第8話 大神組

車が止まったのは、大きな屋敷の門の前だった。


車が止まるのを分かっていたかのように、静かに門が開く。


玄関までの長いスロープを車は静かに進む。


玄関の前には黒スーツの厳つい男たちが整列していた。


後部座席のドアを織田さんが開くと、龍生が降りる。


降りるのを戸惑う私に、龍生が微笑み頷くと手を伸ばしてきた。


私も龍生に微笑みながら応えるように頷き手を取り降り立つ。


「「 お帰りなさいませ!! 」」


「あぁ」一言返す龍生と頭を下げる私。




織田さんに連れてこられたのは、広い客間だった。


そこには二人の男女。おそらく、龍生の両親だろう。




「初めまして、早坂玲です。」


「玲さん、あんたは龍生が何物でも、何があっても離れないかな?

 綺麗ごとではすまない世界だ。

 犯罪者として警察に捕まるかもしれない、人も殺すかもしれない。

 それでも、ついていく覚悟はあるかい?」


恐ろしい程の威圧感とその内容に息がつまりそうだった。


でも・・・


「私には龍生さんの生きる世界の事はよく分かりません。

 ですが・・龍生さんに言われ私は全てを捨てて、ここに来ました。

 私には何もありません。

 この身も心も龍生さんに捧げると誓いこの場にいます。

 龍生さんと生きる道だけが、私の全てです。」


今、私が思う気持ちをそのまま伝え、向き合った。



「認めよう。龍生の見る目に間違いはないようだ。

 私は龍生の父親の大神 竜虎オオガミ リュウコ

 隣に座るのは妻の弥生ヤヨイだ。

 今後の事は、織田が説明する。」


客間で織田さんの説明が始まった。


先程までの押しつぶされおうな空気は何だったのかと思う程の

和やかな空気が流れている。


「先ず玲さんは私の娘になってもらいます。」


「エッ!!む、娘ですか!」

飲んでいたお茶を吹き出しそうになりながらも声を発する。


「はい、玲さんと龍生様が結婚するにしても、まだ龍生様は17歳です。

 法律上無理ですので、一先ず私の娘となって頂きます。

 龍生様が18になったところで、入籍する予定です。

 幸い玲さんは勘当されていますので、明日にでも早坂家に出向き養子縁組の

 手続きをしようと思っています。

 私の娘となることで、この世界のものも下手な手出しができなくなりますし

 丁度いいと思いまして。」


強面の織田さんが嬉しそうに言うから、私も素直に従うことにした。


「お父さん、よろしくお願いいます。」


「あぁ、今日からは玲と呼ぶからな。躾も厳しいからな覚悟しろよ。」


「はい、頑張ります。」


そう応えた私の頭を龍生がポンポンと撫でた。



私の新しい生活が始まる。


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