第4話 春日井 響

俺は春日井組組長の息子で物心ついた頃には護衛や側近やら厳つい男

に囲まれて育った。


小学校の高学年になる頃には、自分の容姿や背景で女が寄ってきた。


自分が女嫌いになるのは自然な流れだったと思う。


女嫌いながらも、男の欲はあるもので後腐れのない女を用意して

過ごしていた。


俺が高校生になった時、親父が繁華街の見回りも兼ねてチームでも

作らないかと提案があり、『ガーディアン』というチームを作った。


メンバーには、いつも俺とつるんでいた仲間達。


気がつくと俺の周りには、多くの仲間ができていて、ガーディアンも

この一帯では知らないものがいないくらい、最強の強さと人気を誇る

ものとなっていた。



俺達ガーディアンには、繁華街の治安維持の役割がある。


いつもの様に見回りをしていると、男と女の言い争う声が聞こえた。


向かうと女が殴られている!急いで助けに入る。


ケガをした女は、眼鏡に黒髪の地味な女だった。


俺の事を知らないのか、俺の顔を見ても何も反応しない。


そんな女に興味がわき、ガーディアンに連れて行った。


さっさと帰ろうとする女、目が暗く沈んでいるのが見て取れた。


こいつが笑う顔をみたいと思った。だからかな・・・


「お前、ひとりだろ。だったらここに顔を出せ。仲間になればいい」


そう言っていたんだ。




玲は少しずつ打ち解けていった。


笑顔も見せるようになって、俺もそんな玲の様子に嬉しくなっていた。


不器用だが、裏表のない玲に皆が大事な仲間として認めていた。


俺は・・・仲間以上のものを感じ始めていた・・・。


自分の気持ちに気づき始めていた頃、いつものように朝陽とBarに

向かっていると、玲に初めて会った時と同じような場面に遭遇した。


殴られている女・・・玲を思い出し、駆け寄る俺。


助けた女は、小さくて可愛い女だった。


そいつも玲と同じように俺の事を知らないようだった。


Barに連れていき手当をする。


玲も心配そうに手当していた。玲が女に笑いかけている姿を見て、

女友達を作ってあげたいと思った。


玲が大事にしたいと思った女を邪険に扱いたくないと思ったから

家まで送る事にしただけだった。


本当に、それだけだったんだ・・・。



次の日、Barに行くと皆がニヤニヤしている、玲まで・・・。


Barに助けてもらったお礼にと、菓子をもって美乃里が来た。


しょうがなく今日も送って行く。


送る車の中で、美乃里に告白された。


玲は地味だが身長も165㎝と高く近寄りがたい雰囲気をもった女。


美乃里は、小さくていかにも護ってあげたくなる、そんな女。


可愛い顔で見上げる美乃里に、その気はなかったが了承してしまった。



心のどこかで玲に嫉妬してほしかったのかもしれない。



次の日、付き合う事を報告すると、皆喜んでくれた。玲まで・・・。



玲の前で、いちゃつく俺と美乃里。


付き合って二週間、この頃から玲の様子が少し変わった。


美乃里が部屋に来ると、直ぐ帰るようになった。


初めは、やっと嫉妬してくれるようになったのかと思っていた。


でも・・・


美乃里が攫われた。


犯人探しに躍起になっていると、SNSに動画がアップされている。


玲とガラの悪い男がコソコソ話していた。


樹が美乃里に動画を見せると、男が美乃里を攫った奴だと言う。


どういう事だ!玲がやったのか!


美乃里が攫われた日から、玲もBarに顔を出さない。連絡もつかない。


そういうことなのか!?


3日後、部屋から顔がばれないようにか変装したような玲が出てきた

所を捕まえ、Barで問い質す。


マスクを外さず喋る玲。


聞いても「自分はやってない」と言う。動かぬ証拠があるのに・・。


俺は正直に話せば許そうと思ってたんだ。


俺だけじゃない、皆そう思っていた。


頑として認めない玲・・・。


ガーディアンの皆が、信じていたものに裏切られた気持ちで顔が歪んでいく。


もう・・・終わりだ・・・。



「正直に言えば許そうかとも思ったが、無駄だったな。

 お前は追放だ!もう、俺達の前に顔も見せるな、クズが!」




玲の最後の言葉は



「・・そう、私の事は信じないんだね。分かった。

 今まで居場所をくれてありがとう。・・さようなら。」




玲がいなくなった部屋で、俺達は裏切られた気持ちで、悔しさで・・・


・・・泣いた・・。



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