第2話 図書室

私は響たちとは別の高校に通っている。


至って普通の共学だが、ここでも『ガーディアン』の人気は凄い。


そんな中、地味な私があのBarに入るのを面白くない人達もいて、

嫌がらせや心無い言葉を浴びせられることも多い。


ここでの私は、黒縁メガネに目が隠れるくらいの前髪をした地味女。


特に仲の良い友達がいるわけでもなく、一人。


そんな私がホッとできるのは、図書室。


ここは、人が来なくて楽に息ができるから好きだ。


「また来たのか?」


椅子に腰かけると、奥から低めのハスキーボイスが届いた。


私の目線の先には、私と同じような黒縁メガネに黒髪、長めの前髪の

地味男、織田 龍生オダ リュウセイがソファーに横になっていた。


「ここが落ち着くからね。」


「フ・・、そうか・・・」


この織田龍生は、私の1つ上。何故かいつもここに居る。


「最近はどうだ?」


「あんまり変わらないよ。まあ、私がガーディアンと関りがあるのが

 面白くないんだろうけど・・・。」


「お姫様には、何もされてないか?」


「ん~、口で言われるくらいかな・・・。私が、ガーディアンと離れれば

 いいんだろうけどね。龍生はどう思う?」


「お前が離れたければ離れればいいし、居たければ居ればいい。

 俺は、お前の決めた事を応援するさ。」


「もう、決まらないじゃない。役立たずね。」


「一つ聞いてもいいか?」


「何?」


「何でこんな思いまでして、ガーディアンから離れないんだ。」


「ん~、ガーディアンはね初めて私に居場所をくれたの。

 私を信じてくれる人たちがいる大切な場所なの。

 自分から離れることは・・・ないかな。」

 



龍生は、私の言葉に「そうか・・」と気のない返事をかえすとソファーに

また横になった。


私も、持ってきた小説を静かに読みはじめた。


龍生との空間は心地が良い。


龍生と私が知り合ったのは、私がここに入学して暫く経ってから



入学して直ぐに、私が皆の憧れるガーディアンと仲が良いと知ると

妬みや嫉妬からか、いろんな人に呼び出されては嫌がらせを受ける

事が頻繁にあった。


そんな時、逃げ込んだ先が図書室だった。


誰もいないと思っていた図書室のソファーで寝転ぶ男。


至って普通の、イヤどちらかというと目立たない地味そうな男


その人は、私の存在に気がつくと起き上がり私を視界に入れた


地味な男のはずなのに、纏う雰囲気がどこか違う気がした



「少しここに居てもいいかな?」


遠慮気味にそう声をかけると、低めのハスキーボイスで


「別に、好きにすれば・・」


そうこたえた。




それからは、何かある度に図書室に行くようになった。


私が行くと、龍生はいつもソファーに横になっていた。


そして、少しずつ会話をするようになった。


龍生は私の一つ上だったけど、本人の希望で呼び捨てで呼んだ。



大した会話があるわけでもないけど、それでも龍生が私を受け入れて

くれていることは、なんとなく伝わってくる。




龍生との図書室は、もう一つの私の大事な居場所となった。


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