君を迎えにきた 2

すると彼女の顔が少し輝いて見えた。

れい? 放してあげて。どうしたらいいかわかんないみたいだし、オーナーの顔怖くなってるし……」

そう言われた彼女と私は花伊の方をみると確かに顔が少し険しくなっていた。

「ひっ! オーナー……すみません。少し嬉しくなってしまって……あなたも急に抱きしめてごめんね? オーナーのひぞっこがずいぶん可愛らしいお嬢さんだったから。私かわいい子見るとすぐ抱きしめちゃうのよ。さく気づかせてくれてありがとう」

そうその男性に言うと彼女は私を離してくれた。すると、花伊はすぐに私を引き寄せる。それを見ていた男性はため息をついて呆れたように言う。

「オーナー……その子が可愛くて仕方ないのはわかりますけど……あんまりしつこくしてはだめですよ? 嫌われてしまいますから。それと彼女に自己紹介をさせてあげてください。そのためにホールに従業員を集めてしまったのですから」

「さすがだな。頼りにしてるよ朔」

「ですが、オーナー。この子に手を出すなとか言ってはいけませんよ? 貴方は従業員の中で人気があるのですから。この子が酷い目にあったら嫌でしょう?」

そう彼は諭すように言ったが、花伊は不思議そうな顔をしている。

「その顔はわかっていないようですね……まぁいいでしょう。さてお嬢さんお名前を教えて頂けますか?」

そう私に尋ねたので答える。

「本庄茜です。よろしくお願いいたします」

そして私は頭を下げる。

「礼儀正しいお嬢さんだね。きっと育てがいいのでしょうね。こんないい子に陵が失礼な態度を取ってごめんね?」

「い、いえ。」

「さてそろそろ行こうか。みんな待ってるからね」

そう言うとガラス張りの扉まで歩いていくとまるで私をエスコートするかのようにその扉を開いて私をホールまで案内してくれた。ホールは玄関から右に少し進んだところにあった。その横で花伊が何か呟いていたが聞き取ることは出来なかった。私がホールに入った途端、視線が私に集まってしまった。好奇な目で見る視線、値踏みをするような視線様々な視線が混ざりあっていた。その視線に耐えながら私は舞台まで行き挨拶することにした。

「はじめまして、本庄茜です。これからよろしくお願いいたします」

そう言って頭を下げるとその中でリーダー的妖が前に出でくる。

「貴女何ができるの? ここは一流のホテルなのよ? せいぜい足を引っ張らないことね」

その物言いを花伊はよく思わなかったのだろう。朔さんの制止も振り切り、その妖に厳しい目を向ける。

紀咲きさきその物言いはなんだ! それを教えるのがお前の仕事だろう」

そう花伊は怒鳴った。その横で朔さんと麗さんそして陵さんの3人が顔を手で覆っていた。

「あんたオーナーに気に入られてるの? どんな手を使ったの? あんなに怒るなんて。あんた何者なのよ!」

そう言って私に掴みかかってきそうになったところを麗さんが仲裁に入る。

「一旦落ち着きなさい、紀咲。怖い顔になってるよ。オーナー……皆の前でそれを言うのは少し控えた方がよろしいかと。朔もそう忠告していたはずでが。この子が目立ってしまうため目立たないようにするために言ったのですよ?」

そう言われたオーナーははっとしたような表情になる。

「すまない。ついカッとなってしまって……」

その様子を見て朔さんはため息をついた。

「確かにオーナーも麗も売られた喧嘩は買っていくタイプですもんね……麗はよくそれを抑えたね。君を怖がらせたくなかったのかもしれない」

そう言うと朔さんは紀咲さんに耳打ちしていた。その時の怯えたような表情は私の脳裏に焼きついてしまった。この人を怒らせるようなことは決してしてはいけないそう思った瞬間だった。

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私の初恋を君に 星塚莉乃 @americancurl0601

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