第11話 真相

ガーディアンの二階には5人の男がソファーに座っていた。


その顔には、何か浮かない表情が張り付く。


「なぁ~、俺達何を見てたのかな・・・」


類の弱々しい声がぽつりと部屋に落ちる。


その言葉に他の4人の顔が歪む。





玲が美乃里を攫った首謀者としてガーディアンを追放してから俺達の

心には、何とも言えない喪失感があった。


信じた仲間に裏切られた思い、悔しさ・・・。


玲は追放した翌日、跡形もなくいなくなってしまっていた。



攫われる事件があった後も、俺の彼女として美乃里は毎日Barについて来た


でも、俺は段々美乃里との時間が苦痛になってきていた。


そりゃそうだろう・・・元々、好きではない女なんだから・・・。


そう思い始めた頃、樹が俺に聞いて来た。


「響って、美乃里ちゃんに冷たいんじゃない?溺愛のお姫様だろ?」


「なんだよ、それ?」


「イヤ、言葉通りだけど?」


「俺は美乃里の事は別に好きでもないし、手も出してない。

 お前達や玲が言うから、付き合うっていうことにしただけだ。

 俺が好きなのは・・・玲だったからな・・・」


「ハァ~!?何だよ、それ!」


「でも、玲もいなくなってしまったしな・・・。

 俺は、何をしてたんだろうな・・・。」



そんな事を呟きながら紫煙が上に伸びるさまを眺めていた。


バタン!!


部屋の扉が荒々しく開けられると、肩で息をする類


「・・・俺、俺どうしよう・・・。」


「おい、類どうしたんだよ」


「俺達、間違ってたんだ・・・」


部屋に入ってきた途端、頭を抱えて吐き捨てるように話す類の姿に、俺と樹は

顔を見合わせる。


「俺さ、ここに来る途中で美乃里ちゃんを見かけたんだ。

 で、声を掛けようと思ったら美乃里ちゃんの横に車が止まって・・・。」


類は俺の顔を見上げたまま、言う事を躊躇する。


「類、見たままを言ってくれ、なぁ・・・。」


「車から男が美乃里ちゃんに声を掛けて・・・そしたら、美乃里ちゃんが

 笑顔で話して、男の車に乗っていなくなった。

 その男・・・美乃里ちゃんを攫うのを玲ちゃんに頼まれたって言ってた

 あの動画の男だった・・・。

 おかしいよなぁ・・・、なんで、自分を攫った奴と仲良さそうなんだよ。」


類は項垂れたまま、ソファーに力なく座った。


類の話に俺は頭をガツンと殴られたような衝撃のまま、唖然としてしまった。



「おい・・響、・・響!」


どれぐらいボーとしていたのだろう、多分1,2分だったのかもしれないが

俺には長い時間が過ぎたように感じていた。


俺を正気に戻したのは樹だった。


「皆を呼ぶからな」


その言葉の後、15分程でいつものメンバーが部屋に揃った。


樹から他のメンバーに先程の話が伝えられると、皆一様に苦悶の表情で

黙ってしまった。


「とりあえず、響は今まで通り美乃里ちゃんと付き合ってくれ、その間に

 俺達は裏を取る。分かったな。」


樹の指示に俺も皆も従った。



それから5日程で結果は簡単に出た。



「先ず、美乃里の攫われた事件は・・自作自演で、攫った奴らは、

 美乃里の地元の仲間だった。

 おまけに、最初の俺達との出会いも美乃里の仕組んだものだった。

 どうやら、ガーディアンの姫になりたかったらしい。

 で、ここに来たら玲がいて面白くなかったと・・・

 調べたら、ここに来てから玲に毎日出て行けと脅しをかけていたらしい、

 それでも出て行かない玲にしびれを切らして、動画や自作自演で追放

 されるようにした。

 動画の女は、玲に似た地元の仲間にやらせたみたいだな・・・。」


樹の淡々とした口調で伝えられた結果は、俺達の犯した罪の重さを物語って

いた。



「なんだよ・・・それ・・・。俺は、何してんだよ・・・。」


怒り、悔しさ、自分の不甲斐なさ・・・あらゆる思いで、頭の中が

ぐしゃぐしゃだった。


他の皆の顔にも、怒りと共に罪悪感や後悔の気持ちが現れていた。


「響、どうするんだ。」



「・・・明日、終わらせよう・・・。」


いつものように俺は美乃里と一緒にガーディアンの二階に上った。


部屋の中には、皆が揃っている。


「こんにちは!今日は皆揃ってるんだね!

 美乃里、皆に会えて嬉しいな!」


部屋の雰囲気は最悪なのに、平然と笑っているこいつはまだ自分の

置かれている状況に気づきもしないようだ。


「美乃里、今日は話があるんだ。」


「え、何?」ニコニコと俺を見る美乃里に反吐が出る。


「美乃里を特別なところに招待しようと思って、用意したんだ。」


「うそ、ホント!嬉しい!」


「あぁ、美乃里には似合いの最高の場所だ。おい、入れ!」


俺の言葉と共に黒ずくめの男が2人、部屋に入ってくると、美乃里を

両脇からがっちり捕まえる。


「え、何、どういうこと!離しなさいよ!」


「美乃里、玲や俺達を嵌めて楽しかったか?」


「響、何言ってるの?私がそんな事するわけないじゃない!」


「もう、証拠はあがってるんだよ。」


そう言って、美乃里の目の前に主犯の男とのツーショットの写真


美乃里のふりをした女の写真など証拠を並べた。


すると、流石の美乃里も観念したようで顔を歪めて言い放った。


「そうよ、あんた達も馬鹿よね!あんな簡単に騙されて。

 玲なんて、あんた達に捨てられてあの顔面白かったわよね。」


「そう、俺達が馬鹿だったんだ・・・。

 玲の事はこれから探して、償うつもりだ。

 だが、その前にお前の処分をしないとな。バイバイ、美乃里」


「イヤー!!」


美乃里は組の奴らに引きずられていった。


もう、二度と陽の目を見れない場所に行く・・・。





それから俺達は玲の行方を捜したが、行方は用として知れなかった。


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