第一章 運命

1話 苦痛

とある雑居ビルの屋上に見える白いショートヘアの人がいた。



僕は飯田 いいだ さき。17歳。華の女子高生...らしい。

そう、ここから飛び降りようとするつもりだ。なぜか、それは今まで我慢してきたから、親からの虐待、同級生からのいじめ、信頼してたはずの担任の先生からのセクハラに。

僕の学校は中高一貫校だから、その苦しみに5年間耐えてきた。

この苦しみはあの時から始まっていたのだと思う。



それは僕があの学校に入学した日、初めて親に反抗した日。その時から、両親の虐待をすでに受けていた。それのせいでできたアザなどを作って学校の入学式が始まった。その日は何事もなかった。しかし、次の日から地獄は始まった。

「また、あの子、アザができて登校してるよ」

「どうせ、(私、可哀想でしょ)アピールだから、無視しよ」などなど...

僕の噂はクラス中はもちろん、学校全体に広まった。

学校の先生もこの事態は知ってたはずだ、なのに誰も動こうとしなかった。

でも、僕の担任の先生は優しく、接してくれていた。ある日の放課後、先生に呼ばれ体育準備室に入った。その中での出来事はもう思い出したくない...



だから、僕は楽になりたい。でも、どこにも逃げる場所がない。

そんな時、僕のスマホになぜか通知音が聞こえたので見てみると、変なアプリがあった。インストールした覚えは全くなかった。僕はそのアプリを消して、朝日が昇ってきたときそこから、落ちた。



落ちてる最中はゆっくり舞い降りてるように感じた。その間、僕の頭の中に走馬灯が映ってきた、嫌な思い出だけど。

そして、地面に着いた。



でも、意識がある。

「う...あれ、ここは...どこ」

明らかにこの世とは思えない不思議な空間、でもなぜかこの世を感じさせるような力がある。

「...天国?」

それとしか、思えない。

そしたら、遠くから何かが近づいてきた。

「おい、そこの君、何やってる?」

黒猫なのか、黒い子熊なのか分からない変ないきものが現れた。

「...ねこ?」

その一言は激怒の引き金だった。

「ねこじゃねー!!!おいらは”アグマ”だ。覚えとけ、人間」

「はい...」

「おいらだけ名前言わせてどうするんだ!名前をを名乗ったのだぞ!君も名乗るのが礼儀だろ。」

正直、面倒臭いと思った。

「飯田 咲です。」

彼は何か考え、

「よし、君は今日からサッキーだ。丁度良かったなぁ、仲間が増えたよ。」

何言ってるのか、全く分からなかった。

「仲間?何言ってるの?」

彼は驚いた。

「マジで!?お前、この世界のことを知らずに入ってきたのか。」

「うん」

「ないわー・・・まあ、仕方ないか、後継者を作るためサッキーに教えてやるよ」

本当に何を言ってるのか、全く分からない。

「まず、この世界についてだ。この世界は”プリズン”と呼ばれる世界で、人間の歪んだ欲望を具現化した世界なのだ。そして、その人間の歪んだ欲望はこの世界にいる魔物”ディーボ”となる。そいつを倒すと、人間世界のそのディーボとリンクする人間の”心が綺麗”になる。ざっとこんなもんだ」

なんとなくは理解した、ここが死後の世界であることを。

「丁寧にありがとうございます」

感謝の印を示したのに、

「少し静かにしろ」

そう言うと、僕を連れて近くの物陰に行った。

「見ろ、あれがディーボだ」

それは黒い禍々しい渦のようであった。

「あれにやられると、輪廻転生のサイクルから外れ、無の空間に行ってしまう」

無の空間・・・良い、そこに行こう。もうこれ以上この苦しみを味わいたくない。そうすると、足が勝手に動き、その黒い渦の方へ向かった。

「ちょ、ばか!」

彼の言うことを無視した。

その黒い渦は遠目からは分からなかったが、それは担任の先生だった...

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