そして舞台の幕があがった 6

それに、あなたとならどんな困難でも乗り越えられそうな気がするだからあなたと仮契約する。ここの世界の名前もスノーフォリアっていうんだけどこの世界にはある伝説があるの。これは本で読んだことで、この世界は雪の森っていう意味なんだけど、昔ここは荒れ果てた土地だった。ある魔法使いが精霊の力を駆使して雪の森を形成してその地に村ができたの。名前はわかんないんだけどね。その魔法使いが私の憧れなんだ」

猫は名前を気に入ったみたいだった。

「ラシェか、いい名前だね。君は良く知っているね。勉強熱心なのはいいことだよ。君もそんな魔法使いになれるように僕がこれからサポートするよ。じゃあ手を出して」

ラシェはそう言うと私の右手の甲にキスをした。その瞬間手の甲がまぶしい光に包まれ見たこともないような紋章が浮かび上がった。

「これは何? 刺青? でも見たことない。綺麗、雪の結晶に似ているけど違うな」

すると猫は憤慨だというように怒り出した。

「これは紋章というものだよ! 僕と君の契約の証なんだ。それを刺青なんかと一緒にしないでくれ! 刺青は痛みを伴うけど紋章は痛みがないし、本契約を結べば新しい紋章がどこかに浮かび上がる、もしくはどこかの色が変化するかもしれない。あとこれは……核みたいなものが凍ってるから、もしかするとまだ誰も見たことがないとされているサクシランの結晶だと思う。この現象は見ることが、難しいんだ。これは、サクシラン現象といってこの現象が起きる際に水面下で起こることだよ。水面が凍って透明になった時、この世界では水溶プランクトンの核まで凍るんだ。その時10度以下なら、核は凍ったままだけど10度以上なら、核内の氷は解けてしまう。だから、とても貴重なものなんだ。僕もまだ、見たことがない。けど、君となら見れるかもしれないね」

そんな風に思ってもらえるとは思ってなかったので私は見れるといいなと思っていた。

「そうだ! それ隠さないといけないよね。それとさっきから視線を感じるから誰かに見られているのかもしれない……これを見られるとめんどくさいことになるかもしれない。待っててすぐに手袋出すから」

ラシェはそう言うと呪文を唱えた。

『ボルサ・ハールウェイト』

するとそこに空間ができ、ラシェはその中に飛び込み、綺麗な水色の刺繍のある手袋を咥えて戻ってきた。私はそれをすぐにはめた。

ラシェは満足気な表情をしていた。そして念押ししてきた。

「いいかい? これは他人には見せてはいけないものなんだ。例え両親であってもね。そしたら何か手袋を付ける言い訳を考えないといけないね」

私は確かにその通りだと思った。でも、どんな言い訳ならお父さんは納得してくれるだろう怪我をしたはだめだな確実に見られる。

学校の規則も学校に電話をする。

どうしたらいいんだろうと思い悩んでいると

「君は手にクリームとかは塗らないのかい?」

「手にクリーム? たまに塗ってるけど……」

「クリームを塗るなら保湿のためとか言えばなんとかなるだろう?」

そう言われてそれだと思った。それなら手袋をしていても怪しまれない。さすがラシェと思ってしまった。

それなら大丈夫と一安心した。

それから何か聞きたいことはないかと考えてみたものの聞きたいことはとくにない。それを察したのか猫の方から話しかけてきた。

「君のお父さんって相当過保護なの?」

「うん……そういえばこんなの持たされてるんだけど何か知ってる?」

そう懐中時計風のものを取り出すとラシェは驚きの表情を見せた。

「それは相当な過保護だな……それは魔法アラームだ。相手が指定した時間近くになると音が鳴り出してその時間を過ぎると位置が自動的に知らされる代物だね」

と言われて私は何も言えなくなってしまった。私のお父さんって割と怖い……早く娘離れして欲しいと切実に思った。

そんな話をしているとラシェが急に後ろを振り返り

「そこに誰かいるんでしょう? 出てきなよ」


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