第12話 新たな動き
三年後
「マーマー」
朝からよちよち歩きの
可愛さに思わず抱っこすると、ニコニコ笑って私にしがみついてくる。
「パパを起こしにいこう!」
「こう!」
寝室で寝ている龍生の隣に蓮を降ろすと、蓮が龍生の顔をペチペチと
叩く。
「パーパー、オッキー」
「こら蓮、あんまりパパを叩くなよ。はい、起きたぞ。」
あれから・・・
私は高校を卒業し男の子を出産した。
今は大神組の若姐として子育て組のこととで奮闘中だ。
龍生は、大学に進学しながら組とフロント企業の経営と大忙しだ。
この3年間、いろいろな事があった。
私達が結婚をしても、龍生の人を魅了する容姿と地位に寄ってくる女は
後を絶たず、その処理に手を焼いているのが兄の宗志だった。
女達の鉾策はやはり女の私に向くもので、誘拐未遂や暗殺計画まであった
のには身震いしたくらいだ。
そういう事もあり、私は大学進学は諦め、本家でお義母さんと過ごしている。
最近は、そういう事件もなく穏やかにすごしていたのだが・・・。
テーブルの向かい側に座り、朝食を食べる龍生の顔を見つめた。
「俺の顔に何かついてるのか?」
「う~ん、最近何かあったの?」
私の顔をジッと見た後「フッ」っと息を漏らした。
「やっぱり玲には隠し事はできないな。」
「どういうこと?」
「まぁ、コーヒー用意してくれ、あっちでゆっくり話そう」
龍生は、蓮を抱っこしてリビングのソファーに向かった。
コーヒーを用意して向かうと、蓮はリビングに設置したサークルの中で
遊んでいた。
「実はまた面倒なのに付きまとわれているんだが・・・・
「ハッ!有田愛美!」
「あぁ、お前の義理の妹か」
「愛美は、龍生が私と結婚してるって知っているの?」
「いや、知らないだろう。」
愛美・・・有田の家を出てからの愛美の事は分からないが、以前と
変わっていなければ、かなり面倒な相手だ。
我儘で、自分の想い道理に行かなければ納得しない。
何も起こらなければいいが・・・。
そんな心配する思いが顔に出ていたのか、龍生が額にキスをした。
「キャ!何」
「そんな心配するな、義妹のことは一通り調べてどんな奴か分かっている。
玲は、自分の身の心配をしろ。
ああゆう奴は、どんな手でも使ってこようとするからな。」
「そうだね、私には蓮もいるし、気を付ける。」
「あぁ、そうしてくれ。」
そう言って、今度は熱いキスを唇に落とした。
大神龍生said
玲とこの地に戻って三年の月日が流れた。
この三年は、俺も玲も決して生易しいものではなかった。
玲に至っては、慣れない生活の上に養子になったり結婚したり、
護身術の稽古に若姐としての習い事に出産まで・・・。
おまけに、俺のせいで攫われそうになったり心の休まる日もなかった
だろう。
でも、泣き言も言わず俺についてきてくれた。
俺自身、組のことや大学に追われる生活で荒れそうな気持を、玲が
側にいることで踏ん張れている。
救われているのは、俺自身なんだろう。
ここにきてやっと、落ち着いた生活になってきたのに・・・。
大学のキャンパスを宗志と共に歩いていると、数メートル先に問題の
元凶がいるのが見え、思わず「チッ」と舌打ちしてしまう。
宗志も気づいたのか、あからさまに眉を寄せる。
「あ~!大神先輩~!おはようございます!
先輩と会えるなんて、愛美今日はついてるみたい~。」
は~、俺はアンラッキーだよ。
そんな俺の気持ちも知らず、猫なで声でベラベラ話出す女にうんざり
しながら、無視を決め込み教室に向かった。
隣を歩く宗志も右手を握りしめキレそうになるのを、我慢してるのが
ありありと見てとれた。
いくら俺が「帝王」と呼ばれ裏の世界で恐れられていたとしても、
一般人の女に手を出すわけにもいかない、ましてや、調べ見れば
玲の義妹・・・どうしたものか・・・。
ついつい後回しにしていたら、等々玲に義妹の存在を知られてしまった。
もう、早めに片付けるしかないな。
今日あたり、京も交えて対策をねるとしよう。
そう心に決め講義を受けることに専念した。
龍生said end
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