855話 餡子熊王の封印

 ベンジャミンとの面会を終えて、ホールに戻る。

 窓の外では、メディアの放送が流れているな。

 特に聞くべき内容はない。


 ただ……あるフレーズに思わず苦笑してしまう。

 放送を見ていたアーデルヘイトが、不思議そうな顔をする。


「旦那さま。

なにか面白いことを言っていました?

いつもの『人類を分断してはいけない』ってやつですよね」


 まさにそれだよ。


「ああ。

その分断が面白かったのですよ」


 アーデルヘイトは、少し呆れた顔をする。


「旦那さまの笑いのツボは独特ですね……」


「否定はしませんよ。

分断とは実に便利な言葉だなと。

まるで相手が理性的でないかのようです。

それで可笑しくなりました」


「ああ……。

魔王の琴線に触れたのですね。

それなら納得です。

分断が便利ですか?」


 なんでそんな意味不明な理由で納得しているのか……。

 突っ込んだら負けだ。


「ええ。

正しい意味では、話し合えば解決出来るのに、それすらしない。

その結果、賛成派と反対派の溝を深めてしまう。

短慮ともいうべき愚行である。

そのようなところでしょう?」


「よくわかりませんけど……。

多分そうだと思います」


 それはそうだ。

 言葉なんて普段は感覚的に使っているだろう。

 

 そもそも分断なんて、普通使わないからな。

 尚更だ。


「でもここでの分断は……。

劣勢もしくは少数派が、自分たちを尊重しろという意味ですよ」


 アーデルヘイトは妙に納得した顔でうなずいた。


「ああ……。

なんとなくわかります。

そのような分断してはいけないという人たちって……。

差別を煽っていましたよね。

マガリばばがとても嫌うタイプの人たちですよ」


 だろうなぁ。

 捻くれ度合いは、俺といい勝負だったからな。


「自分たちが優位なら、多数に従え。

自分たちが劣勢なら……。

分断を招くような、強引な決定をするな。

議論を尽くすべし。

そのような感じでしょうか。

こうやって言葉の権威を、乱用者が失墜させる。

多くの人が、そのツケを払わされるでしょう。

本来軽々しく使ってよい言葉ではないと思います。

だから分断という表現を使う人は、あまり信用出来ません」


 アーデルヘイトはやや困惑顔だ。

 人を切り捨てるような発言は好まないからな。


 辺境育ちなのに善良すぎるよ。

 そして自然と男が楽しめる会話をマスターしている。

 それでいてどことなく天然が入っていて面白い。

 だからこそパーティーで、亜人差別が広がっているときも……。

 欠席を惜しむ声は多かった。

 美人だから……だけで、そのような声はあがらないだろう。


「それはちょっと極端なような……」


「もしも公平な視点を保つつもりで、分断と使っているとしますよ。

それを悪い意味で使っているのでしょう。

とにかく対立を深めるから悪い。

つまり和が乱れるから、なにもするなと同義です。

そのような和は、かえって有害ですよ」


 アーデルヘイトは首をひねっている。


「わかるような……わからないような……」


 もう少し具体的な例を挙げるか。


「そうですね……。

ふたつの家があるとします。

親の代では、それなりの近所付き合いをしていた。

ところが代替わりをしてから、状況が変わる。

隣人が突然武装して、此方こちらの家をジロジロ眺めたり……。

はてまたは敷地に入ってくる。

ときにはものがなくなることも。

そのとき、どうしますか?」


 アーデルヘイトは眉をひそめる。


「怖いですね。

止めてくださいとまずお願いして……。

それでもダメなんですよね。

私なら逃げるか、助けを呼びます」


「そこで……。

『そのようなことをすれば、隣人を刺激する。

隣人を疑うなんて、心の貧しい真似をするな。

なにもしなければ安全だろう。

今まで近所付き合いをしていたんだから』

そう言い張る同居人がいたら?」


 アーデルヘイトは小さなため息をつく。


「それは困りますね……。

なんとか納得してもらおうとします。

だって実際に危ないじゃないですか」


「ところが絶対に、自分の言葉を曲げなかったら?

それどころかアーデルヘイトを疑り深いとか……。

それを口実に、隣人を追い出すつもりなのか、と非難までしてきたらどうでしょう?」


 アーデルヘイトは頰を膨らませる。


「肉親や友人でないなら、私は逃げます。

そのような人と関わりたくありませんから。

でも……。

意味不明なことをいう人って想像出来ません。

そのようなことをしても、自分も危なくなるだけじゃないですか」


「その危険な隣人が、なになにかを奪おうと欲するなら……。

意味不明な人にだけは優しくします。

それこそ高潔な人とか喜ぶような言葉を、幾らでも言います。

自分はなにもしていないのに、疑われて悲しいとか……。

同情まで買おうとするでしょう」


 アーデルヘイトの頰が引きる。


「うわぁ……。

もし隣人が、そのようなことを考えていなかったなら……どうします?」


 いい疑問だな。

 理解してくれているようだ。


「奪えるのでは……と欲望がわき上がるでしょう。

そう思わないマトモな人なら、気味悪がって敬遠しますよ。

自分たちに、その思想を押しつけられたら敵いませんからね。

もし同居人と同類なら、此方こちらに善意ある行動を強制こそすれ……。

怪しい行動はとらないでしょう?」


「そうですね。

その前提を忘れていました」


「もし相手に害を為したいなら、相手を分断するのが最も楽です。

此方こちらにとって都合のいい人を優遇して、都合の悪い人を冷遇する。

古典的ですが有効なテクニックですよ」


 アーデルヘイトは、少しうつむいた。


「なんだか嫌なテクニックですね……。

でもそのような話を、マガリばばから聞いたことがあります。

『ラヴェンナはそれが通用しない。

だから付け入る隙がないよ』

旦那さまと戦う前に、楽しそうに笑っていました」


 そう簡単に立ち直れていないようだ。

 俺には理解出来ない感情だが、理屈でしかわからない。

 マガリの話を続けても辛いだけだろう。

 だから話題を変えるべきだ。


「話を逸らしてしまいましたが……。

アーデルヘイトが身を守ろうとすること。

それも分断ですよ。

果たしてアーデルヘイトの行動は悪いのですか?」


「それを悪く言われたら、流石に腹がたちます。

自分の身を守るなって……。

酷い押しつけじゃないですか」


「その通りですよ。

なんでも対立が深刻化することは悪い……と限らないってことです。

どうしても避けて通れない決断が必要なら、それを恐れるべきではない。

そもそも……。

そのような同居人と一緒になるなって話ではありますがね。

ただ親の代から続く同居人なら、避けようがありません。

それなら決断しなくてはいけませんよね?」


 アーデルヘイトは納得した顔でうなずいた。


「たしかにその話だと……。

安易に分断って使ったらダメですね」


「最初の例えに戻りますが、隣人が、アーデルヘイトの財産を狙っているならこういうでしょう。

『同居人の仲を裂くな』と。

それはまだわかります。

逃げられたら、目的を達成出来ませんからね。

それを見ている第三者が『分断を招くような行為はよくない』と言ったら?

私が信用出来ないと言ったのはそれです。

実情を知ったら? そのようなことは言えないでしょう」


 アーデルヘイトはやや不満そうに眉をひそめる。

 俺の言い方が、あまりに冷たかったかな?


「それはそうですけど……。

善意で見かねて、なにか言わなければ……と思うことだってありますよ?」


 俺は善意に、まったく重きをおかない。

 結果に興味があるだけだ。


「沈黙という選択肢もあるのです。

悪い発言ならしないほうがマシですよ」


「旦那さまって時々、妙に厳しくなりますね。

分断って……。

シルヴァーナさんが言っていたが解ける言葉なんですね」


 あいつめ……。

 俺の知らないことで、好き勝手に言っているな。


「私は自分のツケを、他人に回すのが嫌いです。

同様に安易に善人ぶりたい他人の言動も嫌いですよ。

そのツケを払うのは自分ですから。

あとになってから間違っていた……と謝罪されてもねぇ。

難を避けるための行動です。

火事になってから謝罪されても遅いでしょう?

こんなとき謝罪する人の家は、大体無事なのです」


 アーデルヘイトは微妙な顔で苦笑する。


「旦那さまは嫌いなものって……本当に嫌いなんですね。

人間らしいところが見られて、少し安心しました」


 なんでそうなるのだ。


「私は人間ですよ……」

とにかく悪性の腫瘍を切除するときも、腫瘍からすれば分断です。

言葉的には悪い意味合いなので、便利な道具だなと」


 アーデルヘイトは苦笑したままだ。


「うーん。

旦那さまと普段の会話って、たまに先生と生徒かなって勘違いするときが……。

こう……なんと言いますか。

甘い会話ってしないですよね」


 言われてみれば、そんな会話ほとんどしないな。

 気をつけよう。


「それは性分ですからね。

ただ出来るだけ注意します。

教師然として偉そうだ、と、よく言われますからね」


 アーデルヘイトは慌てて、両手をふる。


「今の話は忘れてください。

それで会話が面倒臭くなって減ったら困ります。

面倒臭くはダメですね。

旦那さまがいろいろ考えて、会話が減ってしまったら寂しいです。

それどころか……。

ラヴェンナに戻ったら、私が殺されかねません!」


 なんて大袈裟な……。

 と言いかけて、意外と洒落にならないかもしれない……と思ってしまった。

 俺と離れているだけて、ミルは、精神的に参ってしまったのだ。

 いるのに会話が減ったら、どうなるか。

 オフェリーあたりが暴走しかねない。


「わ、わかりました……」


 アーデルヘイトはビシっと、挙手をする。


「それで……。

絶対にわかり合えない人たちがいたら、どうすればいいのですか!?」


 それじゃあ、まるで生徒だよ……。


「力まなくてもいいですよ……。

根本的な考えが異なるなら、無理に一緒にいる必要はないと思います。

相手をするのは、時間の無駄でしょう。

自分たちの意見が通らないもの、すべてに従わないなら……。

一緒にいる意味なんてありますかね?

人の社会は、不本意であっても決定には従う。

その前提で構築されていますよ。

もし自分が少数派なら、去るか黙っているしかないでしょうが……。

幸いこの手の人たちは、社会で少数ですからね。

そのような人たちが多数派なら、とっくに滅びていますよ」


「なんだか難しい話ですね……。

でも旦那さまは、ラヴェンナで異なる意見の人たちがいても、なにもしませんよね」


「内心どう思おうが自由です。

心底嫌なら協力しなくてもいいけど……。

せめて邪魔はしない……、それが許容範囲ですよ。

人に押しつけない限り、なにを思おうが自由ですからね。

だから発言を、いちいち気にしなくても平気です。

他人に要求するときだけ、よく考えて」


 アーデルヘイトは元気にうなずく。


「気をつけます!」


「アーデルヘイトならその心配は無用でしょうけどね。

不快なことにかみつくけど、いざ反撃されると……。

自分は強制していない、と逃げる禽獣は一定数存在します。

しかもそのような人たちほど、声だけは大きいのですよ。

禽獣だからこそ、大声で叫ぶのでしょうがね。

決して主流派になれないことだけが救いですよ」


「もし主流派になったらどうします?」


「それなら人類は、滅んだほうがいいと思いますよ。

芯まで腐っては、手の施しようがありませんから。

クレシダ嬢に全面協力したくなりますね。

しませんけど」


                  ◆◇◆◇◆


 リッカルダ・リッツァットが面会を求めてきた。

 珍しいな。

 最近は、教皇ジャンヌの茶飲み相手をしていたはずだが……。

 つまり教会関係の話と考えるべきだ。

 それも、まずは内々にか。


 キアラと共に面会室に向かう。

 リッカルダは普段から、愛想のいいタイプではないが……。

 今日は、何時にもまして不機嫌だ。


「リッツァットさん。

よくない話のようですね」


 リッカルダは、厳しい顔のままうなずいた。


「はい。

ラヴェンナ卿の責でないことは、重々承知しておりますが……」


 リッカルダは、淡々と事情を話しはじめる。


 巡礼街道の譲渡に関しては、ニコデモ陛下の名で交渉していた。

 だからあとの交渉は、王都からきた役人に任せていたのだが……。

 急に渋りはじめる。


 人類連合に出席する代理の枢機卿も決まったらしい。

 だからこの成果を手土産に、ジャンヌは教皇庁に戻る……はずだった。

 交渉自体を頓挫させるのではない。

 譲渡領域の縮小をほのめかしはじめた。


 話を聞き終えて、思わず腕組みをしてしまう。


 詰めの段階で、この背信行為か。

 リッカルダでなくても怒る。

 ことと次第によっては、教皇との個人的コネすら失いかねないのだ。

 返還に関してはリッカルダを通じて打診したからな。

 責任問題が発生するだろう。


 ただこのような愚行を、ニコデモ陛下がするとは思えない。

 なにか事情がありそうだ。


「これは解せませんね。

なにか心当たりはありますか?」


 リッカルダは真顔でうなずいた。

 どうやら一通り調べた上で、俺に話を持ちかけてきたようだ。


「それですが……。

この前の反乱で、民衆から追放された領主がいたことはご存じですか?」


 ベンジャミンから聞いた話だな。

 それが関係しているのか。


「ええ。

まさか?」


「そのまさかです。

代替地を求めて、巡礼街道を要求した。

これが頓挫の一部始終です」


 馬鹿げた話だが……。

 所領を失った領主にすれば、なりふり構っていられないのだろう。


「それとこれとは、話が別でしょう」


 リッカルダは小さく苦笑して肩をすくめる。


「どうやら反乱の鎮圧と復帰を、陛下に願い出たところ……。

拒否されたそうです。

それならば……と代わりの土地を要求した。

しかもそれに賛同する勢力まで現れる始末です」


 王都のことは調べていないが……。

 ティベリオやジャン=ポールは、なにをしているのだ?


「ある程度の発言力がないと無理でしょう。

それで……誰ですか?」


「イザイア・ファルネーゼ卿です。

三大貴族でなくなったとは言え、声望はありますし……。

なにより反体制派をなだめるような立ち位置です。

これには陛下も、無下には断れないようでした」


 あいつか……。

 これは、ふたりだけを責められないな。

 俺自身イザイアを軽視していたのだ。


 そしてほのめかした理由を理解した。

 ニコデモ陛下は、条件を変える気など毛頭ない。

 だが国内の勢力に配慮して、ポーズをとっただけか。

 つまり俺の耳に話が届いて、俺から圧力が掛かることを期待しているわけだ。

 そうすれば却下する大義名分にはなる。

 俺を盾にして、問題の解決を試みたわけだ。

 

 イザイアにしても、俺が反対することは織り込み済みだろう。

 俺を敵とすることで、支持基盤を広げる気だな。

 三文芝居だが……。

 全員がこれに乗るしかない。


 とんだ食わせ者だよ。

 やはり腐っても三大貴族か。

 寝技はお手の物だったらしい。


「わかりました。

当初の約定を果たさないと、此方こちらは使徒騎士団に、なにも望めません。

陛下には私から強く念押しします。

それで解決するでしょう」


 リッカルダは安堵あんどした顔で、深々と頭を下げた。


「ラヴェンナ卿におかれましては、敵を増やしてしまう結果となりますが……。

よろしくお願いいたします。

教皇聖下せいかの権威が損なわれては、今後行われる改革にも、支障が出てしまいますので」


 ここで教会まで敵に回すのは面倒だ。

 それに話の通じる相手の足を引っ張るのは、自分の首を絞めることになる。


「私が考えた話です。

これを全うするのは、当然の義務ですよ」


「それと別件ですが、ラヴェンナに赴任するルグラン特別司祭が、ご挨拶に伺いたい……とのことです。

来月の頭で、都合のいい日はありますか?」


 来月の頭……。

 つまりは3週間後か。

 病み上がりのアレクサンドルの体調も加味して、余裕を持たせたのだろう。

 ただそれだけ先となると、確認が必要だな。

 キアラに目配せすると、キアラは小さく首をふる。

 そりゃそうだな。

 確認した上で決めよう。


「この場では答えかねますので、本日中に回答でよろしいですか?」


「はい。

最後はお願いなのですが……。

ここのところの冷害で、ライ麦の価格が上昇しています。

小麦が不作ですので、ライ麦の需要がますのは当然ですが……。

このままいくと、ライ麦すら高級食材になりかねません。

これでは餓死者が続出するでしょう。

皆さんもそのための準備をしようとしましたが……。

使徒貨幣の問題が直撃して、それすらままならない。

当商会でも大変な問題として持ち上がっています」


 ライ麦は劣悪な環境に、耐性があるからな。

 元々は、小麦の代用品。

 貧民の主食といった側面が強い。

 これに関しては、各自が準備するはずだった。

 やはり難しかったか。

 助け船をだしたが、マトモに見込めるのがその助け船だけと。


「流石にジャガイモだけでは足りませんか」


 リッカルダは小さなため息をつく。


「はい。

陛下からも対応を相談されましたが……。

使徒貨幣の混乱で、我々も満足には動けませんでした。

そこでラヴェンナが生産しているライ麦。

これをお譲りいただけないでしょうか。

シケリア王国のビュトス商会なるところが、売却の打診をしてきましたが……。

そもそもあの商会は、食料品は扱っていなかったはずです。

半魔の件もあり、迂闊に出所不明な食糧に、手をだすわけにもいかず……」


 元々ライ麦はウオツカの材料として生産していた。

 ただ契約の山噴火の可能性を聞いたときから、大規模増産の手配をしたわけだが……。

 どうにか間に合った。

 仮に、噴火が遅れても備蓄すればいいだけ。

 最悪ウオツカの材料に使えばいい。

 そう考えていた。


 使徒貨幣の混乱で、物価が乱高下してしまい、取引が停滞してしまったからな……。

 準備すらままならない。

 そんなところか。

 これに関しては、無策を責めては酷だろうな。

 泥を金貨にしたユウの責任だ。


「そうですね。

無制限とはいきませんが、可能な限りそちらの意向に添いましょう。

その旨を、商務省に伝えておきます」


 再びリッカルダは、深々と頭を下げる。


「これで我々のメンツがたちます。

このご恩は、決して忘れません」


 それで王家御用達商会としての地位は、盤石となるだろう。

 貸しにしておいて損はない。


 リッカルダが帰ったので、キアラとホールに戻る。

 廊下でキアラが頰を膨らませる。


「なんだか釈然としませんわね。

お兄さまが恨まれて、食糧まで売るって……。

体のいい便利屋じゃありませんの」


 それより怪しいライ麦が入ってくることを阻止するのが大事だ。

 俺が断っては、アッビアーティ商会とて怪しいライ麦に手をだすしかなくなる。


「だからといって、此方こちらが断ると……。

怪しいライ麦に、手をだす羽目になるでしょう。

ランゴバルド王国で半魔が発生しては一大事ですよ」


「それが誰にも理解されないのが腹立たしいですわ。

感謝しろと言いませんが……。

理解してくれてもいいのでは?」


 キアラの気持ちもわかる。

 だが統治側が、それを望むようではいけないと思う。


「別に理解されなくても構いませんよ。

回り回って実家に、被害が及んでは困ります」


 キアラは唇をとがらせた。


「これでお兄さまに文句をいうなら、半魔になれと言いたいですわ」


「増えないならそれでもいいのですがね」

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