2話 苦痛からの解脱

黒い渦の正体が、あの担任の先生だとわかった瞬間に僕は脚をすくんでしまった。

「あ...」

その黒い渦に覆われた先生が喋る。

「咲ちゃんじゃないか、探していたんだよ。さあ、一緒に帰ろう。また、あの時間に...ね。」

僕は後ずさりもせず、進んだりもせずに突っ立ていた。アグマが近づいてきて言う。

「ばかか!勝手にディーボの目の前に立つバカがどこにいるんだ。」

僕は”死にたい”のに、なぜみんなは邪魔するの?僕は望まれてないのでしょ。

そしたら、僕の心が分かってるかのようにアグマが言った。

「みんなが皆、君を望んでないことはない。どこかの誰かが君を”助けたい”と思ってる。でも、それを行動に取らない。人間はそれだけ歪んでるのだから。」

彼の言ってる事は僕に助け舟を出してくれてるかのように感じた。

だから、僕はこのままではいけないように思った。

「...僕は、今まで耐えてきた。でも、このままではだめ・・なんだろな。僕にできる事って...」

その時、僕の頭の中に何かの声が聞こえた。

「ようやく、目覚めたのね。咲。」

この声は誰?

「わたくしはアメントス、あなたの運命の使者わよ。」

運命の使者?僕には全く分からない。

「あなたはようやく、あなたの心の中から私を見つけてくれたわ。あなたに秘めたる反逆の力、さあ始めましょ」

彼女がそう言うと、僕はもう弱くない、そんな精神が伝わったような気がしたと同時に力がみなぎってきたところで、アグマが言う。

「やはり、サッキーも覚醒するのか」

僕の周りが青い光に包まれ、力が生まれた。


覚醒とは、人間がこのプリズンで人間の歪んだ欲望に打ち勝ち、心に秘めたる反逆の心が外側に出て行く事。


その覚醒で得た能力は”反発インパクト”を使える力。僕の手に何か力がみなぎり、奴に向かって殴りにかかった。そうすると、そのあいつも黒い渦が赤く禍々しくなり、赤黒い植物(芽が赤い目)になった。

僕はそのバケモノの出す黒い弾を避けて、奴の赤い目をぶん殴った。

そうすると、それは黒い霧となり、消えた。残っているのは青い人魂みたいなものだけだった。


「サッキーは、やっぱりだったのか」

アグマが言いながら、その青い人魂?を回収した。

「運命の囚われ?」

僕は疑問に思った。そして動揺もした。

「その力だよ!それは苦しみの運命から解放され、人間の良心の象徴”コザ”に認められた人間にのみ宿るのだ。」

僕にはあまり分からなかった。でも、この力が僕の体に宿った理由は大体分かった。

「ひとまずここは危険だ、行くぞ」

「え・・・ちょ、待って」

そうすると、彼は風を操り、僕を巻き込みどこかに飛ぶ。

「驚いたか?俺もコザ使いなんだぜ、行けタイフーン!時速1000キロでアジトへ行くのだ!!」

彼は自慢気に言ってるが、僕はそれどころじゃない。なぜなら僕は高所恐怖症なんだ!!

「高い、速い、早く降ろして〜」

そんな情けない声を出した。

「もうすぐだ、もうすぐで、精神更生団MRTのアジトだからな、我慢しろよ」

MRTとは、何かなんてその時は全く考えなかった。

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