第4話


「こんなところあったんだー!意外と近いんだねー」

「そうだね」

そして二人で隣同士にベンチへ腰掛けた。

早速私は今まで貯めてきた疑問を切り出した。


「いきなりだけどさ」

「いいよ、言ってみな?」

「中学二年生の秋ぐらいから元気なくしたよね?」

「すごいピンポイントで当ててくるな本当すごいよな、お前」

「やっぱりなんかあったりした…?」

「うん…母ちゃんが事故で死んだ…」

あっさり言ったけど瞳が潤んでいることがわかった。そんな大変なことがあったんだ。そりゃあ元気もなくなるよね。と思っていると笑輝がこう言った

「当時の俺はさ反抗できる立場でもないのに反抗しててさいわゆる反抗期で、事故で死んだって聞いてからもっと母ちゃんを大切にすれば良かったとか、この先俺と親父でどうやって生きて行こうとか、せめて最後にありがとうを言いたかったとか色んなことを考えた。でも1番思ったのは俺みたいな息子でごめんなさいって思っちゃったんだよね。俺は昔からやんちゃしてたしさ、友達のゲーム壊してでも、壊した俺じゃなくて母ちゃんが必死に頭下げて謝ったり、でも母ちゃんは叱ることはしないで自分で考えて成長しなさいとしかいつも言わなかったんだ。けど俺はちっとも成長なんかしなかった。多分心のどこかで母ちゃんがどうにかしてくれるとか、いることが当たり前に思ってた。でも事故で帰らぬ人となった時初めて俺はごめんなさいと思った。それに初めて俺がしてきたことを考え直すとやっぱり父ちゃんと二人で暮らしていた方が幸せだったに違いないんだろうなって思った。俺なんかいらなかったんだよ。って自分を責め続けた。それは今でもたまに思う。あ、ごめん一人で語っちゃった」

私はそんな話を聞いて笑輝が途中から泣いてることに気がついた。私もいつの間にか涙が出てきた。

「そうだったんだね、ごめんね辛いこと思い出させちゃって」

「まぁ、いいんだよ」

本当は嫌だっただろうでも、笑輝は微笑んでくれた本当に優しいな

「でも、父ちゃんは中学の卒業祝いで沖縄旅行にサプライズで連れて行ってくれたんだ。そこで花奈っていう女の子に出会ったってわけ」

私は花奈さんに何をしてもらったかわからなかった。でも、笑輝のことを知りたかった。だから聞いてみた。

「なんで、夢にまで出てくるの?」

「多分俺が1番影響を受けた人だから」

「言いにくいかもだけどさ…どんな?」

「俺、正直その旅行行きたくなかったんだ。それに母ちゃん死んでから笑ったり楽しいって思えなくなっちゃったからさ。」

やっぱりそうだったんだ。話の流れ的に笑わなくなった理由はわかった。

「そんな時、中3のくせにめっちゃ無邪気な花奈に出会ったんだよ。それから花奈は俺に近寄ってきてこう言った。」

「つまんなそうな顔してる、何かあった?」

「その時俺はびっくりした。俺の顔を見て初対面でそんなことがわかるんだって思ったからさ。それに優しそうだったから俺は母ちゃんのことを話した。そしたら花奈は泣きながら俺にアドバイスしてきたんだよ」

「君がいて良かったかはわからないよ。でも初対面の私でもわかることはある。君が恩返しをしたいなら。みんなに優しくしていつでも、笑っているそんな人になればいいと思うよ」

「なんで?」

「私の推測でしかないけど、ヒントは名前にあると思うんだ。笑輝。多分それはいつまでも輝く笑顔を見せてほしいってことだと私は思う。だからその願い通りにいつまでも笑顔でいてくれたらきっとお母さんも嬉しいんじゃないかな?」




「そう言われた時はじめて自分の名前の由来が素晴らしいものだと気づいたんだ。きっとこれは死んだ母ちゃんの俺に残した最後のメッセージだと思ったんだ。」


「でも、今でもあんまり笑わないよね?」


「まぁ簡単には吹っ切れはしないけどね。でも、花奈にありがとうって言ったのはそう言うことだよ。」


「すごいなぁその子、すっごい大人な人だね」

私は素直にそう思った。

「第一印象はガキだけどな」

可笑しそうに笑輝が笑っていた。久しぶりに笑ってるなぁ。なんて思っているともう周りは真っ暗だった。

「もう暗いし帰ろう」

笑輝が言った

「あとひとつ質問させて」

「いいよ?」

「それ初恋でしょ?」

「う、うん…バレたか…」

「やっぱりね〜」

「でもそのあとから俺は恋をしたいって思えた。」

「え?」

言ってる意味がわからなかった

「だって、好きな人ができたら俺も笑顔になれると思うのと、心の底から楽しいって思えるんじゃないかな。」

「そう、なんだ」


まだチャンスはあるってことなのかな?そんなこと考えてる自分が腹黒く感じたのでやめた。


「じゃあ、またね」

暗いからと言って家まで送ってもらってしまった。申し訳ないけど本当に嬉しかった。


「うん。また」

こうしてさらに私の好きと言う思いは膨れ上がってしまった。

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