第15話陰キャオタクの俺がなぜか俺の隣の席を奪い合ってるんだが!?
微かな振動と生徒たちの賑やかな話し声が聞こえる空間––––––
そう、今綾人がいるのは高速道路を制限速度より半分の速さで進むバスの中だ。
向かう先は、周りが森と山しかない林間学校だ。
今は高速道路に乗り始めて数十分なので周りは建物がずらりとは言えないが立ち並んでいる。
バスの一番後ろの席に座るのは綾人1人だ。いつもは''ボッチ''だからという理由で、隣に誰もいないということはよくあったが今回は違う。
それはバスに乗車する時にまでさかのぼる。
「2人とも席どうする?」
綾人らのグループは3人構成なので、余った1人がひとりで座るしかない。
「私は綾人君の隣で!」
「私、綾人の隣ー」
これまた、同じタイミングで言ってきたんだが。絶対仲良いなこの2人。
「ちょっと茜ちゃん?」
「そっちこそ真奈?」
「私が、綾人君の隣だよ?」
「私は許可してないんだけど?」
「何故、茜ちゃんの許可がいるのかな?」
「そ、それは、、」
なんか邪悪な雰囲気になってきたので、止めた方が良さそうだな。
というか、なぜ俺にそこまで?
「ちょっと2人とも少し落ち着いて」
そこで茜がハッ!と何かをひらめいた様な顔をする。
「ねぇ、綾人、私と真奈とどっちがいいの?」
「へ?」
急に変なこと聞かれたので、間抜けな声を出してしまう。
「それって、、」
そんなこと急に聞かれても、真奈と茜どっちが良いかって、、
「あー、どっちが綾人の隣の席になるのかのこと」
「あっそっちのことか、びっくりしたわぁー」
茜がこの言葉を聞いてニヤニヤした顔をする。
「あれ?もしかして綾人変なこと考えてた?」
「べ、別にそんなこと考えてねぇし」
「そう言いつつも、今心臓バクバクしてるんじゃないのー?」
もしかして茜はエスパーなのか?それともこの反応をするのが計算済みで紛らわしい言い方をしたのか?どちらかというと後者の方かな。
綾人の胸板を茜が触ってくる。
「やっぱり、ドクドク言ってるー」
「な!お前なー」
「ねー、2人とも?なぜ私のこと放っておいて、イチャイチャしてるのかな?」
真奈に顔を向けると、物凄く綺麗に笑っているのに目が全然笑っていない顔で2人を見ていた。
その顔を見た瞬間2人とも顔を引き攣らせる。
「そ、そうだ早く席を決めないと!」
物凄く強引に話を変える。でも一応それは本当のことで他のクラスメイトらは既に着席していて、喋り合っていたり、俺らのことを歯切りしながら「くそ、七瀬あいつ後で覚えてろよ!」という感情だだ漏れな視線で見てくる男子達もいる。
「そ、そうだね、綾人」
茜もその話に乗り換える。
「う、うん」
真奈もそれに関しては急がないといけないと気づいたのか、渋々受け入れた。
どうにか話を逸らすことには成功したが、真奈は大変不満そうな顔をしていた。
「俺は1人でいいから2人で座ってくれ」
なに言ってんの?コイツといった表情で茜が見てくる。
「うーんそんなこと言われたら、そもそもこの話し合い必要なかったんだけどなぁ、まぁ納得いかないけど分かったよ、、、」
「そうするしか無さそうだしね、、」
そうして2人とも何か言いたそうだったがとりあえず満場一致ということで俺が1人で座るということが決定した。
という感じで俺がボッチで座ることになった理由だ。
話す人も話すこともないので、流れゆく景色を何とはなしに見る。
前を見ると真奈と茜が仲良く話している。あいつら今さっきまで口論してなかった?
「綾人君って料理作れるの?」
と言い真奈が席越しに俺を見てくる。
「ん?どうしてそれを?」
「茜ちゃんがね、綾人君って意外に料理作れるって言ってたから」
「いや、親がいないから料理作ったりするけど、、、」
いや意外ってなんだよ。
「へぇー、今度作って欲しいなぁー」
今、真奈さんなんて言った?俺なんかの料理を食べたい!?ま、まさかそんなことは。
「俺の料理なんか別にたいしたものは、作れないけどいいのか?」
「うん!」
キラキラ期待した様な顔で見てこられるのが辛い。練習しておこう。
それから何事もなく平和に林間学校にたどり着いた。
「んー、良い空気だねー!」
んーっと可愛いく背伸びをしながら真奈がそんなことを呟く。
「そうだな、俺、ずっと家にしかいないからスッキリするな」
「綾人君、流石に家から出ようよ、、」
真奈が若干引いた目で見てくる。なんかやめて?陰キャオタクっていうものは外そのものが敵なんだよ。
「昔から綾人家に遊びに行ったら大抵家にこもってアニメかゲームしてるんだよね」
「へぇーそんな前から、、ってもうみんな並んでるよ!」
真奈が生徒が並んでいるの方向に指を指す。
「やっべ、、早く行くぞ真奈、茜」
「「うん」」
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