってるの?私は玲と縁を切るなんて反対したけど、聞いて

 もらえなかったのよ。

 でも私は玲を産んだ母親よ、縁は切れない。

 玲に会いたいの。」


「私は会いたくない。」


「一生のお願いよ、私と会ってちょうだい。

 明日の11:00に〇〇駅前に来て。車で待ってるわ。

 この事は誰にも秘密よ。玲一人で来てね。

 お母さんのために必ず来てよ、お願いね。」


自分の言いたい事だけ告げると、電話は切れてしまった。



「等々痺れを切らして動き出すようね。」


やれやれとうんざりした感じで弥生さんが喋る。


でも、口角が少し上がっている。


「じゃあ、こちらも作戦会議といきましょうか。」


「はい、そうですね。」


弥生さんの言葉に応える私の口角も上がっている事だろう。




馬鹿な人達・・・


私が以前のままだと思っているのだろう、でも、残念ながら私も

この3年でかなり成長したのよ。




母からの電話から一時間程で、本家の応接室には主要なメンバーが

揃っていた。




「では、私から状況の概要を説明させていただきます。」


見た目まるで裏の世界に関わりなさそうな容姿の京さんが説明し出した。


「今回の発端は玲さんの義妹、有田愛美が若に惚れたことから始まり

 ました。

 ____________________________________________________

________________________________________以上です。」


京さんの説明が終わると、皆の顔が顰められる。


「懲りない女だな・・・。

 まぁ、誰に喧嘩を売ったのかキッチリ分からせなとな。」


怒りを抑えながら龍生が低い声を出す。




翌日、私は母親の電話のとおり、〇〇駅前に来ていた。


10分程立っていると、前にいかにもというワンボックスカーが止まり

中から久しぶりに見る母親が「玲」と名前を呼び手招きした。


何も疑っていない素振りで「久しぶり」と挨拶を交わす。


車の後部座席のドアが開くと「乗って」と促され、車に乗った。


運転席と助手席に柄の悪そうな男、私の隣には母親・・・


席に座ると直ぐ後ろから口元に何かで覆われた。


薄れゆく意識の中、母親が薄く笑っている顔が見えた・・・。


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